中朝関係に変化?  金正恩氏、「中共の動向を気にせずに」

2024/08/05
更新: 2024/08/05

ロシアのプーチン大統領が6月、北朝鮮を訪問したことをきっかけに、北朝鮮と中共の関係に微妙な変化の兆しが見え始めている。

韓国の「中央日報」が7月31日に伝えた内容によると、複数の情報源を基に、北朝鮮の金正恩総書記が、中国にいる北朝鮮の外交官たちに対し、「中国の動向を気にするな」という趣旨の文書を送ったとされている。

この報道によると、該当する文書は7月に発行されたもので、これはプーチン大統領が6月19日に北朝鮮を訪れ、金正恩氏と「全面的な戦略的パートナーシップ条約」に署名した直後のことだ。専門家たちは、金正恩氏が将来、攻撃的な姿勢を見せたとしても、中国との関係を気にせず、独自の判断で行動を進める可能性が高いと見ている。

台湾淡江大学の国際問題戦略研究所の前所長であり名誉教授の翁明賢氏によると、

「北朝鮮は積極的かつ自立した外交政策を追求し、中国以外の選択肢を探っている。国連の経済制裁と武器禁輸の影響下にある北朝鮮にとって、中国からのさらなる支援が期待できない場合、ロシアは有力な代替パートナーになり得る。北朝鮮が進めるミサイル、核兵器、宇宙技術の開発において、技術提供をしようとしているのはロシアだけである」と述べた。

中朝関係に変化が見られる事例の一つとして、7月27日の夜、平壌で行われた朝鮮戦争休戦71周年記念イベントにはロシア、ベトナム、キューバの大使が出席していたが、中国大使の王亞軍氏は姿を見せなかった。

台湾大学政治学部の陳世民副教授は、「プーチンが北朝鮮を訪問し、重要な戦略的パートナーシップ協定に署名したことは、中国の駐北朝鮮大使にとっては外交的な失敗と言える。中国大使が不満を抱えている可能性がある。これは、金正恩が、2011年に権力を握って以来、北朝鮮が中国への依存を減らす方向で進めている政策の一環である」と語った。

中国外務省の報道官、林劍氏は、中国と北朝鮮の関係に変化が生じたとの見方を否定し、朝鮮戦争の時代に構築された双方の強固な友情を強調した。

中共と北朝鮮は同盟関係にあるものの、金正恩氏と習近平の間には特に密接な関係は見られない。金正恩氏が2011年に権力を引き継いだ後、2018年に初めて中国を訪問し、習近平と会談を行った。習近平は2014年に韓国を訪れ、北朝鮮の新しい指導者と会う前に、韓国の大統領と面会した初めての中共のトップになった。

2017年には、中国が国連安全保障理事会で北朝鮮の核実験に対する制裁決議に賛成票を投じるという異例の事態が発生した。

陳世民氏は「実際、金正恩氏は当時、中国に完全に依存することはできないという不満を抱き、理解していた。習近平の韓国訪問時、北朝鮮の公式メディアである労働新聞は、金正恩の父、金正日氏の遺言として、中国を完全に信用してはならないと報じ、中国と北朝鮮の関係は単に利害が一致しているだけだと指摘していた」と述べている。

さらに、「中央日報」によると、情報源と脱北者の話では、最近北朝鮮政府は華僑の移動をより厳しく制限し、北朝鮮の市民が華僑の家を訪問することにも、制約を加えているとのことだ。かつて平壌の市場では、人民元を使っての商取引が行われていたが、今はそれが不可能になっている。また、数か月間、北朝鮮は、市民や軍人が中国の映画を見ることを禁止している。

中国では、金正恩氏が2018年に大連を訪問し、習近平と一緒に歩いたことを記念して設置された「銅の足跡」が、今年の5月に撤去されたと報じられている。さらに、7月初旬には、北朝鮮の主要な外貨獲得手段の一つである中国国内の北朝鮮労働者を、全員帰国させるよう求めた。