6月14日、7か国グループ(G7)の首脳会議で発表された共同声明は、中国に関する項目が過去に比べて大幅に増加し、言葉遣いもこれまで以上に厳しいものとなった。
G7の強硬姿勢
今回の首脳会議では、中国の過剰生産能力への対策を強化し、ロシアの防衛産業を支援する行為に対しても新たな措置を講じることで一致した。G7は、中国の産業過剰生産に対して「不公正な慣行」に対抗し、「公正な競争環境を創出し、継続的な損害を是正する」ことを誓った。
声明では、ウクライナ戦争において中国がロシアを支援していることを明確に指摘し、「中国および第三国がロシアの戦争に物的支援をする行為に対して措置を講じる」と述べた。
さらに、G7はロシアへの禁輸措置を迂回する中国の実体に対して制裁を加える可能性を示唆し、「我々の金融システムへのアクセスを制限する措置を講じる」ことを誓った。
今回のG7声明では、悪意のあるサイバー活動、香港問題についても言及している。東シナ海、南シナ海、チベット、新疆問題も引き続きG7の関心事であるが、南シナ海問題に関しては「公海での航行の自由を再三妨害している」といった強硬な言葉を使っている。
G7の声明は、西側諸国が中国を「パートナー」としてではなく、ロシアと同様の脅威と見なすようになったことを反映している。フィナンシャル・タイムズ(FT)は、G7がこれほど強硬な姿勢を増大させたのは、ロシアのウクライナ侵攻以降、最も顕著であると報じている。ある関係者は、「G7は中国に対してロシア支援をやめるよう説得することを諦めている」と述べた。
「ポリティコ」(Politico)は、G7内部でのこれらの顕著な変化は、アメリカの対中姿勢が強硬化していることが主要な原因であり、バイデン政権は同盟国と共に中国に対して具体的な行動を取る意向が強いと指摘している。
言葉の使い方の厳しさ、その理由
G7の厳しい言葉遣いの理由について、淡江大学外交学部の鄭欽模(ていじょうも)副教授は、「昨年の広島G7サミットから今年のG7サミットにかけて、中国の世界に対する脅威が増大しているためである」と大紀元に語った。
彼は、「中国は台湾海峡や南シナ海での威嚇行動を強化し、最近では『海警機構行政執法程序規定』により、外国人を裁判なしで拘留することができる。また、ロシアへの具体的な支援もアメリカの情報機関によって明らかにされている」と指摘した。
鄭副教授はさらに、「西側諸国は過去2年間で中国に対して非現実的な期待を抱いていたが、今回はG7が協調して行動することで、ロシア・ウクライナ戦争が早期に解決し、中国の世界的な野心にも効果的な打撃を与えることができる」と述べた。
中共の対応
聖トーマス大学国際研究講座教授の葉耀元氏は、「ヨーロッパ諸国は中国がロシアを支援していることに対する不満が高まっている」と述べ、「米中間の対立が激化する中、ヨーロッパもアメリカと同じ路線を歩み始めている」と指摘した。
葉教授は、G7の厳しい言葉遣いの理由として以下の三つを挙げた。第一に、中国が他国への安全保障の脅威を高めていること。第二に、中国が世界の強国になることで、その秩序や価値観が他国に受け入れられるかどうか。第三に、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・パレスチナ紛争において、中国の立場が西側諸国と対立していること。
G7は声明で、ロシアの制裁回避を支援する主体に対して、ロシアの侵略への物質的支援の提供や法執行の強化を直ちにやめない全ての主体に厳しい罰則を科すなど、強力な措置を講じると強く述べた。
現在、ヨーロッパや米国との貿易を維持するために、ほとんどの中国銀行はロシアでの業務を停止しているが、中国共産党当局は、5月に中国銀行にロシアでの活動拡大を求めるプーチン大統領の要請にも応じていない。
専門家の間では、中国が小規模な銀行や地下融資を通じて、ロシアを支援し続けると考えられている。
中国外交部はG7声明に対し、「経済貿易関係を政治化、武器化し、中国を中傷している」と反発している。
葉教授は、「制裁は中国にとって悪影響を与えるが、中国政府は制裁を『武器化』して対抗する」と述べ、「中国政府は外部勢力の干渉を西洋の帝国主義と見なし、中国の台頭が西側を抑圧するものとみなしている」と指摘した。
彼はさらに、「制裁は民生経済にも影響を与え、中国経済の問題が拡大し、中国政府への不満が高まる可能性がある」と述べた。
鄭副教授は、「中国が国際協定や条約を遵守することは期待できない。G7の声明は中国に対する強硬な姿勢を示しているが、具体的な措置を講じるかどうかが重要だ」と述べた。
世界の分断
G7の強硬姿勢は、今後の中国と西洋諸国との関係にどのような影響を与えるのか?
鄭副教授は、「中国と西洋諸国の関係はさらに悪化するだろう。双方の戦略目標が完全に対立しているため、新たな冷戦構図が形成される可能性が高い」と述べた。
葉教授は、「現在は冷戦の始まりと言える状況であり、中国とアメリカの関係は行き詰まりを見せている。ヨーロッパ諸国はまだ完全に選択をしていないが、時間が経つにつれ、ロシア・ウクライナ戦争が続けば、中国に対する敵対感情が高まるだろう」と述べた。
このように、G7の厳しい姿勢は、中国と西洋諸国との関係に重大な影響を与えるとともに、世界の分断が一層進むことを示唆している。
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