中国人民解放軍の新世代ステルス艦載機「殲-35」 性能に疑問の声

2024/03/22
更新: 2024/03/22

最近、中国共産党のメディアは人民解放軍の新世代ステルス艦載機「殲-35」の性能を披露し、「米軍のF-35をしのぐ」と豪語している。しかし、米国の防衛専門家らはこの信ぴょう性に疑問を呈している。

製造した中国航空工業集団の殲-35の一部パラメーターが公開されている。それによれば、殲-35はWS-19黄山型エンジン2基を搭載。弾薬庫と両翼に合計8発の中長距離超音速対空ミサイルを搭載可能。最大離陸重量は35トン、最大速度はマッハ2.2、戦闘行動半径は1350キロメートル、最大搭載弾薬重量は8トンとなっている。

中国航空学会の王亜南主編は、これらの指標が達成されれば、航空母艦福建号に殲-35を2個飛行隊搭載した場合、中共(中国共産党)軍空母の戦闘能力は米空母に匹敵ないし上回り、その優位性を失わせると分析した。

殲-35 エンジン性能に疑問

しかし、この見方には異論がある。中国の軍事評論家らは殲-35の性能、特にエンジンに疑問を呈している。

香港の軍事専門家の喬良氏は大紀元に、「殲-35の最大速度がマッハ2.2に達するというのは疑わしい。現在の中国のエンジン技術ではそこまでの性能は出せないだろう。マッハ1.8程度が限界ではないか」との見方を示した。喬氏は、中国の戦闘機エンジンはロシアから技術供与を受けているものの、いまだロシア製エンジンには及ばないとの認識を示している。

台湾の国防安全研究院の楊逵助理研究員も、エンジンの性能に首を傾げる。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に応じた楊氏によれば、WS-13の2基の推力を合わせてもF-35の1基にも及ばないという。

量産の兆しがある殲-31に搭載されるWS-13エンジンは、ロシア製RD-33を参考に生産されたもので、2基で2270キロだ。F-35のF-135エンジン1基の1701キロよりも500キロ以上重いのだ。

殲-35はより先進的なWS-19エンジンを使用すると伝えられているが、23年3月の報道ではWS-19はまだ開発中だ。わずか1年で開発に成功し、同系列エンジンの欠陥を克服できるかは疑問だ。

加えて、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻の影響で世界的に金属原料や製造材料のサプライチェーンが逼迫しており、WS-19エンジンに使う先進合金材料の供給も影響を受けている。つまり、報道された数値はプロトタイプの数値であって、完成した量産機のものではない可能性があり、信頼性は確認できない。

最新戦闘機、データ上で「張子の虎」

このほか、最大離陸重量についても注目されている。最大離陸重量とは、機体、燃料、搭載物、乗員の重量の合計で、搭載できる兵器と燃料の量、運用の柔軟性を示す。殲-35の最大離陸重量は35トンでF-35Cの32トンを上回る。データが事実なら、殲-35は中型機の機動性を備えつつ、大型機並みの兵装搭載量を持つ可能性がある。

台湾戦略学会の羅慶生執行長は、殲-35の最大搭載弾薬量8トンは弾薬庫と外付けを合計したもので、ステルス性能を大幅に低下させるため外付けは実践的ではないと指摘。運用時にステルス性を維持するには密閉型弾薬庫のみを使うしかないのに、中国共産党メディアは意図的に両方を合計しており、「誇張している」と、VOAに語った。

現代の空戦は空中早期警戒管制機の指揮に依存しており、ステルス戦闘機同士が空中戦を繰り広げる可能性はほとんどない。太平洋上には衛星があり、互いの位置は把握済みで逃げも隠れもできない。空母や殲-35、F-35は平時の抑止力として存在し、戦争が起これば抑止は失敗したことを意味する。平時に兵器に求められる耐久性と威嚇力は、戦時に消耗品となる兵器に求められるコストパフォーマンスとは異なる。

こうした状況下で、殲-35の性能データは張子の虎に過ぎないと羅氏。「セールスなど軍事兵器のビジネス競争においてのみ意味を持つのだろう。実戦では大した意味を持たない」と皮肉った。

著名な防衛アナリストのベン・ルイス氏は米国の優位性は依然として高いと指摘する。中国はステルス機開発の経験が限られているのに対し、米国は冷戦以来絶えずステルス機を開発してきた。「J-35の最終的な性能がどのようであっても、F-35に匹敵することはできないだろう」とVOAのインタビューに語った。

中国共産党は殲-35を輸出する際、完全にF-35に匹敵すると売り込むことができ、F-35が買えない国にとって選択肢となり得ると語る。

実際、パキスタンは今年初めに殲-31の発注を検討中と報じられたが、中国製兵器の性能不足は実証済みだ。パキスタンが導入した中国製防空ミサイルHQ-9とLY-80は故障や性能不良が相次ぎ、パキスタン領空がイランに侵犯され続け、インドメディアから嘲笑を買った。

台湾の楊逵助理研究員はVOAに、「操縦士の技能と経験も変数の1つだ」と述べた。

公開情報によれば、米軍のパイロット訓練時間は中国より20~35%多く、パイロットの能力の重要性は機体の速度や性能に劣らない。また米国は世界最大のステルス戦闘機部隊を保有しており、そのステルス戦闘機の状況認識能力は依然中国を上回っている。

前出の羅氏は、殲-35が空母に搭載されれば作戦能力は向上するが、それでも米空母を超えることはできず、だからといって将来西太平洋で米中戦争が起これば中国が必ず敗北するわけではないと語った。

「解放軍追跡者」サイトの共同創設者のルイス氏は、いずれにせよ中国の3隻目の空母「福建」の就役と将来の殲-35の配備は、インド太平洋地域、特に米中間の勢力均衡に影響を与えるのは確実で、米軍と競争できる部隊の配備を北京が切望していることを示していると述べた。

大紀元日本 STAFF
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