ロシアによるウクライナ侵攻が3年目に入った。北大西洋条約機構(NATO)の米国負担について批判的なトランプ前大統領の再選、いわゆる「もしトラ」の可能性を背景に、欧州は防衛費増加を加速させている。
2月、米国大統領候補のトランプ氏の発言が大々的に取り上げられた。NATO加盟国が十分な資金拠出をしなければ、見放すことも検討するとの主張は欧州諸国の危機感を煽り立て、大きな反発を読んだ。加盟国32か国のうち、NATOが定められたGDP比2%の国防拠出基準には達しているのはわずか11か国だ。
2月14日、NATO事務総長は同盟国への批判は「正当な部分もある」と認め、「今年18か国はGDP比の国防費2%を達成する見通しだ」と明かした。フランスのセジュルネ外相は記者会見で「トランプ氏の描く衝撃的なシナリオに備えるためには、一刻を争う」と述べた。
バルト海に面したエストニアの防衛支出はGDP比3.3%に達し、ポーランドは同4%に倍増させた。ラトビアも2024年度の防衛予算を同2.4%引き上げ、27年までには3%にする目標を掲げている。ラトビアのカリンシュ外相は、「前倒しで達成できる可能性もある」と説く。
27日、デンマークのフレデリクセン首相はフィナンシャル・タイムズ(FT)のインタービューで、欧州諸国は冷戦終結後「自国の安全保障と防衛に十分な資金を投入してこなかった」と述べ、「国を守る力を確保するのは自国の責任」だとした。デンマークは今年、防衛予算をGDP比2%以上に引き上げることを目標としている。
「今やフィンランドやスウェーデンも北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。これはプーチンにとって大きな誤算だっただろう」。エストニアの歴史家アンティ・プーラメッツ氏はエポックタイムズの取材に対し、欧州の安全保障環境は2022年を境に大きく変化したと指摘した。
スウェーデンもハンガリーの承認を経て、NATOに加盟する。これで同国は二世紀にわたる軍事的中立を放棄したこととなる。ロシアと国境を接するフィンランドは昨年4月、NTAOに加盟した。
元駐ルーマニア米国大使のエイドリアン・ザッカーマン氏は、欧州諸国は、ロシアが自由、民主主義、経済の安定に対して深刻な脅威をもたらしていることを認識する必要があると述べた。ロシアをウクライナから撤退させ、他国への侵略を防ぐためには、NATOが強固な意志を示さなければならないと指摘した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。