中共が留学生へ越境弾圧 米NGO報告書が大学の保護不足を指摘

2024/02/04
更新: 2024/02/04

2月1日、米国NGOのフリーダム・ハウスは、中共(中国共産党)が批判を抑えるために、米国の留学生や訪問学者、教職員を脅迫、監視、嫌がらせをしていると指摘した。

フリーダム・ハウスは、世界における自由・人権の保護を目的とする人権団体である。2月1日の報告書で、同団体は全体主義政府による国境を越えた弾圧は、米国の大学における「共通の脅威」となっていると述べた。また、米国の留学生にとって最大の脅威は中共政権だとし、大学は脆弱な学生や学者を保護し、学問の自由を守るために十分なことをしていないと指摘した。

同報告書は、米国の留学生、学者、管理者らのインタビューに基づいて作成された。報告書によれば、2014~22年の間に、38か国の外国政府が91か国の大学で854件の国境を越えた弾圧を直接起こしたという。これらの事件には、暗殺、暴行、拘留、不法追放などが含まれるが、氷山の一角に過ぎないかもしれない。

米国では、身体的暴行は6件しか記録されていないが、オンライン・ハラスメント、デジタル監視、ハッキングやスパイウェア、脅迫、海外にいる家族に対する脅かしなどが一般的だ。

2023年、米国では100万人以上の外国人学生が学んでいる。米国の大学の教授は5人に1人が外国出身。

留学生にとって、国境を越えた抑圧は、政治や世界情勢についての議論が監視される可能性のある授業に参加する能力を著しく制限される。客員研究者の中には、出身国で学問の自由が失われたために特に米国に移住した者もいるが、国境を越えた抑圧は、権威主義的な支配の範囲を米国にも拡大する。

外国政府の標的にされるということは、研究者たちが研究成果について自由に語ることができなくなるということを意味している。場合によっては、自分や家族を危険にさらすことなく、生涯の仕事を続けることができない可能性もある。

学生に密告を奨励 中共による国境を超えた抑制が最も顕著

報告書は世界中の独裁政権による国境を超えた抑制をまとめたものだが、中国人留学生に対する脅威が最も深刻だ。中共政権は自分を批判する人を抑制してきた。米国の大学には中国人留学生が多く、米国の留学生の約3分の1を占めている。

報告書は複数の例を挙げて説明した。2022年にジョージ・ワシントン大学で起きた中国の人権を批判するポスターをめぐる暴動はその一例。2019年にカナダのマクマスター大学で、中国学生学者友好聯誼会は中共大使館関係者の要請を受け、ウイグル人活動家の同大学での講演を妨害した。この学生団体は同年末、マクマスター大学のキャンパスから追放された。

米国のキャンパスで起きたハラスメントのなかには、外国政府による直接的な行動の結果であるものもある、と報告書は述べている。

例えば、人権セミナーに出席していた外国人大学院生が、クラスメートの教室での議論について報告するよう大使館職員から求められた。報告書では、関係者の保護に配慮し、関係者の氏名や国名は明らかにしていない。

周知のように、中共政府はこの種の学内密告を奨励している。

バークリー音楽大学の中国人学生・シャオレイ・ウーは2024年1月25日、中国の民主化を支持するチラシを貼った活動家に嫌がらせをし、彼女の活動を中国の法執行機関に通報すると脅したとして、サイバーストーキング(テクノロジーを利用してしつこい嫌がらせや脅迫をするストーカー行為)と脅迫の罪で有罪判決を受けた。

ウーは現在、4月24日の裁判官による判決を待っている。 上記2つの罪は、いずれも最高で懲役5年、25万米ドル(約3700万円)の罰金が科せられることになる。

このような密告文化で、米国では一部の学生や学者が自己検閲を余儀なくされている。イェール大学のある学生ジャーナリストは、中共政府に対する抗議活動を報道することで、中国にいる家族が危険にさらされるかもしれないという懸念を表明した。

この脅威は、政府の標的とみなされる人々に直接影響を与えるだけでなく、学問の自由を抑制し、公共の言論を抑圧することによって、キャンパス内の全員に影響を与える。

フリーダム・ハウスは、米国の大学におけるこのような脅威に対する報告メカニズムの欠如は、「キャンパス対応における最大の弱点である」と述べた。

報告書の共著者であり、フリーダム・ハウスの戦略・デザイン担当リサーチ・ディレクターであるヤナ・ゴロホフスカイア氏は、「事件を報告する方法を作り、学生を標的にした企てを公に糾弾し、職員の意識を高めることは、キャンパスにおける国境を越えた抑圧がもたらす脅威を予防し、緩和することに大いに役立つだろう」と指摘した。

これまでのところ、すでに行動を始めている大学もある。 例えば、ウィスコンシン大学マディソン校の国際安全保障室は、国境を越えた弾圧の目的と手口を概説し、支援するためのリソースを提供する情報ガイドを作成した。イェール大学では、新入生オリエンテーションの中で、この問題について議論している。

オーストラリアの高等教育機関と政府関係者の合同委員会は、学術の開放性を維持しつつ、学生や学者を外国の干渉から守るための手引きを起草した。

林燕
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