中国共産党などによる技術窃取のリスクが高まるなか、政府は「セキュリティー・クリアランス制度」に関する法案を今国会に提出するための準備を進めている。港湾などの重要インフラをサイバー攻撃から守るべく、経済安全保障推進法の改正も進める。
30日午前、岸田文雄首相は経済安全保障推進会議に出席し、経済・技術分野においても「情報保全を更に強化する必要がある」と強調した。高市早苗経済安保相に対し、法案提出に向けた準備を急ぐよう指示した。
セキュリティー・クリアランスは、政府が保有する安全保障上重要な情報にアクセスする政府職員や民間人に対し調査を行い、信頼性を確認した上でアクセスを認める制度。重要情報を扱う際には特別の管理ルールを定め、漏洩した場合には厳罰を科す。
日本には反スパイ法がなく、現状では特定秘密保護法によって、他国との情報共有において信頼性を担保している。いっぽう、政府文書によると、経済安全保障に関する情報は現行法では必ずしも保護されていない。軍事・非軍事の境界線が曖昧になり、防衛と民生が一緒になったデュアル・ユース技術が重要度を増すなか、セキュリティー・クリアランス制度の整備によって民間企業の能力向上に資する狙いもある。
昨年名古屋港がサイバー攻撃を受け、コンテナの搬出入作業の停止を余儀なくされた事案を踏まえ、経済安全保障推進法の「基幹インフラ」の対象に、「一般港湾運送事業」を追加する改正案を取りまとめる。
特定秘密保護法の運用基準の見直しなど、セキュリティー・クリアランス制度のスムーズな導入を見越した措置も講じる。
岸田首相は「関係大臣は高市大臣と緊密に連携し、政府一丸となって取り組んでほしい」と述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。