世界最大の格付け企業S&P ESG評価を終了するもナラティブは継続(1)

2023/09/11
更新: 2023/09/19

世界最大の格付け企業の1つであるスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、信用格付けに環境・社会・ガバナンス(ESG)スコアを考慮しないと発表したが、この1年間、環境面や社会面での信用度を評価され続けてきたいくつかの州はその決定に後悔を感じていない。

ESGスコアは、S&P、ムーディーズ、モーニングスターなどのいくつかの格付け機関によって、化石燃料の削減や人種的およびジェンダー平等の支援といった進歩的基準への準拠度合いを測定するために使用されている。

さらに、ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)のような組織は、企業平等指数によって企業のLGBTQ問題への支援を評価している。

2022年、S&PはESGスコアリングを都市、州、国にも拡大したため、米国のいくつかの州の怒りを呼んだ。また、個人に対しても社会信用スコアが適用されるのではないかという懸念が高まった。当時、ユタ州財務官のマーロ・オークス氏は、ユタ州知事、司法長官、連邦議会議員、憲法担当官、州議会指導者とともに、この慣行の終了を要求する手紙をS&Pに送った。

先週のS&Pが示した翻意について、オークス氏はエポックタイムズに「格付け機関は、ESG指標をレポートから外そうとしているようだ」と語った。

「そのレポートには州も含まれるが、この変化がどのように実施されるかを注視したい」

8月4日、S&Pは、ESG慣行についてのナラティブ情報は提供し続ける一方で、借り手の包括的な信用格付けに含まれていたESGスコアの計算は行わないと述べた。

S&Pは公式リリースの中で「S&Pグローバル・レーティングスは、ESG要因が当社の信用力評価にどのように影響するか、またどのような場合に影響するかについて、市場に透明性を提供できるよう引き続き取り組んでいく」と述べている。

一部の業界専門家は、S&PのESGからの撤退は、州議会、州司法長官事務所、そして最近では議会の共和党からの圧力によるものだと述べている。

ミシガン大学ビジネススクールのトム・リヨン教授はフィナンシャル・タイムズに対し「S&PがESGスコアから撤退したのは、共和党の攻撃に直面して企業がしわくちゃになった最新の例に過ぎない」と語った。

ウェストバージニア州は、ESG業界に対する告発を主導的に行っている州の1つだ。

「S&P グローバルが、こうした主観的で政治的に動機付けられたESG格付けスコアを捨て、代わりに、企業分析をする上で、より堅実で客観的な財務指標に戻るべきだという我々の呼びかけに応えてくれたことに感謝している」とウェストバージニア州財務官のライリー・ムーア氏はエポックタイムズに語った。

「ESG運動は、過激な社会的議題を実行するために、グローバルエリートによって仕組まれた詐欺として排除されており、それを阻止するための我々の戦いの明らかな勝利だ」

「この格付け制度は、転げ落ちていくきっかけを与えるようなもので、すべての国民にESGスコアをつけ、ウォーク(目覚めた)アジェンダに従わなければ経済的な安定を保証しないと脅かしている」とムーア氏は言う。「S&Pグローバルが手を引いたことは、アメリカの金融が健全さを取り戻す希望となる」

ESGは財務健全性の尺度か?

ESGスコアに加えて、ベンチマークS&P 500インデックスの作成者であるS&Pは、2019年4月にS&P 500 ESGインデックスも発表した。

この指数は、S&P500と同様の業界グループ全体への影響を維持しながら、サステナビリティ基準を満たす証券のパフォーマンスを測定するように設計されている。

1月、S&Pのアナリストは、「発売日から2022年末まで、ESGインデックスはベンチマークであるS&P500を累積で9.16%上回った」と報告した。

ESG基準は、石油やガス生産者のようないわゆる「ブラウン」企業を過小評価し、金融やテックなどの「グリーン」で低排出の企業を支持することがよくある。

この戦略は、COVID-19によってロックダウンが導入され、エネルギー企業の株価が急落した時には、成功したことが証明されたが、2021年に「ブラウン」企業の株価は急激に回復し、「グリーン」な企業の大幅に低調なパフォーマンスにつながった。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのロリ・ハイネル最高投資責任者(CIO)は2022年12月、「どのような時間枠で見ても、ESGがリターンに良いという証拠はない。実際、我々はそれとはまったく逆の証拠を見てきた。

「昨年は、エネルギー企業を保有していなければ、広範なベンチマークと比較して惨憺たる成績だった」とハイネル氏は語った。「その前年は全く逆だった。しかし、それは単なる偶然であり、良い投資先だからというわけではない」

ESGクレジットスコアは、政治的で恣意的であり、借り手の実際の信用力とはほとんど関係がないと批判されてきた。色々な理由から、かつてESGの積極的な支持者であった多くの人々が現在、ESG投資から撤退している。

S&Pの翻意は、「アスペン・アイデアズ・フェスティバルでラリー・フィンク(世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEO)氏に見せたものとよく似ている」とコンシューマーズ・リサーチのエグゼクティブ・ディレクターのウィル・ヒルド氏はエポックタイムズに語り、「フィンク氏が6月にESGという用語をもう使用しない」と述べていることに言及した。

「彼は基本的に誰もが知っていることを言っている。つまり、彼らの行動の悪影響とその背後にある意図のために、ESGは有毒な用語になっている」とヒルド氏は語った。

「そのため、多くの企業が少なくとも名目上はESGから離れつつある。明らかに、S&Pはそれより少し進んでいる。S&Pは自社のESG格付けをなきものにしようとするだろう」

(続き)

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。