中国の医療界や医療現場が腐敗していることは、今に始まったことではない。官界も財界も絶望的なほど腐敗した現代の中国であれば、医療の世界も当然それに染まる。
そうした医療倫理が欠如した延長線上に臓器収奪という悪魔の所業が容易に接続することは、中国共産党政権下の中国においては「元手がタダの、よい金儲け」として黙認されるからである。
しかし「腐敗」は、表向きは取り締まりの対象となる。中国医療界の腐敗ぶりは日増しにひどくなっており、過去8カ月だけでも中国の病院の院長や責任者ら155人が当局からの調査を受けている。この数は通年の2倍以上であるが、これでも「不完全な統計」だという。中国メディア「第一財経」7月30日付が報じた。
中国当局の過去の公式通知からして、医療体制の幹部が調査される理由は主に2つある。
1つは手にした権力を利用して、病院内の人事を任免したり、病院に関係するインフラプロジェクトや医療設備、医薬品などの調達を通じて、納入する業者からキックバックや賄賂をもらう「医療腐敗」。もう1つは、治療や手術などの過程で、患者やその親族から所定の治療費以外の金銭を医師が受け取る「医徳の欠如」である。もちろん、その両者の複合である場合も多い。
つまり、病院長などの役職にある人間が自身の権限を利用して汚職を行うほか、現場の医師による汚職も少なくないのだ。なかには、患者から「紅包(謝礼金)」をせしめたり、より多くのキックバックを得るために、適正治療とは程遠い、過度の検査や不必要な手術、無駄な薬の処方などを行う医師もいる。
湖南省創傷急救医学中心(センター)の元副主任で、中南大学湘雅二医院の副主任でもある「劉翔峰」という医師がいる。この劉翔峰は「悪魔医者(魔鬼医生)」の異名をもつ有名人で、その「悪徳ぶり」は中国メディアによっても報じられるほどだ。
もとは軽症だった患者でも、劉の「治療」を受けた後は、なぜかかえって病状がひどくなるという。また劉は、病気であろうがなかろうが患者とその親族に手術をさかんに勧め、さらに単なるヘルスケア製品を「薬」として使用するよう患者に求めるなど、治療より「金儲け」がすさまじい。
中国の医療における腐敗は、多くの場合、医療機関の暗黙の了解のもとで行われてきた。病院側も利益追求のために、患者からお金を引き出そうとする個々の医師の腐敗については黙認してきた実態がある。
2022年1月、大手の民間病院「東莞康華医院」のある手術室の年会で(一部の改革派の職員によって)「この手術室は金で溢れている」と書かれた横断幕が掲げられ、物議を醸した。
このように外部に暴露された医療界の腐敗・汚職は、まさに氷山の一角に過ぎない。
NTD新唐人テレビの取材に応じた広州軍区の元医師である譚氏は、次のように語った。
「中国で病気にかかったことのある人であれば、みな心得ている。医師に紅包(謝礼金)を渡すのは、いたって普通のことだ。医師の正規の給料は低く、生活も苦しい。だから医師たちは、紅包や患者に処方する薬などからのキックバックを頼りにしている」
半世紀前の文革時代から、医師や教師(大学教授もふくむ)などの知識分子は「臭老九」の一つとして軽視され、差別的な扱いを受けてきた。ただし、理論上は「農民や労働者こそ最も尊い職業」としながら、そこから搾れるだけ搾り、刈り取る韮菜(ニラ)にしてしまうところに、この体制の恐るべき悪魔性がある。
いずれにしても、中国の医師が正規の給料を低く抑えられてきたことは、現代まで続く事実である。その一方で、ほとんど収賄にちかい「副収入」も半ば公然のこととして黙認されてきた。
そうした現象があまりに慣習化しているため、医療の世界でも腐敗は根強い。言わば「腐敗という慢性病」に、中国の医療界が罹患しているようなものである。
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