G7サミットが開かれた広島では19日、各国首脳が平和記念資料館を訪問し、初めてそろって原爆死没者慰霊碑への献花を行った。初日より歴史の一頁を飾るサミットでは、中国とロシアの脅威を念頭に議論が行われ、サプライチェーン強靭化と経済的威圧への対処で結束を示すことが期待されている。
中国問題評論家はG7諸国のこうした動きについて、「脱中国化(デチャイナイゼーション)」、すなわち中国への依存から脱却する流れだと指摘する。今回のサミットでは喫緊の課題への対策のみならず、「今後30年間の世界経済の構造を新たに方向づける」転換点になる可能性があるという。
進む「脱中国化」
G7広島サミットに先立ち、13日に新潟で開かれたG7財務大臣・中央銀行総裁会合の声明では、供給網の多様化を促進する新たなスキームを遅くとも今年末までに立ち上げることが記された。中国の経済的威圧への対処を念頭に、国際的な供給網の多様化を促進する狙いだ。
「RISE(強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)に向けたパートナーシップ」と名付けられた新スキームは、低・中所得国がクリーンエネルギー製品のサプライチェーンの中流及び下流で、より大きな役割を果たせるよう支援する。
財務相会合の共同声明では中国への名指しこそ避けたものの、ロイター通信の12日付報道によると、最終草案には、鉱物の精製や加工、部品製造など戦略的分野において中国への依存度を減らすこと、「ホスト国の経済主権を損なわない努力」をすることなどが記されていたという。
それを裏付けるかのように、イエレン米財務長官は11日の記者会見で、中国の他国に対する「経済的強制」への懸念をサミット参加国と共有し、対抗策を検討していると述べた。
米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」アジア担当のキンバリー・レーン氏は、G7では戦略的に重要な分野への対中投資の審査を強化し、必要に応じて規制する仕組みを構築する可能性があると指摘した。対象分野として、半導体や量子コンピュータ、人工知能(AI)を挙げた。
このほか、再生可能エネルギーやレアアース等の分野におけるサプライチェーン多様化への協力が期待されており、人権や環境政策に関する最低基準の設定も求められるとした。
広島サミットで新たな流れ
在米中国問題評論家の石山氏は、G7広島サミットの議論が、向こう30年間の世界経済構造の大きな転換点になる可能性があると大紀元に述べた。
「デチャイナイゼーション」と石山氏が呼ぶサプライチェーンの再構築とは、重要な原材料となる戦略物資に対する中国の独占を排すること、そして高度な技術と最先端のテクノロジーを必要とする産業を中国に置かないことだ。
こうすることにより、「中国は引き続き世界貿易の一員として止まることができるものの、新スキームの元では、通常技術と一般消費財のような中間・下流部分の生産しかできなくなる」という。
石山氏によれば、中国は現在、いわゆる「中所得国の罠」の段階にある。これは発展途上国の国民が中所得にまで経済発展した後、成長が鈍化する現象を指す。
「労働力、資源、土地、安価な物品など、既存の要素は飽和状態にある。経済成長を続けるためには、産業のアップグレード、つまり高度な技術やハイテクな製造業などが必要だ」。
中国は従来より経済発展を欧米や日本といった先進国の海外投資や技術移転に頼ってきた。G7のグローバルサプライチェーン再構築によって中国国内の産業発展が滞り、成長への筋道を断たれれば、世界第二位とされている中国経済の地位と影響力は大きく揺らぐ可能性がある。
「リスク削減を」欧州委員長
首脳たちは19日に対中政策会議を行なった。フォンデア・ライエンEU委員長の声明から、サプライチェーン再構築に関する議論が行われたことが伺える。
ライエン氏は「切り離し(デカップリング)は現実的ではない」としつつ、レアアースや医薬品成分などで中国に依存する部分を減らし、経済的なリスク削減のためにも同盟国間の連携を強化すべきとした。また、安全保障へのリスクとなる高度技術分野の輸出や対中投資規制の必要性にも言及した。
EUと中国との貿易赤字が10年間で3倍の4000億ユーロに達したという。この不均衡は「中国の国家資本主義システムが作り出す非市場的な実践、隠れた補助金、公共入札における差別」だと要因を並べ、対策を講じるべきとした。
最後に中国「一帯一路」代替案となるよう、G7によるグローバルなインフラと投資に関する強力なパートナーシップの構築を呼びかけた。
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