中国四川省・成都市では4月初旬、集合住宅に住む住民同士のトラブルが大規模な衝突に発展した。中国における不動産開発の問題点と、政府当局の不作為が改めて浮き彫りとなった。専門家は、高圧的なゼロコロナ政策の「後遺症」によって社会が不安定化しており、今回の事件は民衆の不満を示す象徴的な出来事だと指摘した。
壁をめぐる住民同士の攻防
住民同士の衝突が起こったのは四川省の成都市にある住宅街の一角。マンションの間に建てられた鉄の柵(さく)をめぐって、建築推進派の住民と反対派の住民が激しくぶつかり合った。
インターネットにアップロードされた現場の映像からは、反対派の住民が鉄の柵を押し倒そうとするなか、鉄の柵を倒されまいと押さえる推進派の住民の姿が確認できる。双方の攻防はしばらく続き、最終的には鉄の柵は反対派の住民に押し倒された。
「人を殴っている!」
鉄の柵が倒されると、住民同士の衝突がエスカレートし、揉み合いとなった。推進派の住民の一部が投げたレンガや鉄パイプによって、負傷した住民もいるという。
衝突現場には大勢の警官隊が送り込まれ、一部の住民が拘束された。事件当時、現場には最大で「3〜4千人の住民が集結していた」という。
事件の発端
住民同士の衝突はなぜ起きたのか。現地住民は大紀元の電話取材に対し、不動産業者が恣意的に建築計画を変更したことが原因だと語った。
事件現場の住宅街は当初、同じ規格で開発が進む予定だったが、現在ではセキュリティや景観等の要素から実質的に2区画に分かれている。そのうち、先に竣工した区画はセキュリティに優れた閉鎖式の居住区域であり、観賞用の庭園を備えた高級住宅地だった。いっぽう、建設業者の統廃合により事業を引き継いだ業者が新たに建てた区画は商業施設と住宅が一体化したものとなり、庭園はなく、自由に出入りできる施設となった。
高級住宅地に住む住民は「開発を引き継いだ業者は庭園を立てると約束したにもかかわらず、結局建てなかった。そして私たちに相談することなく、高級区画の庭園を共同使用すると言い出した。住民は皆騙されている」と語った。
さらに、事業を引き継いだ業者は入居者の意見を聞くことなく開発計画を変更し、新しく建てられた区画と同一視されることで不動産の価値が低下すると反発した。
いっぽう、新しく建てられた区画に住む住民は取材に対し、「行政の役人は事件当日、鉄の柵は撤去しなければならないと言った。だから私たちは鉄の柵のところに行き、それを押し倒した。しかし住民同士の衝突に発展し、負傷者も出てしまった」と述べた。また、鉄の柵が消防通路を塞いでいるとの意見もあった。
住民同士の紛争は1年以上続いているが、地元関連部門に解決を要請しても効果はなかった。
警察の対応も遅きに失した。警官隊が現場に到着したのはフェンスが押し倒された後であり、「今更何をしに来たんだ」と住民は憤慨したという。
社会不安定への「危険信号」
中共ウイルスに対する厳格なロックダウン政策が解除された後も中国経済は未だダメージから回復できず、社会に残された爪痕は市民同士のトラブルや凶悪事件などの「後遺症」として顕在化している。
中国問題専門家の王赫氏は3日、大紀元の取材に対し「中国共産党の統治がもたらした社会の歪みによって人々の生活環境が劣悪になり、社会の不安定さが増している。これは危険信号だ」と述べた。
王赫氏は、中国共産党は民衆の鎮圧にリソースを割いてきたために、社会問題を解決してこなかったと指摘。さらに中国共産党が率先して不公正な政策や商業慣行を導入したことで、社会の各セクターで汚職が蔓延り、民衆の道徳水準が低下したと述べた。その結果、悪質な犯罪やトラブルが頻発し、社会全体が崩壊しつつあると警鐘を鳴らした。
「中国人は希望を感じられず、社会には絶望感が漂っている」と王赫氏。「人々が不満を募らせるなか、ほんの小さな出来事も重大な事件に発展しかねない」。
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