山口県岩国市で、中国に本社を置く上海電力によるメガソーラー事業が進む。山間部に設置される24万枚もの太陽光パネルの調達先は、新疆ウイグル自治区の強制労働に関わり米国から取引制限されている中国メーカーであることがわかった。
9月の岩国市議会で、市は事業者の仕様書から、太陽光パネルの製造会社はトリナ・ソーラー(天合光能、江蘇省常州市)であることを明らかにした。納入枚数は24万3480枚だという。
トリナ・ソーラーは、ジンコーソーラー(晶科能源)やロンジ・グリーンエナジー(隆基)などと並ぶ太陽光パネルの世界大手。合同会社を通じて実質このメガソーラー計画を管理する上海電力は、中国国有の国家電力投資集団の傘下にある。
中国政府は国家的に再エネ事業に力を入れ、ポリシリコンやパネルなど太陽光パネルの主要要素の世界生産能力の8割超を占めている。国際エネルギー機関(IEA)によれば将来的に中国シェアは95%まで高まるとみられている。
しかし、その生産と供給網には強制労働の関与が指摘されている。米戦略国際問題研究所(CSIS)や英シェフィールド・ハラム大学が昨年発表した調査報告書は、中国共産党当局による数百万人もの大量収容と強制労働により、太陽光パネルの材料採掘や製造が行われていると指摘している。
大規模な人権侵害と強制収容の報告を受けて、米国は今年6月にウイグル強制労働防止法を施行。米国では、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入が原則禁止されている。
同法施行以降、米税関・国境警備局(CBP)はトリナ・ソーラーを含む中国3社の太陽光発電製品を差し止めたという。ウォールストリート・ジャーナルなどが関係筋の話として8月、伝えている。
血と涙と怨念が染みついている
このメガソーラー計画について、山口県や有識者との意見交換を重ねる岩国市の石本崇議員に話を伺った。
「電力に色はついていないからもちろん見えないが、この電力には血と涙と怨念が染みついているのではないか。計画は度し難いものがある」と語気を強めた。
石本氏はまた、岩国メガソーラー計画地は自衛隊航空基地および米海兵隊基地からほどなく近いとし、中国政府の影響下にある企業の土地利用は安全保障上のリスクを生みかねないと懸念を示す。
林地の開発許可は3年前、山口県が許可した。この見直しを求める住民の請願も行われたが、メガソーラー建設計画は進む。市によれば工事完了は当初予定の2024年より前倒しされ、23年春になるという。発電電力は一般家庭約2万2500世帯分に相当し、全て中国電力に売電する予定。売電収入は年間約36億円と試算されている。
トリナ・ソーラーの高紀凡代表は11月28日に開かれた、日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)に出席。エネルギー資源に乏しい日本と中国は、住宅や施設の屋根に設置する太陽光発電で「エネルギー安全保障」を高めることができると述べ、さらなる事業展開に意欲を見せた。
この会合は経団連と中国国際経済交流センター(CCIEE)が共催し、日本側から福田康夫元首相や十倉会長、中国側からは曽培炎元国務院副総理らが参加している。
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