NATOの脅威「ロシアと密接に協力する中国」 日本などパートナー国との関係強化は重要=事務総長

2022/05/04
更新: 2022/05/05

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4月28日のNATOユース・サミットに出席し、NATOが直面しているグローバルな課題の一つとして「ロシアと密接に協力する権威主義的な中国の台頭」を挙げた。このため、日本などインド太平洋のパートナー国との関係強化が重要だと強調した。

同氏は、中国が軍事予算で世界2位の規模を持ち、最新の核ミサイルや長距離ミサイル、極超音速ミサイルの開発に多額の投資をしていると指摘し、さらには「中国は私たちと価値観を共有していない」と警戒した。

中国による香港やウイグルにおける弾圧や、報道と表現の自由を尊重しない姿勢を問題視しており、技術投資の著しい中国が欧州に近接するアフリカや北極などで5Gなどの重要インフラを支配しようとしていることにも懸念を示した。

NATOは6月にスペインで開く首脳会議で、中国戦略を柱の一つとすることを発表している。

グローバルなアプローチが必要

ストルテンベルグ氏はNATOがオーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国などのパートナーと協力して「世界中で民主的価値観のために立ち上がることがさらに重要だ」と強調。「グローバルなNATOにはならないが、世界的な脅威と課題に直面しているため、この(アジア太平洋)地域と北米、欧州はグローバルなアプローチが必要だ」と述べた。

NATOでは2019年12月の首脳会合で初めて中国に言及して以来、対中認識に高まりを見せており、日本を含むアジア太平洋パートナーとの協力拡大に意欲を示している。2021年の首脳会合でも豪日NZ韓との協力促進する構えを見せた。

ストルテンベルグ氏によれば、現在の戦略概念は2010年当時の状況に合わせたもので中国には一言も言及されておらず、「新しい戦略概念では今とはまったく異なる形で中国(の課題)について反映されるだろう」と予測した。

また、中国が技術に多額の投資をしていることに触れたうえで、NATOは技術力で優位性を維持しなければならないことを強調した。NATOは4月、民間部門と協調して破壊的技術エマージング技術人工知能量子コンピューティングなど多くの軍民両用技術を開発し活用していくイニシアチブ「DIANA(ダイアナ)」の設立を発表した。10億ユーロ規模の基金にも合意している。

NATOは加盟国軍の合計が332万人、同国防費総計が1兆500億ドルの世界最大の集団防衛組織。締約国に対する武力攻撃は一か国であっても全締約国に対する攻撃とみなし、軍事行動を開始すると定める。現在、フィンランドとスウェーデンが加盟手続きを進めている。条約によれば正式加盟は欧州に限られる。日本は2014年からパートナー国となり、海賊対処共同訓練やアフガニスタン支援、サイバー防衛訓練などに参加している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。