中国によるシエラレオネ接近 深刻なオーストラリア資源依存の表れか

2021/05/21
更新: 2021/05/21

5月7日、中国国家主席習近平氏はシエラレオネ大統領と電話会談を行った。習近平氏は中共ウィルスパンデミックにおいて、西アフリカの国と協力すると約束し、両国は「互恵的な協力関係を拡大すべき」と強調した。中国は現在、天然資源鉄鉱石の輸入を、関係がますます悪化するオーストラリアに依存している。専門家は、中国のシエラレオネへの接近は、同国の豊富な鉄鉱石を狙った動きだと考えている。

西アフリカ海岸にあるシエラレオネはかなりの鉄鉱石埋蔵量を持っていると言われている。中国国営企業である山東鋼鉄会社は2011年から、同国のトンコリリ地域にある鉄鉱を開発し、中国に輸入し始めた。その輸出量は2014年にピークを迎え、1900万トンに達した。2017年以降、エボラウィルスの流行と鉄鉱石の低価格の影響により、トンコリリ地域のプロジェクトが中止された。それ以降、2018年にシエラレオネから中国に輸入した鉄鉱石は100万トン未満に急落し、2020年にはゼロまでに落ちた。

中国は世界最大の鉄鋼生産国にもかかわらず、生産された鉄鋼の量と質は国内の需要を満たすことができない。このため、80%の鉄鋼はブラジルとオーストラリアから輸入している。

昨年、オーストラリア政府は国際社会に対し、中共ウイルスの起源について独立調査の必要性を説いた。中国当局は報復のため、間もなくオーストラリアと様々な領域において目に見えない貿易戦争を始めた。中国は国内の鉄鋼業者に対して「輸入する鉄鋼をオーストラリア製からブラジル製に乗り換える」と促した。

最大の輸出先である中国との関係が悪化しているにもかかわらず、オーストラリア政府は3月29日、2020年度(20年7月~21年6月)の資源・エネルギー輸出額が過去最高の2960億豪ドル(約24兆8000億円)になるとの見通しを発表した。

中国共産党は、鉄鉱石不足の苦境から抜け出すため、さらにギニア共和国に対して140億ドル(1.5兆円)を投資し、22億5000万トン以上の鉄鉱石埋蔵量を持つSimandou鉱山の採掘権を取得した。中国企業は現在、ギニアでSimandou鉱山の開発を準備するために鉄道を建設している。その鉱山が生産を始めるまで少なくとも5〜7年かかると推定されている。

オーストラリアのシンクタンク、ローウィー国際政策研究所(Lowy Institute for International Policy)が去年6月に発表した

報告書では、中国共産党のアフリカにおける鉄鉱石戦略は長期的なものであり、コストは惜しまないと分析。ローウィーは次のように記述した。「たとえ、アフリカで新たな鉄鉱石鉱山開発に、多くの時間と資金がかかったとしても、長期戦となることを分かっている中国が躊躇することはないだろう」。

中国共産党のシンクタンク、中国アフリカ貿易研究センターは4月20日に発表した報告書で、ローウィーの報告とほとんど同じ一節を用いて、その野心をあらわにした。「中国共産党はアフリカで複数の選択肢を持っている。新たに投資するアフリカの鉄鉱石鉱床には、数年もの開発期間と巨額の資本投資が必要であったとしても、中国の投資を止めることはできない」。

米国を拠点とする中国問題研究者の李延明(音訳)氏は、大紀元の取材に対して、「習近平氏が個人的にアフリカ諸国の指導者と対話をしていることは、資源国であるオーストラリアの依存から脱却する決意の表れだとみてとれる。また、中国の鉄鉱石輸入が深刻であることも示している。中国共産党はこれらのアフリカ諸国との協力が、苦境から自らを救う方法となると期待しているのだろう」と語った。

(翻訳編集・蘇文悦)