浜辺に大量の魚の死骸、赤く変色する河 西アフリカの小国 中国企業の廃水で公害

2018/12/04
更新: 2018/12/04

西アフリカに位置する自然豊かな国ガンビアは、4年前に建てられた中国企業の魚加工工場による汚染物質排出で公害が確認されている。汚染物質のために浜辺には大量の死んだ魚が打ち上げられ、河川は赤く変色した。人が泳げば皮膚にかゆみをもたらすという。

ガンビア首都バンジュールの海岸に打ち上げられた大量の魚の死骸(フェイスブックのグループStop Golden Lead Factory exploiting the Gambiaより)

ガンビアは、アフリカで最も小さい国。人口は約200万人で国土はガンビア川に沿うように広がっている。自然保護区域にはマングローブ林があり、資源が豊かで、国民の8割が農業に従事する。

国の環境庁は2017年、中国企業ゴールデン・リード(以下GL)社に対して廃水を海に排出するなど4件の問題で裁判を起こした。同社に汚染被害を被った市民に対して100万ダラシ(約220万円)の補償金の支払いを命じ廃水処理を命じた。操業停止命令には至っていない。

裁判によると、魚処理工場からの排水を、制限なく海にパイプを差し込み廃水を流していた。また環境保護関連法案に違反して、工場活動の記録や報告、廃棄物処理の記録を行っていなかった。

2014年にガンビアに進出した中国GL社は、汚染は地域自治体の環境未整備にあるとして環境汚染問題の責任を否定している。

フェイスブックのグループでGL社の環境汚染を訴えるグループは11月9日の投稿で、GL社が「一日に膨大な量の魚を捕獲している。明らかにおかしい。(生態環境が)継続維持できるものではない」と書き、同社の魚処理工場内部と見られる画像を公開した。捕獲された魚を重機でくみ上げる様子が映っている。同グループは現政権へ対応を強く求めている。

11月、ガンビア首都バンジュールにあるGL社の倉庫で、魚を重機でくみ上げる様子(フェイスブックのグループStop Golden Lead Factory exploiting the Gambiaより)

ガンビアのネットメディア・フリーダムニュースペーパー10月2日付によると、環境保護活動家で米国の大学博士号を持つアマドウ・ヤニー氏は、GL社の廃水パイプの撤去を組織的に仕切ったとして逮捕された。警察報道官によると、ほか3人の環境活動家も逮捕した。

ヤニー氏はガンビア首都ガンジュールに生まれた。米国に留学し、テネシー大学で10年間教鞭をとった。帰国後2004年にはガンビアの情報通信大臣も務めた。仕事のために米国とガンビアを行き来していた。

ガンビアでは、ヤヒヤ・ジャメ前大統領による20年あまりの長期的な独裁政権が続いた。魔女狩りやクーデター首謀者殺害などもあり、国内の異見者は声を潜めた。

2017年1月に民主的な選挙で選ばれたアダマ・バロウ大統領政権が発足。新大統領は、自由主義を約束した。「私たちの国は民主主義の基盤が揺るがされ、腐敗に傷ついた」と大統領就任宣誓式で語った。

しかし、ヤニー氏の逮捕について環境活動家は、国は貴重な自然環境の保護に本腰でないと指摘する。活動家で映画監督のプリンンス・ブバカ・アミナタ・サンカヌ氏は「環境への圧力はますます強まっている。積極的な環境活動は良好な行政運営のひとつだ」とAP通信の取材に答えた。

(編集・佐渡道世)