「ラオスはもうほとんど中国」道路の中国風の装飾、住民苦情で取り下げ

2020/11/11
更新: 2020/11/11

ラオスの首都ビエンチャンの当局は市内各地の街灯に飾られた中国の装飾品を撤去した。この飾りは、中国の影響力拡大を懸念するラオス市民から抗議の嵐を受けていた。国内では中国資本の影響が強くなり、ラオス文化への浸透の懸念が増している。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

ビエンチャンのエネルギー鉱山省の当局者によると、伝統的な中国ランタンに似せた装飾は、2018年に中国政府の融資を受けた都市整備プロジェクトの一環として行われ、今年完成した。

同関係者は、「街の通りを美しくする計画はあったが、実行するための資金がなかった」と述べた。「そこで中国政府に提案したところ、ランプ、支柱、装飾品の設置補助金が承認され、今年中に設置が完了した」という。

ビエンチャン市管理サービス室の関係者は、「彼ら(中国当局)の都合で飾りを取り付けたり、取り外したりできるようだった」と話した。

300セットあまりの中国風の装飾は、12月2日、ラオス人民民主共和国建国記念日を前に、ビエンチャンの7つの主要道路沿いを拠点とする中国の民間企業によって準備された、と関係者は述べた。

11月3日、ラオス国民議会(国会に相当)文化委員会委員と複数の当局者がメコン川の土手に沿ったある市道の街灯を視察し、中国風の装飾が撤去されたことを確認したと公式発表した。

住民「ラオス、今やほとんど中国」

ビエンチャンの路上に中国の文化芸術が展示されたことに、ビエンチャンの多くの人々は怒りを爆発させた。ある首都居住者は、中国の経済的影響力の拡大を懸念し、RFAに対し、この施設は「中国によるわが国への支配を象徴した」と語った。

また、別のビエンチャン住民は「中国のものではなく、ラオスの美術品で作られた装飾品を見たい」とし、「文化と芸術がほとんど消えてしまった」と述べた。

ビエンチャンのオンテウ寺院のある僧侶は、市当局は装飾の目的を説明すべきだったと述べた。例えば文化交流の象徴として一時的な装飾だという説明はできたかもしれないと話した。

「アジアの電力」になるとの野心を持つラオスは、インフラ建設と貿易支援を目的とする1兆3000億ドル規模の一帯一路に参加し、水力発電ダム、中国と繋ぐ越境高速鉄道など、インフラ建設プロジェクトに中国から何十億ドルもの投資を受けてきた。中国は、ラオス最大の外国投資国であり、援助提供国でもある。また、タイに次ぐ貿易相手国だ。

格付け大手フィッチ・レーティングスは9月23日、ラオスをBマイナスからCCCに格下げした。経済成長率は2019年の5.5%から2020年には0.5%に低下すると予測され、1990年以降で最も低い経済成長率になる見込みだ。

​​フィッチによると、ラオスの対外債務は膨らむばかりだという。2024年までに毎年11億米ドルの返済が必要になる。2020年には対外純債務はGDPの85%を超えると予測される。さらに、公的保証債務はGDPのほぼ65%に相当し、その半分は中国が保有する。

​ビエンチャン―ボーテン高速鉄道と水力発電開発は、中国から59億米ドルの融資が行われた。これまでの同国のインフラよりもはるかに高額なプロジェクトには国内からも疑問視する声が絶えなかった。債務返済の見通しは、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の影響でさらに見通しが立たない。

ラオスは中国と東南アジアの間の重要な陸路の入り口であり、豊富な天然資源がある。2018年、中国・赤峰黄金社はラオスのセポン銅金鉱山を買収​した。

中国の国有企業である中国南方電力網は9月、ラオス国電公社と提携し、ラオスの電力の管理権を持つ合弁会社を設立する。新しい電力会社の過半数の株は南方電力が持つという。​ラオス国電公社の債務残高は約50億ドルに上り、中国からの投資を受け入れた。しかし、ライフラインとなる電力の支配権を握ることは国の安全保障の問題につながるとして、国内外で懸念が強まっている。

(翻訳編集・佐渡道世)