人民日報、NZ元首相の署名記事を掲載 本人否定も「国益を損なった」との批判

2019/02/23
更新: 2019/02/23

中国共産党機関紙・人民日報英語電子版は18日、ニュージーランド元首相のジェニー・シップリー(Jenny Shipley)氏が署名した評論記事を掲載した。記事は、中国当局が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」を絶賛する内容で、「私たちは中国に学べ、中国に耳を傾ける必要がある」と題された。しかし、シップリー氏は寄稿を否定した。

人民日報は18日、「オピニオン」の欄に同氏の署名記事を掲載した。記事は、中国当局の一帯一路政策を「これまで聞いたことのない最も素晴らしいアイディアの1つだ」と称賛した。

人民日報英語電子版2月18日付(スクリーンショット)

文末に「本文は2018年12月人民日報記者の取材に基づいている」との文言が書かれている。

AFP通信社の報道によれば、当初「本文作者はニュージーランド元首相」となっていたが、20日に削除された。

ウインストン・ピータース副首相兼外務大臣は19日、同記事について強く批判した。副首相は議会で、シップリー氏がニュージーランドの国家利益を損なったと非難した。

地元紙ニュージーランド・ヘラルド(19日付)によると、シップリー氏は、2018年12月人民日報の取材を受けた後、同紙に関わったことがないと説明した。シップリー氏は、ニュージーランドと中国の外交関係が冷え込んだ今、昨年12月に受けた取材が第一人称の形で記事化され、称賛記事になるとは思いも寄らなかったと弁明した。

いっぽう、シップリー氏は親中派として知られている。1997~1999年までニュージーランドの36代首相を務めた。同国初の女性首相である。2002年に政界引退後、ビジネス界に転身した。同氏のリンクトイン(LinkedIn)プロフィールでは、現在中国建設銀行ニュージーランド支店の会長であると紹介されている。ほかにも中国と貿易関係のある会社の取締役を務めている。

ピータース副首相は国会で、メディアの取材に対して「銀行経験の少ない人が中国2番目の銀行を管理している。異常としか言いようがない」と批判した。

人民日報の記事に直接引用された発言はシップリー氏のもので、同氏はこれを否定しなかった。

ファーウェイ排除をめぐって両国関係に変化

ニュージーランド政府は昨年11月、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を同国の次世代通信規格(5G)ネットワークの構築から排除すると決定した。

中国当局は2月9日、ニュージーランド航空289便(ニュージーランド・オークランド出発、中国・上海着)の着陸を拒否した。同便は離陸から4時間半後に、オークランドに引き返した。ニュージーランドのメディアによれば、中国当局は着陸許可申請書類に「台湾は独立国家」と示す内容があったとして、着陸の許可を認めなかった。

ニュージーランド・ヘラルド19日付によると、同国のジャシンダ・アーダーン首相が、中国当局との関係改善を図り、一帯一路への関与を強化している。アーダーン首相は現在、インフラ建設について中国側と話し合いを続けているという。

中国当局は、今年4月に北京で開催される一帯一路国際フォーラムに、ニュージーランドのデビッド・パーカー経済発展大臣を招待する予定である。

中国の「外国の友人」利用に警戒を

ニュージーランドの中国問題専門家、カンタベリー大学のアン・マリエ・ブレイディ―(Anne-Marie Brady)教授はラジオの取材で、シップリー氏が中国官製メディアの取材を受けるべきではないと指摘する。「フェイクニュースは中国のお手のもの」

さらに、「中国には、外部の力を利用して共産党を宣伝するという策略が存在している。『外国の友人』を共産党のスピーカーとして利用している。長い間、ずっとこのようにやってきた」とシップリー氏の認識の甘さを批判した。

この騒動について、ブレイディー教授はファーウェイの排除と関係していると分析する。中国当局は現在、「ファイブアイズ」と呼ばれる機密情報収集ネットワークを築く米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国に揺さぶりをかけている。イギリスが2月17日、Huaweiの次世代通信システム5G参入について「リスクは制御可能だ」と表明した。昨年12月、イギリスはファーウェイ排除に賛同する意思を示した。

(翻訳編集・張哲)