中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)を務める孟晩舟氏が10日、対イラン経済制裁をめぐる詐欺容疑で、米政府の要請を受けたカナダ政府に拘束された。中国外交部(外務省)は8日と9日、カナダと米国の駐中国大使をそれぞれ呼び出し、孟容疑者釈放を求めた。
孟容疑者はファーウェイ創業者で最高経営責任者(CEO)任正非氏の長女である。7日、カナダ・バンクーバーの裁判所で、孟容疑者の保釈請求を巡る審問が行われた。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、検察側は、孟容疑者が香港の会社を通じて、米国と欧州連合(EU)の対イラン経済制裁を回避したと指摘した。孟容疑者の身柄が米国に引き渡され、また裁判で有罪となれば、30年以上の禁錮刑が言い渡される。
中国当局は、孟氏の逮捕に強く反発している。
情報筋がRFAに対して、中国当局がカナダと米の政府に強く抗議したのは「孟容疑者の身柄が米国に引き渡されることに不安を抱いているからだ」とした。孟氏が米国に引き渡されると、米司法当局の管轄下に置かれ、「誰もが干渉できなくなる。孟氏が米政府の捜査に協力する恐れがあるからだ」という。
ロイター通信によれば、米政府は今まで、ファーウェイが世界金融機関を利用し、対イラン経済制裁に違反する取引の実態を調査してきた。ロイター通信が情報筋の話を引用し、少なくとも2016年から、米政府はファーウェイへの調査を始めていた。孟容疑者の案件はその調査の一部だという。米政府は、対イラン制裁関連のほかに、中国情報機関としてのファーウェイによる米国家安全保障への脅威を検証していたという。
いっぽう、中国国内有識者はRFAに対して、孟容疑者は中国当局にとって「政治要人より重要な役割を果たす人だ」との見方を示した。
「孟氏は中国の特権階級の一人で、その役割が他の政治要人よりも大きい。彼女は軍事企業(ファーウェイ)のなかで非常に重要なポストに就いている。父親に次ぐ地位だ。この軍事企業は中国当局主導の『中国製造2025』計画、ネットワーク設備や一部の兵器の製造などを担っている」
中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は10日に掲載した評論記事で、米国とカナダを強く批判した。同記事では、カナダが孟容疑者の身柄を米国に引き渡せば、中国とカナダの外交関係が「挽回できない打撃を受ける」と脅した。また、「米が司法および米とカナダとの関係を濫用して、中国公民を迫害している」と主張した。
中国広東省に住む人権活動家の王愛忠氏は、RFAに対して、中国のネットユーザーは孟晩舟氏の逮捕について強い関心を寄せていると述べた。「ファーウェイは中国IT業界の代表的な企業だから。今後、ファーウェイが中興通訊(ZTE)のように、米政府の制裁を受けるとなれば、国自体が大きな影響を受けることになる」
在米中国人学者の孫志剛氏は、中国当局がカナダに圧力を強めるが、「カナダの司法当局は独立し、米政府もカナダを支持しているから、孟氏の釈放はないだろう」との見解を示した。
米共和党上院議員のテッド・クルーズ氏とマルコ・ルビオ氏や、民主党上院議員のマーク・ウォーナー氏などが相次いでツイッターで、「ファーウェイは通信会社に扮したスパイ機関だ」と批判し、孟容疑者の逮捕を歓迎するとした。
(翻訳編集・張哲)
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