浸透工作 中国共産党の浸透工作

スポーツ、獅子舞い、オペラコンクール…孔子学院は「地域社会に根を下ろす」

2018/02/22
更新: 2023/07/27

中国共産党中央統一戦線工作部との関連が強い孔子学院

孔子学院は、表向き「非営利の教育機関」としているが、元責任者は、数千万人にも及ぶ在外華人や留学生の思想指導や情報収集にあたる対外宣伝工作組織「中国共産党中央統一戦線工作部(以下、統戦部)」トップでもあった劉延東・現副首相だ。共産党色が強い組織であることは否めない。

カナダ政府の安全保障情報機関に21年以上所属していたミシェル・ジュノ=カツヤ(Michel Juneau-Katsuya)氏は、孔子学院の管理側には統戦部関係者が多いと指摘する。カナダでの講演会で「諜報活動を行う『トロイの木馬』であると結論づける研究が、多くの国で指摘されている」と述べている。

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中国の官製紙チャイナデイリーは2012年12月2日付の記事で、「孔子学院についてしばしば誤解がある」と主張。記事では、孔子学院の総責任者である許琳氏は「トロイの木馬」であるとの批判に対して、「私たちは武器も持っていないのに、どうしてそう表現できるのか」とスパイ疑惑を一蹴した。

2012年、米外務委員会の公聴会に出席した米国のシンクタンク人口研究所の代表スティーブン・W・モッシャー氏は、統戦部の目的について、相手を「堕落させ、譲歩させ、統制する」ことだとし、孔子学院の目的は「これまでの中国に関する西側の主張を覆して中国共産党による論調に塗り替えるため」と主張した。

たとえば同年にインターネットに流出した孔子学院の教材は、朝鮮戦争について、中国共産党の決定を正当化する、修正された歴史を伝えている。

「中国は西側により朝鮮戦争に引き込まれた。国連安全保障理事会が、米国に韓国侵略を拡大させる決議案を可決した。米国が中韓国境の中国の村を空爆したため、中国軍は参戦した」。動画は、抗美援朝(中国共産党が米国と戦い、朝鮮を救う)戦争だと解説する。

書道、スポーツ、獅子舞い…語学だけでない文化浸透工作 日本でも展開

李長春氏の後釜である劉雲山・前政治局常務委員は、2014年ドイツで開かれた孔子学院欧州会議で、孔子学院は「中国の夢」と、世界との友好を結ぶ「心の高速鉄道(心霊高鉄)」と表現している。

その心と共産党とつなぐため、浸透工作は語学だけに限らない。

中国科学院が管理する「中国社会科学ネット」が上海師範大学の国際比較教育の研究員・俞可氏の論文を2月18日に載せている。それによると、孔子学院は海外において「地域社会に急速に根を下ろす」ため、中国茶道、書道、絵画、武術、獅子舞いなど文化面にも力を注いでいる。体育祭やミュージカルの企画も催して、小中高大の学校だけでなく地域社会や企業にも影響を与えるという。

孔子学院の地位活動は、日本でも展開している。中国官製メディア・人民ネット2017年10月11日付けによると、北陸大学にある孔子学院は4回目となる卓球大会を開催、青少年ら数百人が参加した。

会場であいさつした元文部科学省大臣で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の顧問会議・顧問、衆議院議員の馳浩氏は「北陸大学孔子学院は(中略)卓球などのスポーツ競技を通し、両国の青少年たちの間の友好交流に積極的に貢献している」と述べたという。

上記の俞可氏の論文には次のような言葉で締めくくっている。

「中国文化の自信は、伝統的文化に留まらない。『中国の特色ある社会主義』文化の偉大なる実践だった、文化大革命を含んでいる」「長い歴史上の舞台で前進してきた中国は今、『中国の特色ある社会主義』を作り、道理、制度、文化に自信を携えてきた。中国の平和的な発展と民族の前進、各国との利益間関係に基づく交流は、中国の知恵とアイデアで導かれる。この新時代において、孔子学院は有望だ!」

文化大革命を率いた毛沢東は、中国の聖哲・孔子の儒学を破壊した張本人である。古典文学研究家・銭伯城氏の著書『東方文化』(2000年)には、暴政を批判した儒学者を弾圧した始皇帝と比較した毛沢東の発言が記録されている。

「始皇帝は460人の儒学者を殺した。人は我々(共産党)を独裁統治だと、始皇帝のようだと罵るが、認めよう。しかし、それでは言い足りていない。もっと言えば、我々はそれどころではないのである。我々は4万6000人の儒学者を殺した」。

中国共産党は、この血塗られた歴史を孔子の名のもとに覆い隠している。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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