[ソウル 22日 ロイター] – トランプ米大統領は21日、北朝鮮に対する制裁措置の強化を可能にする大統領令に署名し、制裁措置を通じて同国の核・ミサイル開発の資金源を絶つ考えを示した。
トランプ大統領は今週、ニューヨークの国連本部で行った演説で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、「ロケットマンは自爆任務に就いている」と発言。米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると警告した。
一方、北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)によると、金委員長は22日、トランプ氏の警告に対し「史上最高の強硬対抗措置」を検討するとの異例の声明を発表。
金委員長は、トランプ大統領について「精神が錯乱している」と指摘。トランプ氏の演説は「史上最も残忍な宣戦布告」であり、北朝鮮の核開発が「正しい道」だったことが裏付けられたと述べた。
国連のグテレス事務総長が各国首脳に対し、「無意識下での」戦争突入を避けるよう呼び掛けているにもかかわらず、米朝の威嚇の応酬が止まらない。韓国、ロシア、中国は双方に自制を求めている。
トランプ大統領は21日、安倍晋三首相、文在寅韓国大統領との昼食会を前に記者団に対し「新たな大統領令で、北朝鮮が人類が手にした最も殺傷能力の高い兵器を開発する資金を絶つことができる」と述べた。
また、署名した大統領令は北朝鮮のみを対象にしたもので、同国と交易を行う個人のほか企業に制裁を加えることができると説明。財務省に北朝鮮との交易に関係していると疑われる外国銀行に制裁を加える権限を与えることも明らかにした。
制裁の対象となる可能性がある業界には繊維や漁業、情報技術、製造が含まれるとしたが、石油取引には言及しなかった。
大統領はまた、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国について、中国人民銀行(中央銀行)が国内行に対し北朝鮮との取引を停止するよう命じたことを「素晴らしい」と評価し、北朝鮮への圧力をさらに強めるよう求めることはなかった。
北朝鮮問題で「外交はまだ可能か」と記者に問われると、大統領はうなずき、「当然だ」と答えた。
ホワイトハウスはその後発表した声明で、エネルギー、医療、鉱山、繊維、輸送関連業界が制裁の対象になることを明らかにした。大統領令による追加制裁は、国連演説で軍事行動の可能性を示唆したトランプ大統領が北朝鮮を経済的に圧迫することに時間をかけていることを示す。
ムニューシン米財務長官は21日、大統領がこの日署名した対北朝鮮制裁を強化する大統領令の下、北朝鮮と取引のある銀行には米国内での営業を許可しないと表明。記者団に対し「いかなる国のいかなる銀行も、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の破壊的な行為の支援に利用されてはならない」とし、「外国の金融機関には米国と取引するか、北朝鮮と取引するか、今後は選ぶ必要があると通達した」と述べた。
ティラーソン米国務長官は20日、北朝鮮への制裁により、同国で燃料不足が生じ始めていることを示す「複数の兆候」が見られると明らかにした。
北朝鮮の代表は20日遅く、ジュネーブで開かれた国連子どもの権利委員会のパネルで、制裁は北朝鮮の子どもたちを危険にさらすと訴えた。
北朝鮮問題を巡り、安倍首相は、対話を目的とした対話によって結果は生まれないとし、断固として北朝鮮に対する圧力を強めるよう要請している。
文大統領はトランプ大統領との会談前に国連総会で行った演説で、北朝鮮を対話の席につかせるために制裁や圧力が必要としつつも、北朝鮮の崩壊は望んでいないと語った。
そのうえで「戦争の勃発を回避し、平和を維持するため、たゆまぬ努力が必要」と述べ、安定した方法で核問題を解決していく必要性を訴えた。
中国の王毅外相は21日、国連総会で行った演説で北朝鮮に対し、核開発プログラムを巡りこれ以上「危険な方向」に進まないよう呼び掛けるとともに、同国の核・ミサイル開発を巡る問題の解決には協議以外の道はないとの考えを示した。トランプ大統領が北朝鮮制裁強化に向けた大統領令に署名したことには触れなかった。
王外相はその後の安保理会合で「敵対と制裁ばかりでは衝突がエスカレートするだけだ」と述べた。
*内容を追加しました。
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