米国か中国か 貿易戦争で勝つのはどっちだ(2)

2017/03/29
更新: 2017/03/29

米中貿易戦争が始まれば、明らかに中国の方がより多くの損失を被る。米国は、中国の最大の貿易相手で、中国の対米輸出は輸出全体の20%を占める。また、中国の米国からの輸入は輸入全体の10%を占める。中国の対米輸出は中国国内総生産(GDP)の3.8%となっているが、一方で米国の対中輸出が米国GDPに占める割合はわずか0.65%。

2015年~16年において、米国が中国に大規模に輸出したのは飛行機(132億ドル、約1兆4652億円)、大豆(128億ドル、約1兆4208億円)、自動車(96億ドル、約1兆656億円)、電子部品(84億ドル、約9324億円)、原子炉および発電設備(26億ドル、約2886億円)。

トランプ氏が「習近平国家主席の旧友」と呼ばれるアイオワ州知事のテリー・ブランスタッド氏を駐中国大使に指名したのは、中国当局が万が一、米国農産品などの輸入禁止措置に踏み切ることへの備えと推測する。中国人は、友人を家族の一員と見なす民族性から、友人の願いをなかなか拒めないからだ。 

駐中大使に任命された元アイオワ州知事でテリー・ブランスタッド氏。習近平氏の知己とされる。写真は2016年12月、ニューヨークのトランプタワーでの記者会見時(EDUARDO MUNOZ ALVAREZ/AFP/Getty Images)

中国製品の輸入制限で、米雇用拡大の可能性

また、米中両国が直接に競い合っている産業は、金属製品、機械設備、自動車および自動車部品、ゴム、プラスチック、食品が挙げられる。これらの産業で働く人の数は、米国製造業全体の5~15%を占める。同時に、これらの産業の中国企業の対米輸出は、米国市場の約1~7%を占める。つまり、中国当局がこれらの産業の米国企業からの輸入を制限すれば、トランプ氏は米国での雇用拡大目標が実現しやすくなる。

 

もちろん、中国は米国の懲罰的な関税措置に対抗するだろう。例えば、米国からのトウモロコシや大豆の輸入を減少または停止するとか、米国ボーイング社に対して飛行機の注文を減らしまたはキャンセルするとか、保持する米国債を売却する等の措置が予想される。

しかし、中国当局は米国債を売却しないだろう。なぜなら、売却によって債券価格が大幅に下落するため、同様に中国当局にも巨額な損失をもたらすためだ。

一部の専門家は米中貿易戦が勃発すれば、政治制度が異なる両国の中で中国は最も大きな代価を支払うと認識する。中国の現在の政治制度では、経済成長を維持しつづけることが政権の執政「合法性」の基盤となっている。

したがって、米中貿易戦でホワイトハウスから追われることを心配しないトランプ氏に対して、中国共産党政権はこの貿易戦で中南海を失うのではないかと、常に危惧している。

でも、米国にはリスクが全くないわけではない。中国からの輸入を減らせば、国民の日常生活に必要な生活用品や電化製品などの価格が上昇し、これによって米国のインフレ率も約0.5%上がるだろう。このような状況が現れれば、トランプ氏がやならなければならないことは、ウォルマートの前で価格上昇を抗議する国民に対して「価格上昇は一時的な物だ。安価の商品はすぐベトナム、タイ、インド、マレーシアから米国に入ってくる」と言い聞かせ、納得させることだ。

中国には「目には目を歯には歯を」戦略

ブルームバーグ駐北京記者のマイケル・シューマン氏は、米中貿易戦において、米国が必ず勝つだろうとの認識を示している。中国はアップル社のiPhoneを中国で組み立てることは大したことではない。米国にとって脅威なのは、中国がiPhoneのようなスマートフォン技術の研究開発に成功し、その技術を掌握することだとシューマン氏が考える。

シューマン氏は、中国に対して「目には目を、歯には歯を」という戦略を採った方がいいと提案している。例えば、中国当局が米国製品の輸入、米国企業の投資を禁止すれば、米国も同様な政策を採った方がよい。米国も同様に中国製品の輸入と中国企業の投資を禁止すべきだという。

この戦略を採れば、米国製造業の先端技術と機密技術が中国当局に流れることがなくなるという最大なメリットがあるとシューマン氏が言う。実に、米国連邦議会はすでに、中国企業による米国企業への買収について審議している。現在、米国の工業から農業、しかもハリウッド映画産業まであらゆる産業で中国企業を見かけることができる。米中経済・安全保障検討委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)がその役割を担っている。

トランプ氏も中国企業による買収案に否定的な姿勢を示している。したがって、米中貿易戦が勃発すれば、負けるのは中国共産党政権だ。

(おわり)

(文・米国サウスカロライナ大学 謝田教授、翻訳編集・張哲)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。