中国と米国の間で、まだ真の貿易戦争は勃発していない。だが、双方の政府高層は貿易をめぐって相次ぎ発言し、互いの力量を探っているように見える。
米国政府は中国から輸入された化学製品に対して反ダンピング関税を課するなどの制裁を実施した。トランプ大統領が中国製品に対して本格的に懲罰的な関税をかける前に、中国当局は万が一中米貿易戦が起きても、当局が被る損失を最低限にするために、外交ルートを通じて米側の攻勢を弱めようとしている。
今までの各国間で起きた貿易戦争をみると、まさしく戦争であり、勝つ側も負ける側もそれぞれある程度の損失を被った。中国人は、「敵を1000人殲滅するのに、自ら800人の兵士を失う」(殲敵一千、自損八百)という言葉があるように、両方が大きな損失を被るだろう。
米中貿易戦争なら、損失が大きいのはどっち?
しかし、米中貿易戦がいったん勃発すれば、中国と米国はどちらが最も大きな損失を受けるだろうか?
中国当局は3月、米国が世界貿易機関(WTO)の規則に順守しなければ、米中貿易戦勃発の可能性があると警告した。これは、トランプ政権はこのほど、WTOの判断は米国に不利であれば、それに縛られないと発言したことにある。また、1月に米国は正式に環太平洋経済連協協定(TPP)から離脱すると発表した。
独ドイチェベレは、「米国がWTOの決定に従わないと決めたことに対して、なぜ中国が激高したのか」と報じた。これには、「ドイチェベレ、いいぞ」と相づちを打った。
いっぽうの中国はWTO加盟国中、規則に順守している国だろうか? 答えはもちろんノーだ。中国はWTOに加盟して15年間に、米国と欧州連合(EU)は絶えず、中国の「ルール違反」を非難してきた。WTOの紛争処理案件の半分以上は、中国がらみだ。ほとんどの紛争は中国当局によるダンピング、補助金、不公平な待遇などに関連する内容だ。
最近のケースをみてみよう。韓国が高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)を配備すると決めた後、中国当局は事実を知らない国民を煽動して、中国でスーパーなどを展開する韓国ロッテグループに対して不買運動などを起こした。
ロッテは韓国の企業であるが、近年中国には多額の投資を行い、中国国民の生活を潤すのに貢献してきた。このような企業に不合理な非難や打撃を与えたことは、中国共産党政権がごろつきである本性が再び表された。
中国当局が、米国の実質「ルール無視」を表明したことに怒りを示したのは、中国当局がWTOに強く依存し、欧米市場に強く頼っていることを意味する。
しかしながら、ルールを順守しない中国と、その影響を受ける一部の発展途上国は、WTOの規則を改変させてきた。WTOは不公正な貿易を行う国が多数であれば、押し黙ることを余儀なくされる。
中国当局は、米国がWTOの決定を無視することによって、WTOが解体される可能性に危機感を持っている。なぜなら、そうなれば、はじめてトランプ氏が中国製品に対して懲罰的な関税をかけ、自らの公約を実現することができるからだ。トランプ氏が米中貿易に関する公約をまだ実現できていないのは、WTOが邪魔しているからだと推測する。
(文・米国サウスカロライナ大学 謝田教授、翻訳編集・張哲)
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