中国最高裁と最高検 「不法な立法」新解釈を発表

2017/01/29
更新: 2017/01/29
2017年1月29日12時ごろ、後半の分析を加筆しました。

中国最高人民法院(最高裁)と最高人民検察院(最高検)は25日、共同で「邪教(カルト)組織」に係る刑法の新解釈を公布した。専門家は、立法権のない両機関が新解釈を交付するのは「不法な立法」と非難した。また、同解釈には元国家主席・江沢民による法輪功迫害政策を強化する狙いがあり、党内権力闘争の激しさも反映していると分析する。

このたび公布されたのは『邪教組織を利用して法律実施を妨害する等刑事案件適用法律の若干問題に関する解釈』(以下、『解釈』)。2001年にも同様の解釈が発表されており、中国の最高裁と最高検が16年ぶり、2度目の『刑法』第300条に対する司法解釈となる。

前回との変更点は、懲役の収監期間を明確にしたこと。2月1日から実行するという。

『解釈』は16項目ある。各項目にはさらに細かい規定や具体的な刑罰などが書かれている。例えば、関連チラシや絵図や新聞を1000枚以上、横断幕などの50枚以上を製作や配布した場合、3年以上から7年以下の懲役と罰金を科するという。

名指ししないものの 法輪功がターゲットか=専門家

時事評論員の石実氏は、今回の『解釈』には「邪教組織」について、どの組織かは具体的にしなかったものの、多くの内容は法輪功に対するものだと指摘する。

国内の学習者は、これまでチラシや横断幕、手作りの新聞などで迫害の実態などを伝えてきた。

法輪功迫害情報を伝える明慧ネットによると、90年代末には約1億人を記録した法輪功学習者は、江沢民による迫害政策で不法拘束、拷問などの被害を受けている。さらに生きたまま臓器が強制摘出されているとの国際機関からの報告がある。

立法権のない最高裁と最高検が「不法な立法」

最高裁判所にあたる最高人民法院の正面(Rneches/wikimedia.commons)
 

中国共産党政権の司法機関である最高裁と最高検には、法の執行権があるが、立法権はない。石実氏は、2回の『解釈』は実に「不法な立法」であり、各レベルの裁判所や裁判官に対して、法輪功迫害の根拠を与えていると指摘した。

最高裁の周強院長(首席大法官)は14日に開催された全国高級法院(高裁)院長会議において、「憲政民主」と「司法の独立」は西側諸国の「誤った思想」だとして、政府は徹底的に排除すべきだと発言した。

この発言には国内世論も大きく反応。一部の法学者は周氏の辞職を求める署名活動を起こした。首席大法官が「司法の独立」を完全に否定する発言をしたことで、中国の司法機関は「共産党政権のために動いている」と読み取れるからだ。

周強氏は最高裁院長の前に、07年~12年まで湖南省の省長と省党委員会書記を務めた。同省では法輪功迫害を推し進めた。2013年に「明慧ネット」が伝えたところによると、1999年以降迫害で死亡した湖南省の学習者の人数は省別ランキングの10位内に入る。

最高検院長は失脚した周永康の側近

一方、最高裁の曹建明院長(首席大検察官)も14年に失脚した前中央政治局常務委員の周永康の側近だ。周永康が2007年に中央政治局常務委員と中国政法委員会書記に昇進した後、曹氏は08年3月に、最高裁の副院長の職から最高検院長に昇進。

これまでロイター通信など一部のメディアは、周永康が失脚後、習近平当局は曹氏を取り調べたと報道した。

中国問題専門家の辛子陵氏は大紀元の取材に対して「曹建明は明らかに江沢民派閥の人物だ。でなければ昇進はなかった」と分析した。

分析『解釈』の公布は党内権力闘争の熾烈さを反映

江沢民の腹心である羅幹と周永康は長い間、中国の司法機関を掌握してきた。江が法輪功学習者を迫害するために、党内で不法機関「中共中央法輪功問題を処理する領導小組」を設立した。羅幹と周永康は同小組の組長を相次いで務めた。

時事評論員の龔(上が龍で、下は共)平氏は、『解釈』の公布は党内権力の熾烈さが反映したとした。「共産党内で習近平陣営が全面的に政治と軍事の権力を掌握し、江沢民勢力が衰弱となった今、江派閥が共産党の体制を利用し、法輪功への迫害をエスカレートすることで、江派閥を主要対象とした習陣営の反腐敗キャンペーンをそらそうとしている」と分析。

「なぜなら、周永康が失脚したが、いまだに江派閥が全国の司法や検察や公安などの部門を管轄する政法システムの実質権力を握っているからだ。政法システムの幹部は反腐敗キャンペーンの実施にも参与し、法輪功学習者への迫害も参与している。法輪功への迫害によって、習当局が江派閥高官への腐敗追及を阻止でき、江派閥の勢力回復と拡大を狙う目的がある」との見解を示した。

龏氏は、中国当局が法輪功学習者への迫害が拡大すれば、国民の信条・思想の自由が完全に否定されるだけではなく、法治社会の実現も望めなくなるとの懸念を示した。

(翻訳編集・張哲)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。