米中も注視するブラジル大統領選 南米の地域大国の経済・外交路線を左右

2026/10/05
更新: 2026/10/05

ブラジルで4日、4年に1度の大統領選が行われた。現職のルラ大統領と、ボルソナロ前大統領の長男フラビオ・ボルソナロ上院議員が、南米最大の経済大国のかじ取りをめぐって争った。両氏は政治的立場が大きく異なり、選挙戦は事実上、両氏を軸に展開した。

今回の選挙では約1億5900万人が有権者となり、今後のブラジルの政治路線を左右する選挙となった。1回目の投票で両氏とも当選に必要な過半数の得票には届かず、25日の決選投票に進むことが決まった。

大統領選と同時に、27州の知事、州議会議員、下院全513議席、上院81議席のうち54議席も改選された。

経済政策、国家主導か市場重視か

ルラ氏は、格差や失業率が改善傾向にある一方、高い生活費や膨らむ家計債務、街頭犯罪、ギャングによる犯罪の増加に不満を抱く有権者から支持を得ることが課題となっている。

ボルソナロ氏は、生活費の高騰に対する有権者の不満を取り込み、支持拡大を図っている。これに対しルラ氏は、オンライン賭博への規制を強化したほか、選挙戦が接戦となる中、社会保障給付を拡充。家計の債務負担を軽減する新たな支援策も提案している。

ロイター通信によると、米ゴールドマン・サックスの中南米担当チーフエコノミストは、ルラ氏が国家主導型の経済運営を維持し、歳出抑制については比較的緩やかな措置を取るとの見方を示している。

一方、ボルソナロ氏については、歳出削減や民営化、財政規律の強化など、市場重視の政策を進める可能性があると分析している。

米中との関係も焦点

今回の大統領選は、米中両国からも注目されている。ブラジルにとって両国は重要な貿易・外交相手であり、選挙結果は今後の対米、対中政策にも影響を及ぼすとみられる。

80歳の左派政治家であるルラ氏は、4期目の大統領職を目指している。政権下では中国との関係強化を進め、貿易、技術、環境保護など幅広い分野で協力を拡大してきた。2024年11月には、中国とブラジル両国は2国間関係を「グローバル戦略パートナーシップ」から「運命共同体」に格上げしたと発表した。

一方、ルラ政権と米国との関係には緊張もみられる。

これに対し、45歳のフラビオ・ボルソナロ氏は、ジャイル・ボルソナロ前大統領の長男で、米国との関係強化を掲げる。父親の政権時代に進められた対米重視路線を引き継ぐ姿勢を示している。

ボルソナロ氏が勝利すれば、米国が主導する地域安全保障構想「米州の盾(アメリカ大陸の盾)」への参加に動く可能性がある。ルラ氏は同構想への参加に反対している。

トランプ氏はホワイトハウスでボルソナロ氏と会談し、同氏を公に評価したものの、今回の大統領選で特定の候補への支持を正式には表明していない。

ボルソナロ氏は、当選すれば米国やイスラエルとの関係を強化すると表明。また、トランプ政権がブラジルの主要犯罪組織をテロ組織に指定したことを歓迎している。これに対し、ルラ氏は指定に反対している。

レアアースも焦点 対中依存低減へ米国が関心

ブラジルの豊富な重要鉱物資源をめぐる動向も、今回の選挙の焦点の一つとなっている。これらの資源は、米国が重要鉱物の対中依存を減らす上で重要とされる。

ボルソナロ氏は、ブラジルがトランプ政権との間で、より有利な条件の協定を結ぶ必要があると主張しており、特にレアアース(希土類)分野を重視している。ブラジルのレアアース埋蔵量は最大2100万トンと推定され、中国に次ぐ規模とされる。

米シンクタンク「ブルッキングス研究所」の非常勤シニアフェロー、オタヴィアーノ・カヌート氏はCNBCに対し、今回の選挙は中南米全体にとって重要な意味を持つとの見方を示した。

カヌート氏によると、ボルソナロ氏が勝利すれば、ブラジルとトランプ大統領の米州政策との戦略的な連携が強まる可能性がある。一方、ルラ氏が4期目の政権を担えば、米国が地域で主導権を確立し、北京の影響力を抑えようとする取り組みに影響を与える可能性があるという。

新唐人