【軍事】ウクライナ軍 ロシア奥地3000キロを攻撃 長距離ドローンで「安全な後方」揺らぐ

2026/09/17
更新: 2026/09/17

ウクライナ軍がロシア奥地への長距離ドローン攻撃を拡大している。9月には、ウクライナ国境から約3000キロ離れたヤマロ・ネネツ自治管区のガス関連施設を攻撃し、リャザン製油所も操業停止に追い込まれたとされる。エネルギー、物流、防空網を標的に、ロシアが安全な後方とみてきた地域への圧力を強めている。

ウクライナ軍   3000キロ先のロシア奥地を攻撃

ウクライナ特殊作戦軍(SSO)は9月9日、「ディープ・ストライク(縦深打撃)」部隊が、ロシアのヤマロ・ネネツ自治管区にあるノヴィ・ウレンゴイとプーロフスキーのガス処理施設を含む重要インフラ8か所を攻撃したと発表した。使用されたドローンは3,000キロ以上を飛行し、全面侵攻開始以降、ウクライナ軍がロシア領内を攻撃した距離としては最も長いとみられる。両施設はウクライナ国境からそれぞれ約2,840キロ、約2,780キロ離れているとされる。

翌10日、ゼレンスキー大統領は、過去24時間にロシアの戦争遂行を支えるインフラ8か所を攻撃したと明らかにした。標的には、北極圏に近い石油・ガス関連施設のほか、ダゲスタン共和国の港、モスクワ、ボロネジ、アストラハン、ブリャンスクなどの施設が含まれていたとされる。

また、9月6日にはモスクワの南東約193キロにあるリャザン製油所がドローン攻撃を受け、主要な原油蒸留装置が損傷したとされる。ロスネフチが運営する同製油所はロシア有数の石油精製施設で、モスクワ地域への燃料供給も担う。ロイター通信は業界筋の話として、攻撃後に主要装置が停止し、製油所全体が操業を停止したと報じた。

ウクライナ軍参謀本部はこの攻撃を認め、標的にはロストフ・ナ・ドヌの軍用飛行場、ロストフ州の「ポドリョート」レーダー基地、「パンツィリS1」防空システム2基も含まれていたとしている。長距離攻撃の対象は、エネルギー施設だけでなく軍事基地やレーダー、防空システムにも広がっている。

北極圏近くのガス施設が標的に

今回の攻撃は広い地域で同時に行われ、ウクライナ軍のドローン攻撃の範囲が広がっていることを示している。9月9日夜にはモスクワを含む6つの行政区域にまたがり、重要インフラ8か所を同時に狙った。ロシア国防省は同日、国内13地域に加えクリミア、黒海、カスピ海の上空で計448機のウクライナ製ドローンを撃墜したと発表しており、ロシア側の発表からも攻撃が広範に及んだことがうかがえる。

最も遠い標的は北極圏に近いヤマロ・ネネツ自治管区にあり、前線からの距離は3,200キロを超えるとされる。ロシア側も、ノヴィ・ウレンゴイの工業施設がドローン攻撃を受け、残骸の落下で火災が起きたと認めた。ただし、施設の被害の程度や生産への長期的な影響について、独立した確認は限られている。

カスピ海沿岸のマハチカラ商業港も標的となった。石油などの貨物を扱う港で、ロシアにとってカスピ海方面の物流拠点でもある。こうした攻撃は、ウクライナの長距離攻撃が、ロシア軍の活動を支えるエネルギー、物流、軍事関連の施設に広がっていることを示している。

広大な国土でロシア防空網に重い負担

攻撃範囲が広がれば、ロシアは国内各地の防空態勢の見直しを迫られる可能性がある。国土が広いため、限られた防空システムを全国に配置するのは容易ではなく、全面侵攻の初期には前線、首都モスクワ、国境に近い主要都市に戦力を集中できた。しかし長距離攻撃が北極圏付近にまで及べば、遠隔地のエネルギー施設、港湾、軍需工場も防衛する必要が出てくる。

ロシアは、後方インフラへの攻撃を受け入れるか、前線や首都圏に配備するS300、S400、パンツィリS1などを遠隔地の防衛に回すか、難しい判断を迫られる。防空戦力が分散すれば、前線や首都圏の防空態勢が手薄になる可能性がある。

安価なドローンで戦争経済を圧迫する戦術

今回の長距離攻撃は、ウクライナがドローンでロシアに負担をかける戦術を強めていることを示している。ドローン開発企業ファイア・ポイントは、カスピ海方面の港湾攻撃などに自社の長距離ドローン「FP1」が使われたと説明している。

こうした攻撃型ドローンは1機当たり数万ドル程度(数百万円程度)とされる一方、標的となる製油所や港湾、軍事物流拠点は数億~数十億ドル規模(数百億~数千億円規模)の価値を持つ可能性がある。ロシア側は安価なドローンの迎撃に、数百万ドル規模(数億円規模)の防空ミサイルを使ったり、戦闘機を緊急発進させたりする場合がある。

攻撃が成功すれば、石油施設の操業停止に加え、燃料供給や輸送、軍事物流にも影響が及ぶ可能性がある。安価な手段で高額な防空システムや重要インフラに負担をかけるこの戦術は、ウクライナにとって費用対効果が高く、弾薬や装備の消耗をロシアに強いることで、前線の戦闘力だけでなく戦争を支える経済的基盤にも圧力をかけている。

相互のドローン攻撃激化、停戦交渉は遠のく

もっとも、ロシア軍も報復的な攻撃を強めている。ウクライナが記録的な長距離攻撃を行った同時期、ウクライナ空軍は、ロシア軍が夜間に149機の攻撃用ドローンを発射し、うち128機を撃墜・無力化したが、一部が防空網を突破し少なくとも13地点に着弾したと発表した。モルドバ国境に近い南西部のスタロコザチェ―トゥドーラ国境検問所も攻撃を受け、死傷者が出たとされる。

双方が大規模にドローンを使うなか、戦術には違いがある。ロシアは大量のドローンやミサイルでウクライナの都市やエネルギーインフラを継続的に攻撃し、前線の地上攻勢と連動させている。イランや北朝鮮の軍事支援を受けながら攻勢を維持する。一方ウクライナは国産の長距離兵器への依存を強め、攻撃対象をロシアのエネルギー、軍事、物流の施設へ広げ、ロシアが戦争を続けるための負担を増やそうとしている。

こうした攻撃は、外交交渉が不透明ななかで起きた。9月第1週には、米特使ウィトコフ氏とクシュナー氏がモスクワとキーウを相次いで訪れ、和平交渉再開の糸口を探ったとされるが、領土問題や安全保障をめぐる隔たりは大きく、目立った進展は確認されていない。トランプ米大統領とプーチン大統領も電話会談を行い、トランプ氏は早期終結に強い意欲を示したとされるが、双方が受け入れられる解決案には、なお大きな隔たりがある。

9月12日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、12月にマイアミで開かれるG20首脳会議でのプーチン・ゼレンスキー会談は「不可能だ」と述べ、ゼレンスキー氏が会談を望むならモスクワを訪れるべきだとの立場を改めて示した。ロシアが首脳会談に応じる姿勢を見せないことは、早期実現の見通しの乏しさを示す。

外交交渉だけで隔たりを埋めるのは難しく、戦場の状況が交渉の行方を左右する状況が続く。ゼレンスキー氏は数日前、侵攻が冬まで続く可能性を公に認めた。キーウは交渉の窓口を維持しつつも短期的な終戦に過度な期待は寄せず、防空、エネルギー、軍事面で再び厳しくなる冬に備え、最悪の事態を想定した準備を進めている。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
夏洛山
大紀元時報(中国語)記者。長い従軍経験があり、軍事番組「Military Focus」を主宰する。