東アジアの核戦略バランスは、かつてない課題に直面している。中国共産党(中共)と北朝鮮が核兵器を急速に増強し、核攻撃能力を高め続ける中、米国の「核の傘」にかかる圧力は強まっている。日本や韓国などの同盟国は独自の核抑止という選択肢を再評価し始めており、西太平洋で核拡散のリスクが急速に高まっている。
韓国では独自の核保有への支持が高水準
2026年4月の峨山政策研究院の年次世論調査では、韓国の回答者の80%が独自の核兵器能力の保有を支持した。同研究院の調査として過去最高である。7月27日には、韓国軍の退役中将、全仁範氏が、韓国は独自の核兵器を保有し、それを米国の地域同盟による抑止網に組み込むべきだとする記事を発表した。
8月28日に韓国ギャラップが発表した世論調査でも、高まる戦争の脅威に対処するため、国が独自の核兵器を開発することを支持する韓国の成人は65%と、高い水準を維持した。実際、北朝鮮が2013年に3回目の核実験を行って以降、この調査で韓国の核保有を支持する割合が60%を下回ったことはなく、最高で74.9%に達した。
この結果は峨山政策研究院の調査と矛盾しない。数値は異なる調査によるものだが、傾向は一致しており、韓国では核保有を支持する人が一貫して過半数を占め、その支持が衰えていないことを示している。
韓国は北朝鮮による恒常的な核ミサイルの脅威に直面しており、既存の通常兵器による防衛体制は、非対称な核抑止力を前に十分な説得力を持たないように見える。このため、韓国の世論や軍高官の間では、北大西洋条約機構(NATO)型の「核共有」、さらには独自の核抑止力の構築を、より積極的に議論するようになっている。
日本政界でも核を巡るタブーに揺らぎ
一方、日本政界でも核を巡るタブーが揺らぎ始めている。7月17日、小泉進次郎防衛相は、核兵器は日本にとって「避けて通れない」議題であり、関連する安全保障政策をタブーなく議論すべきだと述べた。
小泉氏は7月23日にもブリュッセルで、日本は核抑止を含む将来の国家安全保障政策を議論すべきだと述べた。こうした政策論争は、米国の東アジアにおける「拡大抑止」戦略について、地域の同盟国の国民や政治指導者が再検討し始めていることを反映している。
日本の防衛相の発言は、地域の安全保障情勢に対する不安を表している。この不安は、日本の戦後の平和憲法と「非核三原則」をすでに揺るがし始め、核兵器の問題を絶対的な政治上の禁忌ではなくしている可能性がある。この変化は、中共と北朝鮮の核戦力拡大や、米国の拡大抑止への疑問を前に、日本が既存の安全保障体制を再評価していることを示す。
東アジアの核を巡る不安、背景に中共の核戦力拡大
東アジアで核の脅威に対する不安が高まる主な原因は、中共と北朝鮮による核戦力の拡大である。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が6月8日に公表した年次報告書によると、中共の核兵器保有数の増加速度は世界で最も速く、現在約620発の核弾頭を保有している。2026年1月時点で、中共は北西部にある3か所の大規模なミサイル発射施設に数百発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を配備しており、東部の山岳地帯でも新たな弾道ミサイル発射用の地下施設を建設している。
中共軍は、地上配備型ICBM、原子力潜水艦、爆撃機から成る「核の三本柱」の構築を進めている。米シンクタンクのハドソン研究所による関連研究もこの傾向を裏付け、中共の核戦力が世界の政治構造を変えつつあると指摘した。
中共は2026年、潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験を再び行い、海洋を基盤とする核戦力の発展を示した。同時に、航空戦力による核攻撃能力の不足を補うため、核攻撃能力を持つ「轟6N」爆撃機の開発も進めている。この二つの分野での進展と地上配備型ICBMを合わせ、中共は完全な核の三本柱を徐々に形成しつつある。
これは、数が限られたICBMを主に頼り、最低限の核抑止力を維持していた過去とは異なる。中共の核戦力は、核による第二撃能力を重視し始めている。ただし、海上・航空の運搬手段の性能には限界があり、これらの能力はなお初期段階にある。
中共の戦略核戦力は、米国との差を縮め、さらには米本土を脅かすことで、西太平洋における米国の拡大抑止の効力を弱めようとしている。日本と韓国が懸念しているのは、まさに東アジアの核秩序を支える政治的基盤の安定が損なわれることである。
北朝鮮はすでに実質的な核の脅威に
北朝鮮の核戦略の転換も、地政学的な不安を強めている。2026年上半期、金正恩氏は北朝鮮の核保有国としての地位をさらに固めた。3月23日の施政演説では、北朝鮮の核保有国としての地位は「不可逆的」だと宣言し、核戦力を恒久的に強化すると表明した。
SIPRIは6月、北朝鮮が約60発の核弾頭をすでに組み立て、さらに少なくとも30発を製造できるだけの核分裂性物質を保有している可能性があると推計した。米科学者連盟(FAS)も北朝鮮の核弾頭を約60発と推計する一方、蓄積された核物質はさらに少なくとも90発を製造できる量に達する可能性があるとみている。
北朝鮮が核物質の生産能力を拡大し続けている点も注目される。国際原子力機関(IAEA)が9月9日に公表した最新の評価によると、北朝鮮は寧辺の核施設に新たなウラン濃縮施設を建設した。現地の設備と衛星画像から判断すると、この施設には最大28組のガス遠心分離機システムを収容できる。また、平壌近郊にある江西のウラン濃縮施設では、付属建屋の一つが稼働を始めた。
より大きな戦略的意味を持つ変化は、核兵器の配備方法である。北朝鮮は核兵器の配備先を、地上配備型弾道ミサイルから海上のプラットフォームへ広げようとしている。
6月23日には北朝鮮初の5千トン級ミサイル駆逐艦「崔賢」が就役し、9月6日には同級2隻目の「姜健」が就役した。北朝鮮は、これらの軍艦に核兵器を搭載できると主張している。金正恩氏は「姜健」を、北朝鮮の「核反撃体系」の重要な構成要素と明言した。
米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、北朝鮮が核兵器を異なるプラットフォームと作戦領域に分散させることで、核戦力の残存性を高めているとみている。
9月3日に公表された朝鮮労働党の改正党規約は、戦時の党内運営を初めて制度化した。第27条は、戦時には政治局が中央委員会総会の委任に基づき、党内の「重大問題」を討議し、決定できると定めている。関連する規定は、戦時に一部指導機関の選挙を停止し、意思決定の仕組みを継続して機能させることも認めている。
韓国の国家戦略研究院は、これにより北朝鮮は緊急時に、中央委員会総会に代わる、政治局を中心とした国防・軍事上の意思決定体制を形成するとみている。ISWは、北朝鮮がより「柔軟」で「制度化された」核指揮体系を強化している可能性があるとみている。その狙いは、金正恩氏に対する「斬首作戦」を実施しても、北朝鮮の核戦力が制御を失うとは限らないと、米韓に認識させることにある。
2026年の北朝鮮について最も注目すべきなのは、もはや「核弾頭を何発持っているか」ではない。形成が進み、完成度を高め、実戦能力を備えつつある核攻撃システムである。この現実の脅威により、日本と韓国は、自国の主権に基づく核抑止力を開発する必要性と緊急性を改めて認識せざるを得なくなっている。
インド太平洋の核抑止バランス崩壊、日韓に核の選択肢を検討させる
1960年代半ば、中共が原爆実験を行ったことを受け、蒋介石は中山科学研究院に核兵器の秘密開発を指示した。台湾の秘密核兵器計画は、米国の監視下で長年続いた。1988年、中山科学研究院核エネルギー研究所の副所長だった張憲義氏が重要資料を携えて渡米すると、米政府は台湾政府に圧力をかけ、関連施設を閉鎖させた。20年余り続いた核兵器計画は、最終的に終結した。
この歴史が示すのは、地域紛争で対立する一方が核兵器を保有すれば、核兵器を持たない側は安全保障の脆弱さから、独自の核兵器開発を求めるようになるということである。現在、日本と韓国が直面する苦境は、台湾の状況と非常によく似ている。
米国の「拡大抑止」は、太平洋、とりわけ朝鮮半島の安定を維持するため、地域の同盟国に与える安全保障上の約束である。1995~1996年の第3次台湾海峡危機の際、中共軍の熊光楷副総参謀長は、米国の外交官チャス・フリーマン氏との会談で、米国は台北のためにロサンゼルスを失う危険を冒さないだろうと述べた。こうした露骨な核の脅しは、拡大抑止を含め、米国が西太平洋地域に示すあらゆる安全保障上の約束に向けられたものだ。
中共と北朝鮮による核戦力の拡大は、西太平洋の核抑止バランスを深刻に損なっている。米国の拡大抑止を弱めると同時に、日本と韓国に、外交上・憲法上の制約から抜け出し、核という選択肢を検討しようとする動きを促している。
日韓が最終的に核保有に踏み切るかどうかは、それぞれの政府の政治判断、国内世論、米国との同盟関係、核不拡散条約、そして中共と北朝鮮による今後の核の脅威の動向に左右される。ただ、この事態が核不拡散を巡る情勢を一層複雑にし、その影響がインド太平洋にとどまらず、世界のより広い地域に及ぶ可能性があることは確かである。
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