中国人権派弁護士 台湾で庇護申請 シオン教会弁護で圧力

2026/09/04
更新: 2026/09/04

中国の人権派弁護士、王夏紅氏が9月3日未明、家族とともに台湾で庇護を求めた。王氏は中国のキリスト教会「シオン教会」の弁護を担当したことで、中国共産党(中共)当局から圧力を受けていた。台湾当局は一家4人の「人道的滞在」を認めた。王氏は現在、人権団体「対華援助協会」を通じ、アメリカやカナダなど第三国での受け入れを求めている。

王氏は北京凱門法律事務所のパートナー弁護士を務めていた。同事務所は2025年10月から、シオン教会のメンバーや創設者の金明日牧師の弁護を担当していた。

2025年10月には、金氏を含むシオン教会のメンバー18人が拘束された。中共が単一の教会を対象に行った取り締まりとしては、ここ数十年で最大規模の一つである。

北京凱門法律事務所の創設者で、王氏の恩師でもある張凱氏は弁護士資格を取り消され、出国も制限された。ほかの弁護士も半年間の業務停止処分を受けた。当局は弁護士らに対し、シオン教会に関する事件の代理をやめ、事務所を解散するよう求めていた。応じなければ当局が強制的に閉鎖するという。

台湾の中央広播電台によると、王氏は家族と日本で休暇を過ごした後、東京からシンガポールへ向かう途中、台湾で乗り継ぐ予定だった。しかし台湾到着後、予定していた便への搭乗を取りやめ、台湾にとどまって庇護を求めることを決めた。到着後、複数の機関に支援を求めた。

台湾大陸委員会は今回、人道上の配慮に加え、中国で新たな出入境管理規定が施行されることも考慮し、王氏一家が帰国した場合に危害を受ける恐れがあるとして、一家4人の「人道的滞在」を認めた。

王氏は現在、アメリカを拠点とする人権団体「対華援助協会」を通じ、アメリカやカナダなど第三国での庇護・受け入れを求めている。

報道によると、第三国での受け入れをめぐる調整には通常、長い時間がかかる。過去には1~2年を要した例もあり、王氏一家の台湾滞在が長期化する可能性もある。

華人民主書院協会の常務理事、曽建元氏は、台湾では現在も難民法が成立しておらず、法律に基づく庇護手続きが整備されていないと指摘した。実務上は行政機関の内部規定などに基づいて対応しているため、案件ごとに処理方法が異なることがある。

曽氏によると、台湾で乗り継ぎ中に庇護を求めた人を中国へ戻さない場合、直前の出発地に戻すか、当初の目的地へ向かう形を取ることが多い。一方、王氏一家については、アメリカやカナダなど第三国で受け入れる形が最も望ましいとの見方を示した。

ただ、台湾とアメリカ、カナダとの間には正式な外交関係がなく、両国に王氏一家を受け入れる法的義務があるわけではない。このため、第三国での受け入れが実現するかどうかは、関係国との政治的な調整や外交上の信頼関係に左右される。

曽氏は、受け入れ先が決まらない場合、王氏一家が台湾で長期間、安定した在留資格を得られず、生活上の困難に直面する恐れがあると指摘した。

また、台湾の国安当局や関係機関に対し、王氏一家の経歴や台湾で庇護を求めた経緯を詳しく調査するよう求めた。シオン教会事件のその後や、中共による宗教活動への規制、人権派弁護士への取り締まりの実態についても事情を聴く必要があるとしている。

曽氏は、王氏がシオン教会事件の弁護に直接関わった弁護士であることから、中共による取り締まりの内部事情を詳しく知る立場にあると指摘した。王氏から詳しく事情を聴き、関連情報を整理・分析することは、台湾の安全保障や中国情勢の把握にも役立つとの考えを示した。

対華援助協会の創設者、傅希秋氏はAP通信に対し、王氏のケースは、迫害を受けるキリスト教徒や「良心の囚人」を弁護する中国の弁護士が強い圧力にさらされている実態を示していると述べた。

傅氏は台湾当局に対し、王氏一家を保護し、中国へ強制送還しないよう求めた。また、アメリカをはじめとする民主主義国にも、第三国での受け入れ先を確保するため台湾に協力するよう呼びかけた。

台湾の大陸委員会はAP通信へのメールで、台湾には政治亡命に関する法律はないものの、こうした案件に対応する仕組みはあり、関連制度に基づいて対処すると説明した。