日本で転倒した高齢者を「助けるな」と叫ぶ中国人観光客 背景にある中国の「悪法とトラウマ」

2026/08/26
更新: 2026/08/26

日本の路上で高齢男性が転倒し、通行人が助けようとする姿を見た中国人観光客が、バスの車内から「助けちゃだめ」と繰り返す動画が、ネット上で再び拡散している。子供まで「言いがかりをつけられるよ。助けちゃだめ」と叫ぶ様子に、「あまりにも悲しい」と嘆く声が上がった。

動画は2023年4月ごろにもネット上で広く拡散していた。中国人観光客を乗せたバスが日本の交差点を通りかかった際、道路を渡っていた高齢男性が突然よろめき、路上に倒れた。すると、自転車に乗っていた通行人がすぐに降りて駆け寄り、近くのコンビニ店員も店から出て男性を助けた。

男性が倒れた瞬間、車内からは驚きの声が上がった。しかし、通行人が助けに向かうと、複数の乗客が中国語で「助けちゃだめ」と口にした。

なかでも子供は切迫した様子で「助けちゃだめ!」と繰り返した。そばにいた大人が「ここは私たちのところとは違うんだよ」と説明すると、子供は「言いがかりをつけられるよ。助けちゃだめ」と訴えた。

動画のコメント欄には、「この『助けちゃだめ』という一言が悲しすぎる」「子供がここまで影響を受けているとは嘆かわしい」といった反応が寄せられた。

「この動画は、中国共産党(中共)統治下の中国と日本では社会のルールや人と人との信頼関係が違うことを映し出している」などの書き込みも見られた。

「中国本土の悪法が悪人を守るものであり、最後には誰も悪人になってしまう」「中国本土と日本が違うのではなく、中国本土がほかの国々と違うのだ」など、中国の法制度に原因があると指摘する声もある。

背景には、中国で長年議論してきた「倒れた高齢者を助けるべきか」という社会問題がある。善意で助けた人が逆に責任を問われたり、金銭を要求されたりした事例が繰り返し報じられて、人助けをためらう風潮につながったとの指摘がある。

社会に大きな波紋を広げた「南京彭宇事件」

その象徴として知られるのが「南京彭宇事件」だ。

2006年11月、南京市のバス停で徐寿蘭という高齢女性が転倒し、左大腿骨頸部を骨折した。徐は、バスを降りてきた彭宇と衝突して倒れたと主張した。一方、彭宇は自分は女性を倒しておらず、転倒した女性を善意で助けただけだと主張した。

南京市鼓楼区法院は2007年の一審判決で、彭宇と徐が衝突したと認定した。その判断では、彭宇が「善意で助けただけ」と主張したことに対し、「本当に人助けだったのなら女性を倒した人物を捕まえる方が自然であり、家族が到着した後に事情を説明して立ち去ることもできたのに、そうしなかった」と指摘した。

さらに、彭宇が徐に200元余りを渡していたことなども判断材料となった。裁判所は双方に過失はなかったとしながらも、「公平責任」の考え方に基づき、彭宇に損失の40%にあたる約4万5千元の支払いを命じた。

こうした「常識」や「情理」に基づく推論は大きな論争を呼んだ。

さらに、主審裁判官が審理中に「あなたがぶつけたのでないなら、なぜ助けたのか」と問いかけた。この発言も大きな物議を醸した。「人を助ければ疑われるのか」との批判が広がり、その後、中国社会で人助けをためらう心理を語る際に繰り返し取り上げられる事件となった。

助けた店主に遺族が10万元を要求 1万9千元を支払うことで和解

こうした問題は過去のものではない。

湖南省衡陽市祁東県では8月17日、体調を崩した高齢男性を助けた女性店主が、男性の死亡後、遺族から10万元を要求される出来事が起きた。

防犯カメラによると、高齢男性は同日午後1人で店に入り、入口付近の椅子に座って休んでいた。約4分後、女性店主が異変に気づいて声をかけたが、男性から反応はなかった。

店主は周囲に助けを求め、ほかの人とともに男性を店の入口付近まで移動させ、救急車を呼んだ。約5分後に救急車が到着し、男性は病院に搬送されたが、その後死亡した。

遺族は店主側に10万元を要求した。男性の息子は「放っておけば、そのまま座っていて何も起きなかった。あなたたちが体を起こしたから、あなたたちにも関係がある」と主張した。双方は派出所で2度にわたって話し合い、最終的に店主側が「人道的補償」として、男性の息子に1万9千元を支払った。

事件がネット上で広がると、「善意で助けた人がなぜ金を払わなければならないのか」と批判が噴出した。事件への批判が広がると地元の民間企業は24日午後、女性店主に2万元の「見舞金」を届けた。

ネット上では「なぜ不当な金銭要求をした側を処罰しないのか」と疑問の声が相次いだ。

日本で撮影された動画に映る中国人観光客の反応は、個々の中国人の善悪を示すものではない。むしろ、「人を助ければ自分が被害を受けるかもしれない」という警戒心が、子供にまで浸透している現実を映し出している。こうした社会不信の背景には、中共統治下で長年形成してきた党文化や法制度、社会環境があると指摘している。