「遺憾の極み」が相次いだ会見 中部電力の不祥事が問う原子力の「安全と信頼」

2026/09/13
更新: 2026/09/13

9月11日の閣議後記者会見で、赤澤経済産業相は中部電力をめぐる不祥事について、「極めて遺憾」「遺憾の極み」と繰り返し述べた。

浜岡原子力発電所の基準地震動データをめぐる不正、廃炉費用の不適切請求、小売子会社による約500万件の電気料金の過大請求。性質の異なる問題が、この約10か月の間に相次いで明らかになった。

中部電力の問題は、一企業の不祥事にとどまらない。原子力政策の前提である安全性と、事業者に対する国民の信頼が問われている。

赤澤経産相「遺憾の極み」中部電力に相次ぐ不祥事

赤澤氏は、浜岡原発3・4号機の基準地震動データをめぐる不正について、「原子力の利用の大前提である安全性に対する国民の信頼を大きく損なう、あってはならないものだ」と述べた。

中部電力グループで不適切な事案が相次いでいることについても、「極めて遺憾だ」とした。

中部電力の小売子会社、中部電力ミライズが9月10日に公表した電気料金の過大請求について、経済産業省は同日、電気事業法に基づく報告徴収命令を出した。赤澤氏は、事実関係や原因を確認したうえで、「最大限厳格に」対応する考えを示した。

一方、赤澤氏は、原子力政策の方向性は変えない考えも示した。

世界と日本のエネルギー情勢を踏まえ、「安全の確保と地域の理解を大前提として原子力をフル活用する」と述べた。また、再生可能エネルギーについても、同じ前提で最大限活用するとした。

不祥事には厳しく対応する一方で、原子力の活用を進める方針は維持する考えである。政府にとっては、原子力を担う大手電力会社が信頼を損なう事態への対応が課題となっている。

約10か月で相次いだ問題

中部電力をめぐっては、この約10か月の間に不適切な事案が相次いでいる。

中部電力の不祥事

主な問題は、それぞれ異なる分野に関わる。基準地震動データの不正は原発の安全審査、廃炉費用の不適切請求は国の資金管理、電気料金の過大請求は消費者保護に関わる。

担当部署や監督の仕組みは異なるが、企業としての管理体制が十分に機能していたのかが問われている。

廃炉費用の不適切請求では、社内の聞き取り調査で「計画通りの実績にしたかった」とする趣旨の証言があったとされる。

また、基準地震動データをめぐっては、計算条件を変えた20通りの地震波のうち、平均値に最も近い1波を代表波として説明していた。一方で、実際には代表波を意図的に選び、残る地震波の扱いを「つじつまが合うよう」に決めていた疑いがあると指摘されている。

これらの問題について、組織としてどのような判断が行われていたのかは、外部調査委員会の報告書などを踏まえた検証が必要である。

電気料金約500万件を過大請求 返還額は約12億円

消費者に最も身近な問題が、電気料金の過大請求である。

対象は、中部電力ミライズの規制料金を2024年4月1日以降に契約している、または過去に契約していた利用者である。規制料金は、従量電灯A・B・Cなど、値上げに国の認可が必要な料金メニューである。

対象は2026年8月時点で約500万9000件で、中部電力ミライズの総契約件数の半数を超える。愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県が対象となる。

中部電力ミライズによると、原因は料金原価の算定誤りである。本来、3年間の発電原価の増加分を474億円とすべきところ、501億円として計算していた。差額の27億円が過大に計上され、その分、料金単価が高く設定されていたという。

利用者への返還見込み額は約12億円である。標準的な家庭への影響は月額約10円、最大で月額約152円程度とされる。

1件当たりの金額は大きくない。しかし、利用者が知らない間に、本来より高い料金を支払っていたことは、認可を受けている規制料金への信頼を損ないかねない。

中部電力ミライズは、2024年1月の時点で約17億円の過大計上を把握していた。しかし、「重大な誤りとの認識に至らなかった」として、およそ2年半にわたり是正しなかった。

誤りが起きたことに加え、把握した後の対応も問われている。

浜岡原発の再稼働審査と安全性への影響

浜岡原発は2011年以降、全号機が停止している。1・2号機は廃炉作業中で、3・4号機は再稼働に向けた審査の途中にある。

基準地震動データをめぐる不正は、再稼働に向けた安全審査の前提となるデータの信頼性に関わる問題である。安全性を裏付けるためのデータが操作されていたとすれば、審査の信頼性にも影響する。

政府は、脱炭素とエネルギー安全保障の両立に向けて、原子力を活用する方針を示している。しかし、その前提となるのは、安全の確保と地域の理解である。

地域住民が安全審査に使われるデータを信頼できなければ、原発の再稼働に対する理解を得ることは難しくなる。

政府が掲げる原子力の活用は、中部電力が問題の原因をどこまで明らかにし、再発防止と信頼回復に向けた対応を示せるかにも影響を受ける。9月14日の会見と、その後の対応は、中部電力だけでなく、原子力行政全体への信頼にも関わることになる。