AIによる自動化された大量のアクセスがウェブサイトに押し寄せ、インターネットを取り巻く状況を大きく変えている。
アナリストによると、現在、インターネット上の全トラフィックの半分以上をボットが占めており、企業にとって顧客にリーチすることは、これまで以上に難しくなっている。人工知能(AI)を活用したボットが大量に押し寄せる中、特に中小企業は、人間の顧客とつながるための新たな戦略を模索せざるを得なくなっている。
「トラフィックが実態以上に膨らむと、広告に関する判断ができなくなる」と、事業主のキャメロン・フィギンズ氏はエポックタイムズに語った。「月間のアクセス解析を見ていると、サイト訪問の30~40%が人間ではないケースもあった」
フィギンズ氏は、カリフォルニア州でカビや水害の修復を専門とする「アブソリュート・メインテナンス・アンド・コンサルティング(Absolute Maintenance and Consulting)」を経営している。同氏によると、会社のウェブサイトに押し寄せる大量のAIボットによって、実際に金銭的な損失が発生しているという。
「例えば、有料広告に毎月2000ドルを費やしていて、クリックの3分の1がボットだったとする。そうなれば、何の成果も得られないまま、毎月600~700ドルを無駄にしていることになる」と同氏は述べた。
事業主のイリヤ・オルナトフ氏も、同じ問題に直面しているという。
「私は住宅清掃事業を経営しているが、当社のウェブサイトは事実上、一番の営業担当者だ」と、「NWメイズ(NW Maids)」のオーナーであるオルナトフ氏はエポックタイムズに語った。
「地域密着型の小規模事業者にとって最大の影響は、ボットによるアクセスのせいで、何が実際に効果を上げているのかを判断することが非常に難しくなることだ。当社では新規顧客のほとんどがウェブサイト経由で来るため、私はアクセス数を細かく確認している。しかし、そのうちのかなりの割合は、清掃を予約する可能性のある実際の人間ではなく、サイトを巡回しているだけのボットなのだ」
フィギンズ氏と同様、オルナトフ氏も、閲覧者の多くが自動化されたボットであれば、広告費を支払う意味はますます薄れていくと述べた。
「文字通り、偽のアクセスに対してお金を払っていることになる。実際の顧客を一人も獲得できないまま、広告費だけを浪費することになりかねない」と同氏は語った。
こうした主張を裏付ける証拠は増えている。特に現在、多くのテクノロジー業界関係者は、インターネットがすでに「逆転点(inversion point)」を越えたと考えている。これは、人間によるウェブトラフィックが、正式にボットによるトラフィックを下回るようになった時点を指す。
サイバーセキュリティ企業「インペルヴァ(Imperva)は、「2026年悪質ボット報告書(2026 Bad Bot Report)」の中で、2025年のウェブトラフィック全体の53%がボットによるものだったと明らかにした。
「いやはや、予想していたよりも早くそうなった」と、クラウドフレア(Cloudflare)の共同創業者兼CEOであるマシュー・プリンス氏は6月、自身のXアカウントに投稿した。同氏は当初、この逆転点が訪れるのは2027年末になると予測していたという。
そして、ボットと人間の比率では、ボットの割合がさらに高まっている。Cloudflareの世界規模のトラッカーによると、8月18日には、すべてのHTTPリクエストの63%がボットによるものだった。
Impervaのチームは、こうした状況について、「インターネットの仕組みに構造的な変化が起きている」ことを示すものだと指摘した。
「企業がサービスを提供する相手は、もはや顧客だけではない。企業はますます、機械に対してもサービスを提供するようになっている」とアナリストらは記している。

数字だけでは見えない問題
テクノロジー業界の関係者によると、ボットがインターネットを席巻することで、人間の実際の行動が見えにくくなり、さまざまな問題が生じている。
「最大の影響は、企業が実際の顧客行動を把握しにくくなっていることだ」と、マイクロソフトのシニア・データエンジニア、ナヴィーン・アヤラ氏はエポックタイムズに語った。
アヤラ氏によると、例えばEC企業では、AIクローラーによってアクセス数が30%急増したにもかかわらず、それをマーケティングキャンペーンの成功によるものだと誤認する可能性がある。こうした状況はマーケティング報告の数値を歪めるだけでなく、不要なインフラコストを発生させ、誤解を招くデータに基づいた不適切な投資判断につながる恐れがある。
「従来のアクセス解析は、訪問者の大半が人間であることを前提としているが、もはやその前提は信頼できない」とアヤラ氏は述べた。「新商品のページが、購入する意思などまったくないAIボットによるコンテンツ収集のための巡回によって、数千回閲覧されることもある。それによって、実際には存在しないエンゲージメントが生み出されてしまう」
こうした問題に対処するため、企業はページビューやクリック数といった表面的な指標ではなく、潜在顧客の本当の購買意欲を示す「ファネルのより深い段階のシグナル」に重点を移す必要があると、アヤラ氏は指摘する。具体的には、商品の購入、フォームへの入力完了、長期的な顧客維持などが含まれる。
「ボットが混ざってくると、直帰率やセッション時間、コンバージョン指標などは、どれも意味を失ってしまう」とフィギンズ氏は述べた。「ランディングページの出来が十分ではないと思い込んで、そのページを捨ててしまった後になって、実際には人間の訪問者からはかなり高い成果が得られていたと気づくこともある」
すべてのボットが同じではない
自動化されたトラフィックのすべてが企業に悪影響を及ぼしているわけではない。実際、その一部は企業と実際の顧客との接点を生み出すのに役立っている。
商品やサービスについて、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)におすすめを尋ねる人は増えている。Similarwebの分析によると、AIに推奨されたブランドは、実際の人間がそのウェブサイトを訪れる可能性が「大幅に高い」という。調査では平均して、ChatGPTの利用者は、競合ブランドと比べてAIに推奨されたブランドに関心を示す可能性が2.5倍高いことが分かった。
「検索エンジンのクローラーやAIアシスタントは、ウェブサイトを見つけてもらいやすくすることで、実際に価値を生み出すことができる」とアヤラ氏は述べた。
重要な課題は、同氏が「価値のある自動トラフィック」と呼ぶものと、単にリソースを消費するだけの一般的なボットを、いかに見分けるかという点にある。
アヤラ氏は、潜在顧客との接点を生み出すうえでAI技術の重要性が高まっていることを考えると、ウェブサイトへのすべてのボットのアクセスを遮断するのは現実的な方法ではないと指摘した。
「企業は、AIを活用した検索での露出を維持しながら、自社のインフラやコンテンツを守るという、バランスの取れた対応が必要だ」と同氏は述べた。
オルナトフ氏にとって、AIボットの登場は、ウェブコンテンツの作り方を大きく変えるものとなった。
「AIボットの登場によって、何を書くのか、そしてどのようにページを構成するのかが変わった。以前はGoogleの検索順位を上げることだけを意識して文章を書いていた」と同氏は述べた。「今では、ページ内で実際の疑問にわかりやすい言葉で答え、明確なFAQ(よくある質問)の項目を設けるようにしている。なぜなら、AIアシスタントが実際に情報を拾い上げ、顧客への回答として提示できるのは、そうした内容だからだ。
「そのため、キーワードを詰め込むのではなく、『徹底清掃にはいくらかかるのか?』『清掃用品は持参してくれるのか?』といった質問に、できるだけ明確に答えるようにしている。そうした情報こそがAIに引用されるからだ。
「私たちはこの変化を積極的に受け入れ、AIツールがサイトの内容を読み取り、引用しやすいようにした。その結果、AIは脅威ではなく、規模はまだ小さいものの、実際に新規顧客をもたらす集客経路の一つになっている」
情報をどう守るか
一方で、AIを活用したボットが、非公開情報や著作権で保護されたコンテンツを含むオンライン上の情報を「スクレイピング(自動収集)」し、ClaudeやChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の学習に利用することも、同様に大きな問題となっている。スクレイピングされたコンテンツの多くはLLMの学習に使われるが、情報を収集された企業側には何の利益ももたらさない。
複数のウェブページやサイトを巡回して情報を収集するボットは、「クローラー」と呼ばれる。
「多くのスクレイピング・アプリケーションは、機密性の高い法務関連資料を継続的に盗み取り、企業を営業秘密の不正取得という問題にさらしている。また、その対応に数千ドルもの費用がかかるうえ、企業のサーバーをクラッシュさせる原因にもなっている」と、弁護士のロバート・ツィグラー氏は述べた。
ツィグラー氏は、注目を集める企業訴訟で主任弁護士を務めてきた経験から、「自動スクレイピングによって、著作権上の責任やサイバーセキュリティ上の脆弱性がどのように生じるのかを、直接目にしてきた」と述べた。
同氏によると、自動化された「スクレイパー・トラフィック」によって、顧客企業のサーバー帯域幅にかかるコストが最大40%増加する一方、ユーザーのアクセス解析にも実態とは異なるデータが生じているという。
「正規の利用者と、自動化されたボットによるスクレイピング・ソフトウェアを区別するため、現在では多くの企業が専用のサイバーセキュリティ基盤を導入する必要に迫られている。中規模企業の場合、その費用は年間1万5000ドル程度からかかることもある」と同氏は述べた。
悪質なボットによる影響を企業がどのように抑えられるかと尋ねられたアヤラ氏は、将来的には「許可するか、遮断するか」という二者択一ではなく、より多層的なアクセス制御が重要になると予測している。
「一般的な情報はAIシステムから引き続きアクセスできる一方、価値の高い独自データについては認証されたアクセスが必要になるという、明確な区分が進んでいくだろう」と同氏は述べた。
「最終的には、AIを遮断することから、AIと安全に協力することへと重点が移っていくだろう」
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