中国 冗談にもピリピリ 専門家は締め付け強化を警戒

替え歌ひとつで6公演中止 人気芸人への処分が映す中国の今

2026/08/25
更新: 2026/08/25

共産党ゆかりの歌を替え歌にして通報され、当局の調査を受けた中国の人気芸人、郭徳綱(かく・とくこう)。その後、予定されていた公演が次々と中止になっている。

発端は7月の武漢公演だ。郭氏は歌詞にある湖の名前「微山湖」を、北京の最高権力を連想させる「紫禁城」に変えた。

「西の太陽が沈もうとしている。紫禁城は静まり返っている」

これが「最高指導者の時代の終わりを暗示している」とも受け取れるとして通報され、当局が調査。その後、3都市で計6公演が中止・延期された。公演中止との直接の関係について、当局は説明していない。

この動きを強く警戒するのが、中国共産党の幹部養成機関「中央党校」の元教授、蔡霞氏だ。「文革2.0が公然と戻ってきた」と指摘している。

「文革」とは、毛沢東が1966年に始めた文化大革命のことだ。政治的に「間違っている」とされた人が密告され、つるし上げや暴力の標的となった。何げない一言で人生が壊れかねない時代だった。

蔡氏は、そんな時代を思わせる空気が再び強まっているとみる。

景気が悪化し、社会の不満が高まると、その不満を別の対象へ向けるのが中国共産党の常套手段だと蔡氏は指摘する。これまでは反日・反米感情をあおったり、富裕層や芸能人を批判の的にしたりしてきた。

今回は、冗談や表現まで問題にして、人々を萎縮させる方向に向かっている。蔡氏が「文革2.0」と呼ぶのはそのためだ。

独立系評論家の蔡慎坤氏も、習近平政権のもとで言論や文化・芸術への締め付けが強まっていると指摘。「文化大革命が異なる形で戻ってきている」とみている。

芸人は「この冗談を言って大丈夫か」と考え、観客まで「ここで笑って大丈夫か」と身構える。冗談ひとつにも政治を気にする。替え歌ひとつで公演が次々と消える。そんな息苦しさが、いまの中国に広がっている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!