外国人政策 対策100項目超の進捗 「想定していなかった制度」の手直しが進む

2026/08/10
更新: 2026/08/10

政府は7月24日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議の第3回会合を開き、本年1月に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」の進捗状況を確認した。

対応策に盛り込まれた施策は100項目を超えており、入国から在留、帰化、社会保障、交通、土地の所有に至るまで、これまで個別の法令ごとに運用されてきた制度を一体として見直す内容となっている。

令和7年11月4日、設置された関係閣僚会議に対し、高市首相名の指示文書は、人手不足の分野で外国人材を必要とする現実とインバウンド観光の重要性を認めた上で、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に国民が不安や不公平を感じる状況が生じていることも事実だと記した。

文書は「排外主義とは一線を画しつつも」毅然と対応する方針を示し、不法滞在者ゼロプランの推進、納税状況等を活用した在留資格審査の厳正な運用、帰化の厳格化の検討などを関係閣僚に求めている。

土地については、国民の不安は外国人による不動産保有の実態がよく分からないことにも起因しているとして、不動産登記時と森林取得の届出時における国籍の把握、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく報告の仕組みの検討、マンション取引実態の早急な把握と公表を指示した。

統計が示した前提の変化

指示の背景には、統計上の変化がある。

出入国在留管理庁によると、令和7年6月末時点の在留外国人数は395万6619人で、前年末比18万7642人(5.0%)増と過去最高を更新した。在留資格別では「永住者」が93万2090人と最も多く、以下「技術・人文知識・国際業務」45万8109人、「技能実習」44万9432人、「留学」43万5203人、「特定技能」33万6196人と続いた。

1月に決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」は、こうした社会情勢の変化を前提としてこなかった諸制度の在り方に国民の関心が高まっていると指摘し、一部外国人による法やルールの逸脱、制度の不適正利用によって、国民が不安や不公平を感じる状況が生じている、と述べていた。

同文書はこれらの諸制度が多数の外国人が在留することを前提としておらず、実態の把握そのものが十分にできていない面もあると記し、事実関係や実態を正確に把握する必要性を訴えている。

情報が届いていなかった審査

制度の「想定外」は、まず情報の欠落として現れていた。総合的対応策によれば、在留審査で税や社会保険料の納付状況が確認されていたのは一部の在留資格に限られ、健康保険についても外国人加入者の情報を関係機関が十分に把握できていなかった。

こうした空白を埋めるため、マイナンバーを用いた機関間の情報連携が進められている。

令和8年1月にはデジタル庁のシステム「公共サービスメッシュ」は稼働を開始し、出入国在留管理庁は国民健康保険料や国民年金保険料の納付情報などの提供を受ける一方、国籍や在留資格の情報を関係機関に提供する仕組みとなった。在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード等」も令和8年6月に運用を開始した

「経営・管理」で起きたこと

在留資格「経営・管理」の許可基準は令和7年10月16日に改正され、資本金要件が500万円以上から3千万円以上に引き上げられたほか、常勤職員の雇用や日本語能力、経営経験などの要件が加わった。

総合的対応策は、改正前から在留が認められている事案の中に実態に疑いのあるものが存在する一方、調査が十分にできていないと指摘している。出入国在留管理庁は令和7年5月から集中的な実態調査を進め、月約1700件だった交付申請件数は改正後、月約70件と約96%減少するなど、効果は申請件数に表れている。

永住と帰化の「不整合」

「永住者」の在留資格については、許可要件そのものが緩やかであると指摘されてきたことに加え、許可後は在留期間の更新がないため、許可後に要件を満たさなくなる場合がある、との問題認識が示されていた。

2024年(令和6年)6月に成立した改正入管法では永住許可要件の明確化と取消事由の追加を行っており、故意に公租公課を支払わない場合などによる取消しは令和9年4月から運用が始まる予定である。取消事由の該当例などを示すガイドラインは令和8年秋までに策定・公表される見込みだ。

永住許可に関するガイドラインは令和8年2月24日付けで改正され、在留期間「3年」を最長として取り扱う経過措置は令和9年4月1日をもって廃止される予定となった。

これまで帰化について国籍法の住所要件が5年以上と、選挙権などがない永住許可よりも、容易になっていることが不整合であるとの指摘があった。

法務省は永住許可審査との整合性の観点から、「日本社会に融和していること」の要件について原則として10年以上の在留を求める考え方を令和8年3月27日に公表し、同年4月1日から運用を開始した。

送還と不法残留

日本の不法残留(不法滞在)問題は、観光などの「短期滞在」で入国したまま失踪・残留するケースが不法残留全体の約半数以上を占めている。単に「ルールを破って滞在している」という点だけでなく、構造的・社会的に波及する様々な問題が指摘されてきた。

不法残留者数は令和7年1月1日の7万4863人から6375人(8.5%)減少し、令和8年1月1日時点では6万8488人となった。在留資格別では「短期滞在」が4万1607人と最も多く、国籍・地域別ではベトナムが1万1601人で最多だった。

難民認定手続(一次審査)も平均処理期間は約2年と長期化しており、対応策は誤用・濫用的な難民認定申請の抑制を含めた迅速化を課題に挙げている。未処理数は不法滞在者ゼロプランを公表した令和7年5月の2万件超をピークに、令和7年末時点で1万5969件となり、約4千件減少している。

護送官付き国費送還は令和6年の249人から令和7年は318人に増えた。政府は令和9年までに同送還の件数を倍増させることなどにより、退去強制が確定した外国人を令和12年末までに半減させる目標を掲げている。

今後の取組の方向性を示した資料には、令和10年1月の不法残留者数を、平成2年以降で最低だった令和4年7月の約5万8千人と比較して検証する方針を記している。

医療費と外免切替

近年、訪日外国人が医療費を支払わないまま帰国・再入国するケースが問題視され、既存の入国審査厳格化の仕組みでは不払いを十分抑止できていなかった。この課題に対応する形で、基準額の引下げと対象拡大が進められている

医療費不払いのある訪日外国人への入国審査厳格化は不払い額20万円以上から、令和8年4月から「1万円以上」に引き下げた。令和9年度からは中長期在留者にも対象を広げ、在留審査でも活用する方針となっている。

外国免許を日本の免許に切り替える「外免切替」も見直され、令和7年10月から住民票の添付が必須となった。在留資格のない者などは申請できなくなり、知識確認の問題数や合格基準、技能確認の水準も引き上げられた。

外免切替は、日本の交通ルールを理解しないまま取得できる緩さが事故につながっていたほか、居住要件がなく観光客も取得できる点や、知識確認の問題が簡単すぎる点が問題視されていた。これらを受け、問題数や合格基準、技能確認の水準が引き上げられた。

結果として通過率は知識確認42.2%、技能確認13.7%と、改正前の92.5%、30.4%から大きく低下した。

実態が分からない土地

投機的な短期売買や重要施設周辺の土地取得など、外国人による土地所有の実態が把握されていないことが不安視されている。こうした不安の背景には、所有者の国籍等を把握する仕組みがそもそも整っていなかったことがある。

外為法の取得報告制度は投資目的以外の取得を対象外とし、不動産登記や農地台帳などの制度も個別に運用され、統合的なデータベースは存在しなかった。こうした実態把握の空白を埋めるため、令和8年に関連法令の改正が相次ぎ、国籍等の把握や取引実態の調査が進められている。

土地をめぐる取組は、規制の前段階にあたる実態把握から始まる。対応策は、外国人による土地取得等への国民の不安は所有者等の実態が分からないことに起因し、様々な土地関連制度があるにもかかわらず国籍等の把握体制が十分に整備されていないことにあると指摘している。

これまで外為法の不動産取得報告制度は投資目的以外の取得を対象外としており、不動産登記や農地台帳などのデータベースも個別の法令ごとに運用され、統合的な管理は行われていなかった。

令和8年に入り、重要土地等調査法施行規則(1月公布・4月施行)、森林法施行規則関係告示、国土利用計画法施行規則、外国為替の取引等の報告に関する省令(いずれも2月公布・4月施行)、不動産登記規則(3月公布・10月施行)など、国籍等を把握するための法令改正が相次ぎ、既存の不動産についても、登記名義人情報を用いて国外居住者や外国人等と思われる者の所有状況を試算する取組が令和8年4月・6月からそれぞれ始まっている。

マンションでは、国外からの取得割合が都市部ほど高い傾向が令和7年11月の調査で判明し、不動産協会が投機的取引抑制の方針を決定している。

地下水では、外国人等による採取事例が12団体49件把握された一方、具体的な支障事例は報告されなかった。安全保障面では、重要土地等調査法に基づく届出取得が総数の3.1%にあたる3498筆あったが、同法に事前取得規制はなく、令和6年度中の勧告・命令もなかった。

こうした状況を受け、内閣官房は令和8年3月に検討会を設置し、規制対象を外国人に限定するか、許可制とするか届出制とするかなどを論点に、令和8年夏までの骨格取りまとめを目指している。

残る作業

7月24日の会合で木原官房長官は、来年度の概算要求に向けた関連予算の検討と、出入国在留管理庁の緊急的な体制整備の速やかな実現を関係閣僚に求めた。

法務大臣には外国人が日本語や制度・ルールを学習するプログラムの創設に向けた検討を求め、外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣には将来推計等を行いつつ本年度中に外国人の受入れの基本方針を取りまとめるよう指示した。

安全保障の観点からの土地取得等のルール、地下水の適正な保全と利用に向けたルール、国土の適切な利用に向けたルールについては、いずれも本年夏の取りまとめに向けて検討を加速するよう求めた。

総合的対応策は、我が国に在留する多くの外国人について、勤勉で法や社会規範等を理解し、地域・産業を支え、日本社会に貢献している存在だと記した上で、有識者会議意見書の「秩序は社会の土台、多様性は社会の力であり、この両者を両立させることが、真の秩序ある共生社会の道である」との指摘に十分留意する必要があるとしている。

同時に、外国人との秩序ある共生をめぐる状況は絶えず変化し続けるものであり、盛り込まれた施策を実施していれば足りるというものではない、とも記している。

 

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます