日本の観光市場では、中国人観光客の大幅な減少によって訪日外国人旅行者数が前年を下回る一方、国内旅行では旅行単価の上昇を背景に消費額が過去最高を記録した。
観光庁が2026年7月にまとめた文「観光の現状等について」からは、インバウンド消費が堅調に推移し、国内旅行の消費拡大が観光市場全体を力強く支える構図が浮かび上がる
2026年5月の訪日外国人旅行者数は約356万人となり、前年同月比3.6%減少した。人数では約13万人の減少である。
全体を押し下げた主な要因は、中国からの訪日客の大幅な落ち込みである。中国人旅行者は約31万人にとどまり、前年同月比60.4%減となった。人数にすると約48万人の減少であり、中国市場の変動が訪日旅行者数全体に大きく影響した。
一方、中国以外の国・地域からの旅行者は増加傾向を示した。韓国からの旅行者は前年同月比15%増の95万人で最多となり、台湾は同15%増の62万人、米国は同7%増の33万人と続いた。
調査対象となった23か国・地域のうち、19か国・地域が5月として過去最高を記録した。インドや中東からの旅行者数も単月として過去最高となり、中東からの旅行者は同67.8%増の約3万9千人に達した。中国からの旅行者が減少する中でも、訪日市場では国・地域の多角化が進んでいる。
訪日外国人旅行者数が全体として前年を下回る一方、日本の観光市場を支えたのが日本人の国内旅行である。
2026年1~3月期の日本人国内延べ旅行者数は、前年同期比0.4%増の1億2千万人となった。旅行者数の伸びは小幅であったが、1人1回当たりの旅行支出は同4.4%増の約4万9千円に上昇した。
日本人の国内旅行では、旅行単価の上昇に伴い、2026年1~3月期の旅行消費額が前年同期比4.8%増の5兆9千億円を記録した。日本人旅行者1人1回当たりの旅行単価と国内旅行消費額は、いずれも比較可能な2010年以降の1~3月期として過去最高となった。
日本人の国内旅行者数は前年同期比0.4%増にとどまったが、1人1回当たりの支出が同4.4%増えたことで、国内旅行消費額が押し上げられた。
一方、訪日外国人旅行者数は5月単月や1~5月累計では前年を下回ったものの、2026年1~3月期の旅行者数は前年同期比1.4%増の約1068万人であり、日本人の国内旅行と同様に前年を上回っていた。訪日外国人による消費も堅調に推移しており、2026年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は、前年同期比2.5%増の2兆3千億円となった。
ここ数年、日本の観光業界は急速に発展している。
2025年の訪日外国人旅行消費額は約9兆5千億円に達し、2019年の約4兆8千億円からほぼ倍増した。この規模は、自動車完成品の輸出額の17兆6千億円に次ぎ、半導体等電子部品を上回る。
2025年の国・地域別消費額では、中国が2兆円で全体の21%を占め、首位となった。台湾は1兆2千億円で13%、米国は1兆1千億円で12%、韓国は1兆円で10%であった。中国人旅行者は2026年5月に大幅に減少したものの、消費額では依然として大きな存在感を持っている。
訪日外国人の消費内容にも変化が表れている。2025年の旅行消費額に占める割合は、宿泊費が36.6%、買物代が27.0%、飲食費が21.9%となった。
2019年と比べると、買物代の割合は34.7%から27.0%に低下した。一方、宿泊費は29.4%から36.6%に上昇し、飲食費も21.6%から21.9%に増加した。訪日客の消費は、買物を中心とする形から、宿泊や飲食、日本での滞在そのものに支出する形へ変化している。
日本の観光市場では、中国人旅行者の減少が訪日外国人旅行者数全体を押し下げたものの、国内旅行は旅行単価と消費額の双方で過去最高を更新した。訪日客数だけではなく、国内外の旅行者が日本でどれだけ消費したかが、観光市場の実態を示す重要な要素となっている。
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