2026年6月に成立した改正法により、動画や音声を含むデジタル教科書が、紙と同じ正式な教科書として位置づけられる。2030年度以降、紙の教科書、デジタル教科書、両者を組み合わせた形態が段階的に導入される見通しだ。学びはどう変わり、学校にはどのような課題が残るのかを解説する。
新学期が始まり、子どもたちは新しい教科書を手にしている。その教室の風景を数年後に変える可能性のある法律が、先の通常国会で成立した。
2026年6月10日、参議院本会議で可決、成立した「学校教育法等の一部を改正する法律」である。紙を前提としてきた教科書制度に、動画や音声などを取り入れたデジタル教科書を位置づける仕組みが加わった。
教育は、子どもたちの成長を支える基盤である。子どもたちが学習内容を理解し、「分かった」「楽しい」と感じる機会を増やすことは、学校教育の重要な課題である。今回の改正は、学習におけるデジタル活用を制度面から進めるものといえる。
デジタル教科書とは何か 改正法で変わる教科書制度
改正の柱は、デジタル教科書を法律上の教科書として位置づける道を開いたことである。
デジタル教科書は、すでに英語など一部の教科で使われている。ただ、これまでは紙の教科書と同じ内容を電子化したものが中心であり、紙の教科書を補う教材として扱われてきた。
教科書に掲載された二次元コードから見る動画や聞く音声も、これまでは教科書本体とは別の教材とされ、直接には教科書検定の対象ではなかった。
改正後は、英語の音声、理科の実験動画、立体図形を動かして示す映像など、紙では伝えにくい内容を教科書の一部として組み込めるようになる。こうしたデジタル部分も、教科書検定の対象となる。
紙・デジタル・併用の3形態

どの形態を採択するかは、教育委員会や国立・私立学校の設置者などが判断する。
紙の教科書には、内容を見渡しやすく、長い文章を読みやすいという利点がある。しばらくは、紙を基本に、必要な部分でデジタルを使う形が中心になるとみられる。
今回の改正は、紙の教科書をすべてデジタルに替えるものではない。音声や映像を使いやすい英語、美術、音楽などの教科もあれば、紙による学習に適した内容もある。学年や教科の特性に応じて、効果が見込める場面でデジタルを使うことが重要である。
無償配付はどうなる 教育委員会などが採択する教科書
日本では、義務教育段階で、国が無償で配付する教科書を使用する仕組みとなっている。地域や家庭の経済状況にかかわらず、一定水準の教材を子どもたちに届けるための制度である。
新たに教科書として位置づけられるデジタル教科書も、無償配付の対象となる見通しだ。これまでの制度を維持したうえで、教材の形にデジタルという選択肢を加えることになる。
導入時期と課題
新しい教科書が教室に届くのは、2030年度以降と見込まれている。検定や採択の時期に合わせ、小学校、中学校、高校で段階的に導入される見通しだ。
GIGAスクール構想により、児童・生徒1人1台の端末環境は全国に広がった。ただ、端末の更新や通信環境、保守・運用の体制には地域差がある。
課題もある。
健康面:画面を見る時間が増えることによる視力への影響を心配する声がある。
通信環境:多くの端末が同時に接続した際、通信が遅れたり、つながりにくくなったりするおそれがある。
授業での活用:デジタル教科書は、導入するだけで学習効果が高まるものではない。教員への研修や、授業で効果的に使うための支援が必要となる。
問われるのは「紙かデジタルか」ではなく、使い方
制度の枠組みは整備されつつある。ただ、デジタル教科書が子どもたちにとって、より分かりやすく、学びやすいものになるかどうかは、教材の内容と教室での使い方にかかっている。
紙の教科書の良さを生かしながら、動画や音声など、デジタルでできることを必要な場面で組み合わせていくことが求められる。子どもたちの理解を深め、学ぶ意欲につなげられるかが、今後の課題である。
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