中国 地方で拒まれ 北京でも拒まれる

北京への直訴 新ルールでさらに困難

2026/07/03
更新: 2026/07/03

行政にも裁判にも頼れない。最後の望みを託し、中国各地から人々が向かうのが北京の国家信訪局(陳情局)だ。国に直接助けを求める、最後の窓口である。

しかし、その入口では、想像を超える光景が日常となっている。

陳情民たちは受付を済ませるだけのために、2日近く屋外で並び続ける。折り畳み椅子で仮眠を取り、乾パンやカップ麺で空腹をしのぎ、列を離れれば何十時間も待った順番を失うため、水を飲むことさえ控え、トイレも我慢しながら耐え続ける人も少なくない。

それでも受付で行うのは、身分証を読み取り、書類を提出するだけ。数分で終わる手続きのために、45時間も並ぶ人が後を絶たない。

こうした状況につけ込むのが、「黄牛(ダフ屋)」と呼ばれる転売グループだ。

彼らは何日も前から行列の前方を占拠し、その場所を500~1000元(約1万~2万円)で売る。時間がない人や高齢者、体力の限界を迎えた人は、順番を買わざるを得ないという。

陳情民によると、入口の警備員が本人確認をほとんど行わず、こうした行為を事実上黙認しているケースもあるという。

さらに周辺では、順番の場所取り代行や折り畳み椅子の貸し出し、置き去りにされた防寒着の転売まで行われ、順番待ちを商売にする「陳情ビジネス」まで生まれていた。

 

北京の国家信訪局前にできた陳情民の行列(陳情民提供。)

 

そして7月1日、その「最後の窓口」はさらに狭められた。

国家信訪局は新たな信訪制度を施行し、北京で陳情するには、原則として省レベルの政府機関が発行した回答書や通知書などの書類がなければ受理しないと定めた。さらに、繰り返し北京へ陳情に来るケースも原則として受け付けない。

だが、多くの陳情民は「地方政府がその書類を出してくれないから北京まで来ているのに、その書類がなければ受け付けないと言われても意味がない」と反発している。

本紙の取材に対し、上海の元大学教員で人権活動家の顧国平氏は、「地方政府は調査もせず、回答も曖昧なまま放置し、文書すら発行しない。新制度は国民だけを縛り、行政の責任は問わない仕組みだ」と批判した。

また、新制度では郵送やインターネットでの陳情を優先するとしているが、施行初日から「ネット陳情で資料がアップロードできない」と訴える声も上がった。

 

北京の国家信訪局前にできた長い行列(動画のスクリーンショット/大紀元)

 

何十時間も並び、ようやく受付にたどり着いても、問題が解決するケースはごくわずかだ。それでも人々は北京へ向かう。ほかに頼る場所がないからである。

長い行列の中で売り買いされ、そして新制度によって、その最後の希望の入口さえ狭められた。救済のために設けられた制度が、いつしか人々を遠ざける仕組みへと変わっている。そんな現実が、いま中国で進んでいる。

 



「正義は燃え尽きた」 陳情制度に絶望した女性の最期 中国【動画あり】

中国の陳情制度の限界が生んだ悲劇か。政府庁舎正門前でガソリンをかぶり、自らに火を放ち、炎上した女性。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!