5月中旬、トランプ米大統領の訪中に合わせ、「中国の人権問題に目を向けてほしい」と横断幕を掲げた、吉林省出身の陳情民3人、田野氏、王国平氏、董奎紅氏が相次いで連絡不通になっている。
3人はいずれも長年、北京で陳情活動を続けていた。田野氏と親しい陳情民の兪氏は本紙記者に対し、「3人とも連絡が取れない状態だ」と訴えた。本紙記者も田氏と王氏に何度も電話したが、応答はなかった。
上海でも複数の陳情民が同様の横断幕を掲げた後、警察から事情聴取や警告を受けていたことが、本紙記者の取材で分かった。
上海で横断幕活動に参加した80歳の末期がん患者・宋嘉鴻氏の自宅には警察が繰り返し訪れ、「過激なことをするな」「ネットで勝手な発信をするな」などと警告したという。宋氏は、再開発で自宅を取り壊された後も十分な補償を受けられていないと訴えている。

中国の「陳情民」とは、土地の強制収用や立ち退き、不当判決、地方官僚の汚職などを訴えるため、地方ではなく中央政府に直訴する人々を指す。陳情そのものは違法ではないが、地方政府にとっては「隠しておきたい問題」が中央に知られることになるため、各地では陳情民の監視や排除が常態化している。
特に外国首脳の訪中や北京で重要会議が開かれる時期には、当局は「社会の安定」を最優先に掲げ、国に不都合な情報や抗議の動きを徹底的に封じ込める。北京へ向かおうとする陳情民を地元へ連れ戻す「陳情民狩り」と呼ばれる動きも長年続いており、中には暴力を伴う不法監禁や虐待を受けたと訴えるケースも後を絶たない。
それでも今回、厳しい監視や拘束のリスクを承知のうえで、「中国の人権問題を見てほしい」と訴える陳情民は後を絶たない。本来あるべき権利や、自分たちが受けた不当な扱いを訴えているだけにもかかわらず、拘束や監視の対象となり、中には暴力の中で命を落とす人も少なくない。
中国当局が世界に見せようとする「繁栄した大国」のイメージ。その裏側では今も、助けを求めて声を上げた人々が、静かに消えていく。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。