中国共産党(中共)との競争が激しさを増すなか、欧州連合(EU)は、重要技術の供給網を守る米主導の枠組みに参加するため、アメリカと協議を進めている。この動きは、世界の先端技術分野の勢力図に影響を与える可能性がある。
中共サプライチェーンへの依存低減
ブルームバーグが5月12日、情報筋の話として報じたところによると、EUの執行機関である欧州委員会は現在、米主導の枠組み「パックス・シリカ」への参加条件について協議している。
欧州委員会は現時点で正式なコメントを出していないが、今回の動きは、西側諸国が半導体やAIの供給網の安全確保に向け、より緊密な協力を模索していることを示している。
米国務省の発表によると、「パックス・シリカ」はアメリカ主導の戦略構想であり、安全で安定した、イノベーションを支えるシリコン関連の供給網を築くことを目的としている。対象には、重要鉱物、製造に必要なエネルギー、先端製造、半導体、AIインフラ、物流などが含まれる。
この構想は、信頼できる同盟国との深い協力を基盤としている。経済的な圧力を受けやすい依存関係を減らし、AIを支える重要素材や技術力を守るとともに、価値観を共有する国々が次世代技術を大規模に開発・導入できる環境を整える狙いがある。
EU内の調整 足並みそろうか
欧州委員会はEUとして統一した対応を進めようとしているが、EU内では、この構想の具体的な範囲や目標をめぐり、一部で懸念や意見の違いが残っている。一方、スウェーデンやフィンランドなど一部の加盟国は、すでに独自に動き、先行してこの構想に参加している。
情報筋によると、欧州委員会は同構想への参加を、ヨーロッパ各国が技術安全保障をめぐってばらばらに対応する事態を避けるための重要な手段と位置づけている。
協議を進めるため、欧州委員会は今後数週間以内に高官をアメリカへ派遣し、本格的な協議に入る見通しだ。
現在の交渉では、フランスの支持を取り付けることも焦点となっている。EU主要加盟国の中では、フランスが特に慎重な姿勢を示している。関係者らは、EU全体での合意形成に向け、参加に必要な条件や技術面の詳細について確認を進めている。
米欧の貿易摩擦下で進む戦略協力
中共当局がレアアースなどの鉱物輸出を規制したことで、米欧は重要原材料分野での協力強化を迫られている。ただ、双方がさらに緊密な協力へ進めるかどうかは、地政学上の課題や貿易政策上の対立にも左右される。
トランプ大統領が進める関税措置は、米欧間の貿易摩擦を招いており、世界最大級の貿易パートナーである両者の協力拡大に影を落としている。
EUは現在、トランプ氏がさらなる高関税を警告するなか、昨年7月にアメリカと合意した貿易協定の履行に取り組んでいる。
同時にEUは、クラウドコンピューティング、AI、半導体分野での自立性を高めるため、技術主権を強化する包括的な計画の策定も進めている。外国の技術や供給網への依存を軽減する狙いがある。
しかし、EUが非EU圏のクラウドサービス事業者による政府の機密データ処理を制限することを検討している動きに対しては、ワシントン側が強く反発している。
世界の先端技術分野に大きな影響も
アナリストらは、EUが正式にこの枠組みに加われば、半導体やAIを中心とする先端技術分野で、西側の技術圏と中共関連の供給業者とのデカップリングが加速すると指摘している。
重要鉱物やデータセンターインフラに関わる企業にとって、この戦略転換は、国際取引でより厳しい規制基準が求められることを意味する。取引先や物流ルートの選択肢は狭まるが、一方で安全性と安定性は高まるとみられる。
米欧が「パックス・シリカ」の枠組みのもとで協力の詳細を詰めるなか、今後数週間の協議が、半導体やAIをめぐる国際的な枠組みの行方を左右する可能性がある。
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