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日本企業の中国撤退が加速 生産拠点を東南アジア・インドへ分散

2025/11/17
更新: 2025/11/17

日本の大手メーカーが中国での事業縮小や撤退を加速する中、生産拠点を東南アジアやインドなどへ分散する動きが強まっている。背景には中国の経営コスト増加やサプライチェーンリスク、地政学的課題、環境規制の強化がある。公式統計や主要企業の発表でも対中投資の縮小は顕著である。

日本のソニー(Sony)が最近、中国でスマートフォン関連の公式アカウントを閉鎖した。日本の製造業では中国市場向けの複数の事業で縮小の動きが広がっており、生産能力や投資計画の見直しが進んでいる。日本の公式統計によると、中国への新規投資意欲は低下しており、複数の研究機関は「中国で事業拡大を進める日本企業の割合が過去十数年で最低水準にまで下がった」と指摘している。

11月上旬、中国の利用者は「ソニーXperia」のWeChat(微信)公式アカウントが「登録解除」されたことに気づいた。同時に、ソニー中国公式サイトのスマートフォン関連カテゴリも消え、過去の製品を紹介していたページは閲覧できなくなった。Xperiaのソニー公式Weibo(微博)も3月以降は更新が止まっている。

中国の電子業界に詳しい日本のビジネス関係者は大紀元の取材に対し、「ソニーの携帯電話は中国での販売が落ち込んでおり、サービス窓口の集約は、日本企業が中国での事業展開を見直していることの表れである」と語った。

同氏はさらに、「中国市場は日本企業にとって魅力が低下しており、中国で暮らす日本人の安心感も薄れている。中国で働く日本企業の日本人社員の家族も、一部、中国籍を持っている場合でも、次々と日本へ帰国している」と述べた。

複数のネットユーザーもSNS上で、「日本の携帯電話は中国で競争が激しく、販売も落ちている。撤退は避けられない」と書き込み、一方で「ソニーは長年にわたり現地の販売ペースに合わせられず、撤退は仕方ないが、それでも製品自体は好きだ」との声もあった。

主要企業の新拠点:ASEAN・インド・ヨーロッパへの投資動向

ソニー以外にも、この数年で多くの日本の製造企業が中国での生産ラインを見直している。三菱自動車は2023年に中国での完成車生産の停止を発表し、同年7月には瀋陽航天三菱との合弁を解消した。日産自動車と東風汽車の合弁企業による常州工場は2024年に生産を終了した。この工場は年間13万台の生産能力を有していた。

武漢の自動車業界関係者はSNS上で、「ガソリン車の販売が落ち込み、新エネルギー車との競争で従来型ラインに大きな圧力がかかっている」と投稿した。

日本の家電メーカーは長年にわたり中国市場で大きなシェアを占めてきたが、この5年間で多くの日本企業が中国市場から撤退している。松下電器(パナソニック)は蘇州の電池工場の生産ラインを東南アジアへ移し、シャープも一部のラインを海外へ移転した。タムラ製作所(Tamura)はメディア取材に対し「中国での事業規模を3割縮小し、ヨーロッパとメキシコで生産能力を拡大する計画で、2028年3月までに完了を目指している」と述べた。

タムラ製作所は現在、中国に11の生産および販売拠点を持つ。Nikkei Asiaの報道によると、同社は11月から埼玉県で電流センサーの生産を開始し、12月には中国での合弁会社1社を売却する予定であるという。

専門家は「日本企業の生産拠点移転は計画的に進められており、地域選定は多極化の方向に向かっている」と分析する。

また別の報道では、TDKが電池セルの生産を中国から移し、年末までにインド・ハリヤナ州でスマートフォン向け電池モジュールの生産を開始する計画だと伝えている。TDK大連の従業員は大紀元の取材に対し、「会社が中国での生産量を減らすと聞いた。現地従業員への影響は大きい」と話した。

日本の経済産業省が2025年1月に発表した「アジア投資動向報告」によると、日本のアジア地域への対外直接投資のうち、中国への投資残高はコロナ禍以降減少している。報告書は、環境規制やエネルギーコスト、人件費の上昇などが企業に工場配置の見直しを促していると指摘している。

深圳の電子企業の元責任者である邵氏は「広東省は日本企業が最も早く中国に進出した地域の一つだが、この10年で次々と撤退している。2024年に蘇州と深圳で日本人学生が襲われる事件が発生して以降、日本企業の社員は中国への好感度を下げ、安全面への懸念から事業を縮小する企業が増えている」と語った。

邵氏はさらに、「日本企業が撤退する要因には、中国での経営コスト、サプライチェーンの移転、そして米中・日中関係の変動がある。日本は中国市場への依存を下げようとしている」と述べた。

日本政策金融公庫(JBIC)が2024年12月に発表した「海外事業展開に関する企業調査」によると、多くの日本の製造企業は中国市場の経営環境に引き続き関心を持っている。調査では、「環境規制」に関して中国を注視している企業の割合は73.5%で、「環境規制強化による悪影響」に関して中国を挙げた企業の割合が最も多く、51.3%に達した。

外資の中国進出を長年研究してきた黄平(仮名)氏は、「日本企業はこれまで中国市場に依存してきたが、近年はベトナムやインドへ軸足を移し、リスク分散を図っている」と説明した。

タムラ製作所は公開資料の中で「2028年までに中国での生産比率を3割引き下げ、メキシコとヨーロッパで生産ラインを新設する」と明記している。日本貿易振興機構(JETRO)が2025年1月に発表した「世界貿易・投資報告」によれば、日本の対中投資は3年連続で減少し、その規模は2014年以来の最低水準となった。報告書は「日本企業のインドおよびASEAN諸国への投資が拡大しており、新設工場の立地は多様化している」と指摘している。

静岡大学の研究者は大紀元の取材に対し、「日本企業の製造業における世界的な生産・販売比率が分散しつつあり、中国向けの新規拡張意欲は下がっている」と述べた。そのうえで「コスト構造や環境規制の変動により、企業は引き続き拠点の見直しを進めている」とし、北京の産業アナリストも「中国市場の規模は依然として大きいが、政治環境の変化が外資系企業に製品ラインの再定義を促している」と語った。

沈越