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米国 アフリカで中国を抜き最大投資国に 一帯一路に対抗

2025/11/11
更新: 2025/11/11

電気自動車(EV)やAI、兵器システムに欠かせないリチウムやレアアース(希土類)、コバルト、タングステンなどの重要鉱物を多く産出するアフリカ大陸が、米中対立の新たな焦点となっている。

BBCによると、ジョンズ・ホプキンス大学の研究機関「中アフリカ研究イニシアチブ(China Africa Research Initiative)」の最新データで、2023年に、アメリカの対アフリカ直接投資額は78億ドル(約1兆2千億円)に達し、中国の40億ドルを上回った。 アメリカがアフリカで中国を抜いたのは2012年以来となる。

DFC主導でアフリカ投資を強化

これらのアメリカの投資は、国際開発金融公社(DFC)が主導している。DFCは2019年、当時のトランプ政権下で設立された。公式サイトで、設立の目的について「戦略的地域における中国共産党(中共)の影響力に対抗すること」と説明している。

同機関は、アメリカのインド太平洋戦略の中核を担う経済協力機関であり、アメリカが掲げる「高品質なインフラ投資」を海外で推進する役割を担う。中共の「一帯一路」構想による影響力拡大をけん制する狙いもある。

2024年には、ルワンダの鉱山会社トリニティ・メタルズが、錫やタンタル、タングステンを採掘する3鉱山の開発に向けて、DFCから390万ドルの資金援助を受けた。同社はルワンダ産鉱物を米ペンシルベニア州の工場に輸出し、アメリカ国内でのサプライチェーン構築を進めている。

トリニティ社のショーン・マコーミック会長はBBCに対し、アメリカ政府からの資金援助が輸出先の決定に影響したとの見方を否定した。

「アメリカ政府が私やCEOに『タングステンをアメリカに運んでほしい』と言ったわけではない。これはあくまで市場参加者としてのビジネス上の判断だ」と述べた。

アメリカ企業も相次ぎ進出

アメリカ資源大手アメリカン・リソーシズ傘下のリイレメント・アフリカは、南アフリカに重要鉱物の精錬施設を建設中だ。同社のキンケイド最高経営責任者(CEO)ショーン・マコーミック氏は、「現地と連携し、採掘から精錬まで一体化させることで雇用や経済発展につなげたい」としている。

トランプ氏が返り咲きを果たした後、DFCの投資枠を拡大。民間資金を呼び込みやすくするため、投資対象の制限を緩和した。今年、投資家のベン・ブラック氏をDFC会長に指名し、「政府と民間の協力による投資推進」を掲げている。

「一帯一路」失速 投資額は半減

一方、中共の「一帯一路」構想によるアフリカ投資は減速している。上海復旦大学の報告によると、2021~22年のサハラ以南アフリカ地域への中共のインフラ投資は前年比で約55%減少し、75億ドルにとどまった。

過去20年間で中共はアフリカのインフラ事業に総額1550億ドルを投じ、影響力を強めてきたが、近年は経済減速や債務問題で投資ペースが鈍化している。

西側諸国も巻き返しへ

EUも、アフリカでの存在感を高める構えだ。2022年、アメリカはG7諸国とともに「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」(総額6千億ドル規模)に参加。EUも同年、新たな対アフリカ政策を打ち出した。

フランス投資銀行ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア=エレーロ氏は「西側諸国の関与拡大が、中国の一帯一路戦略に影響を与える可能性がある」と分析している。

トランプ政権は、中共が支配的な立場を持つレアアースや銅、アルミ、ゲルマニウム、タングステンなどのサプライチェーンを見直し、脱中国依存を進める方針を明確にしている。アフリカはその戦略の要とされ、重要鉱物をめぐる米中の主導権争いは今後さらに激しさを増す見通しだ。

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