中国当局による情報統制は、いまや過激な批判だけでなく、タブーに触れる言及そのものまでも排除の対象となっている。
香港の文化人・梁文道(りょう ぶんどう)氏が配信していた有料番組『八分半』は、中国の主要配信サイトから全面的に削除された。番組内で黎智英(ジミー・ライ)氏の名を口にしたことが理由とみられる。
黎智英氏は、廃刊した香港の民主派新聞、「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創業者であり、国家安全維持法(国安法)違反罪などに問われ、現在も収監中だ。
問題視されたのは7月初旬の回。梁氏は、作家・蔡瀾(さい らん)氏を追悼する内容の中で、自身が同紙で執筆していた当時、社長・董橋(とう きょう)氏やオーナーのジミー・ライ氏の寛容さに感謝したと述べた。ただ一方で、同紙の報道姿勢には批判もしていた。しかし、ライ氏の名前を出したこと自体が検閲対象になったとみられる。

梁文道氏は香港を代表する文化評論家であり、体制批判を避けてきた「温和派」の知識人として知られる。その彼の声すら封じられたことに、市民からは「温和な知識人の声すら許されないのか」「結局、誰の声も容認されないのか」と怒りと絶望が噴き出した。
「慎重に言葉を選んでも生き残れない。香港はもう十数年前の街ではない」
失われた自由を嘆く声は、重く沈んだ空気となって街を覆っている。

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