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恒大集団が上場廃止へ 中国不動産危機と債務問題

2025/08/13
更新: 2025/08/13

中国恒大集団が2025年8月25日に香港市場で上場廃止決定。中国不動産危機の象徴とも言える同社は、巨額負債・資産移転・清算命令・創業者逮捕など、多面的な問題で注目を集めている。傘下にあったかつてアジアのトッププロサッカーチームである広州恒大が廃部になった。

8月12日夜、中国恒大は取引停止が続く中、突如公告を発表し、8月25日午前9時に株式上場を取り消すと明言した。恒大に残ったものは巨額の債務ブラックホールであり、資産の多くは配当を通じて現金化されている。

中国恒大の公告では、同社が香港証券取引所の取引再開指針を満たさず、2025年7月28日までに売買を再開しなかったため、連合取引所上場委員会が上場規則第6.01A(1)条に基づき上場資格の取消を決定したと説明した。

公告は株式上場の最終日を2025年8月22日と示した。連合取引所の規定では、上場企業が18か月以上取引停止となれば上場廃止の対象となる。

中国恒大の最後の取引日は2024年1月29日であり、18か月の期限が迫っていた。

恒大の上場廃止は中国不動産バブル崩壊の節目にあたる。不動産企業の中で恒大は最大規模で影響力も最も大きかった。2017年のピーク時には時価総額が500億ドル(約7兆4千億円)を超えたが、現在の株価はゼロに近い。

恒大は債務超過 創業者は詐欺容疑で逮捕

中国恒大はかつて中国最大の不動産企業であり、世界500大企業の一つであった。創業者の許家印は一時、中国一の富豪となった。

「第一財経」によると、恒大は2009年11月5日に香港で上場し、時価総額は700億香港ドル(約1兆3千億円)を突破し、当時の中国民営不動産企業として最大規模であった。2016年には3700億元(約7兆7千億円)の売上で中国不動産企業首位となり、総資産は1兆元(20兆6千億円)を超えた。

2017年10月、中国恒大の株価は史上最高値となり、時価総額は4千億香港ドル(約7兆4千億円)に達し、世界の不動産開発企業の頂点に立った。

しかし好況は長く続かず、中国当局が2020年に不動産企業への規制を導入すると、恒大は2021年9月から経営危機に陥った。

恒大の2023年中間報告によれば、2023年6月30日時点の総負債は2兆3900億元(約49兆2千億円)で、総資産1兆7400億元(約35兆8千億円)を大きく上回り、債務超過額で中国企業の記録を更新した。

2023年8月、恒大は取引を再開したが株価は急落し、2024年1月29日に取引を停止した時点の株価は0.16香港ドル、時価総額は約21億5200万香港ドル(約40億5千万円)だった。

2023年9月28日、恒大は公告で許家印の違法犯罪容疑による逮捕を公表した。

証券監督管理委員会および上海・深セン取引所の調査では、恒大地産が収益前倒し計上で粉飾決算を行い、2019年に利益を407億2200万元(約8400億円)水増しして当期利益総額の63.31%に達したこと、2020年には512億8900万元(1兆560億円)を水増しして86.88%に達したことが判明した。

恒大地産は2020年・2021年の社債発行時、虚偽の年次報告データを引用して詐欺的発行を行った。

2024年1月29日、香港高等法院は恒大に清算命令を下し、香港株上場企業として史上最大規模の清算案件となった。

債務ブラックホール 500億現金化と資産移転

恒大は巨額の債務を抱える一方、許家印と元妻の丁玉梅は莫大な利益を得ており、その資金の行方に注目している。

2009~21年6月に恒大グループの累計純利益は1733億8800万元(約3兆6千億円)に達した。「金融界」によれば、恒大はほぼ毎年大規模な配当を実施し、その総額は700億元(約1兆4千億円)近くであった。そのうち許家印と関係者が受け取った額は540億元(1兆1千億円)に迫り、許家印個人は2011年以降に499億8100万元(約1兆円)を現金化した。

また、元妻の丁玉梅による資産移転も確認している。2023年8月、恒大は公告で丁玉梅を「同社および関係者と独立した第三者」と表記したが、債務切り離し目的の「技術的離婚」との疑いが浮上している。

胡潤研究院が2019年に発表した「胡潤女性企業家ランキング」では、丁玉梅は170億元の資産で26位に位置していた。

ブルームバーグは、丁玉梅が恒大破綻後も英国ロンドンで高級マンションを大量購入していたと報じた。2022年9月、彼女はロンドン・テムズ川沿いの高級住宅地プロジェクトで33戸を取得し、総額は4980万ポンド(約996億円)に達した。これらは英領ヴァージン諸島の5社名義で保有していた。この時点で恒大はすでに破綻の兆候を示していた。

資料によれば、彼女は現在540万ポンド(約11億円)のマンションに、2人の子と2人の孫と住んでいる。

恒大に対する清算命令と訴訟

2024年1月、香港高等法院は恒大に清算命令を下し、清算人を任命し、許家印や丁玉梅らに対し、約468億香港ドルの配当金や報酬の返還を求めている。3月には同法院は、許家印、丁玉梅、元CEO夏海鈞、関連会社7社を提訴した。

広州恒大プロサッカーチーム

広州恒大プロサッカーチーム(広州FC)は、2010年に恒大集団が「広州足球倶楽部」を買収し誕生した。豊富な資金力を活かし、世界的監督や有力外国人選手を獲得し、中国スーパーリーグで7連覇、AFCチャンピオンズリーグで2度の優勝を成し遂げるなど、中国サッカー史上に輝かしい成功を築いた。また、自前の「恒大サッカースクール」を設立し、レアル・マドリードと協力してユース育成にも力を注いだ。

しかし、親会社の恒大集団が経営危機に陥り、クラブも資金難と成績不振に直面した。2022年には1部リーグから降格し、2023年からは2部に所属したが、2025年1月にプロリーグ撤退を決定し、かつてアジア屈指の強豪チームは廃部に至った。

李清源