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【十字路口】浜崎あゆみ コンサート中止を逆手に 中共の思惑外れる

2025/12/03
更新: 2025/12/03

浜崎あゆみの上海コンサートが中国当局の影響で急遽中止。それでも彼女は現地で無観客ライブを敢行し、プロとしての姿勢が各国メディアで絶賛された。中止の背景やSNSの反響、日中関係への波紋を詳しく分析する。

中国共産党(中共)と日本の「台湾有事」をめぐる攻防は拡大を続け、いまやその余波は芸能界にも及んでいる。

上海コンサート中止の背景と影響

日本の歌手・大槻真希は先日、上海での公演中に突然ステージの電源を切られ、理由も分からないまま退場させられた。続いて、日本のトップ歌手である浜崎あゆみの上海コンサートも、開演前日に「不可抗力による要因」を理由に中止が通告され、世界中のファンを驚かせた。この「不可抗力」という言葉が、実際には中共政府の政治的意向によるものであることは、誰もが承知している。

しかし中共当局は、行動には出ても責任は取らない。有志の記者が中共外交部に「なぜ浜崎あゆみのコンサートが中止され、大槻真希の公演が中断されたのか」と質問すると、外交部は「主催者に問い合わせるように」と答えるのみであった。中共の対応にはいつもこうした特徴がある。人前では文明的な振る舞いを装いながら、裏では強権的な手法を平然と用いるのである。

浜崎あゆみは中止を知らされた当日、大きな驚きを覚えたという。彼女はインスタグラムに投稿し、ファンへ「心配しないで」とメッセージを送り、中国人と日本人のスタッフと一緒に撮影した写真を掲載した。そして「エンターテイメントは人と人をつなぐ架け橋であるべきで、自分はその架け橋を作る側でありたいと、今も強く信じています」と綴った。

浜崎あゆみの対応と無観客ライブ

その後、浜崎あゆみは世界を驚かせる形で「華麗な逆転劇」を見せた。観客が一人もいない会場で、彼女は全身全霊で本番同様のステージを披露し、その様子を撮影したうえで、「無観客ライブ」の写真を数枚インスタグラムに投稿した。写真には客席がすべて空席である様子がはっきりと写っていたが、ステージ上の浜崎とスタッフは、本番と同じ衣装とメイクで臨んでいた。

浜崎はインスタグラムで次のように記した。
「1万4千の空席が並んでいたけれど、世界中のTA(Team Ayu=浜崎あゆみのファンの呼称)からあふれるほどの愛を感じた。これは私にとって何よりも忘れられない公演の一つです。日中両国から集まった200人のスタッフ、バンドメンバー、ダンサーの皆さんに感謝します。このステージを実現させてくれて、心からありがとう……」

この出来事は瞬く間に世界各国のメディアで報じられ、彼女の高いプロ意識と表現者としての姿勢に称賛の声が相次いだ。香港の俳優アンソニー・ウォン(黄秋生)も、自身のフェイスブックで「真のアーティストだ」と評価した。

中共側メディア・情報操作の実態

一方で、彼女への評価が高まる中、中共系メディア「澎湃新聞」は突然、一つの報道を出した。「浜崎の『無観客ライブ』は実際にはリハーサルであり、『一人コンサート』という話は虚偽だ」と主張したのである。ある「頼宗隆」という人物が「浜崎あゆみの撮影チームの一員」を名乗り、「自分がリハーサル中に撮った写真をもとにでっち上げた偽情報が拡散した」と語ったという。

だがこの説明はすぐに、中国国内外のネットユーザー、特に中国のファンから否定と皮肉の声を浴びた。「浜崎あゆみがあなたの盗撮写真を使って投稿するわけがない」「リハーサルでわざわざ本番用メイクをするのか」といったコメントが並んだのである。

実際には、公演中止が発表された当日の夜、会場の外で浜崎あゆみの歌声を聞いたファンもいた。当初それはリハーサルだと受け止められていたが、後に「あゆみが本番通りのライブをすべて歌い上げ、その映像を記録して後日ファンと共有するためだった」と判明した。今回の公演には約200人のスタッフが関わり、ステージ設営だけで5日を要していたという。

その後、浜崎あゆみ本人もインスタグラムのストーリーでこの事実を認めた。
「昨日、公演中止を発表した後、観客のいない状態で最初の曲からアンコールまで完全に演奏し、その後会場を後にしました。本来ならお会いできたはずの1万4千人のファンの皆さんに思いを込め、出演者・全スタッフ一同が本公演と全く同じ気持ちでこのステージを完成させました」

つまり、中共が浜崎あゆみの公演を政治的圧力によって中止に追い込んだものの、あゆみは「無観客ライブ」という形でステージを完遂し、その姿勢が国内外で広く称賛されたという構図である。これにより中共は面目を失い、「無観客ライブはフェイクだ」との報道を出して事態の収拾を図ろうとしたが、再び批判を受け嘲笑を招く結果となった。

要するに、中共は一つのうそで別のうそを覆い隠そうとしたが、そのたびに矛盾が露呈し、結果として自ら信頼を傷つけたのである。世界の政治情勢を見渡しても、ここまで自己矛盾を重ねる政権は多くない。

この一連の出来事について、いくつかの観点から考察したい

第一に、日本人の「職人精神」の体現である。浜崎あゆみは観客が一人もいない状況でも、最後までステージをやり遂げた。その姿勢には、プロとしての矜持(きょうじ・自分の信念や誇り、プライドを大切にし、節度や自制心を持って行動すること )と責任感、そしてファンや観客への愛情と敬意が読み取れる。

第二に、この出来事は、日本人、あるいは健全な社会を支える人々が「約束を守り、言ったことを実行する」存在であることを示している。これは、中共の体質と鮮明な対照をなしている。中共は「口先だけ」や「虚偽の積み重ね」で知られている。仮に王毅中共外交部部長が「コンサートを開く」と公言したとしても、本番30分前でさえ、その約束を額面通りに受け取る者はあまりいないだろう。

第三に、浜崎あゆみはトップスターとして、中共の狙いを十分に見抜いていたとみられる。突然の中止にもかかわらず、彼女は中共への直接的な非難や感情的な発言を控え、英語と中国語で慎重にメッセージを発信した。中共が仕掛ける「日中対立」や「相互憎悪」の構図に巻き込まれないよう、冷静かつ戦略的に対応したのである。

彼女の投稿には常に「世界中のファンへの思い」が込められており、その国際的な視野は、中共が国内向けに煽動する民族憎悪の言説を大きく超えるものであった。これは他の芸能人たちにとっても、学ぶべき点が多い姿勢である。

浜崎あゆみは台湾メディアの報道もストーリー機能を通じて多数シェアしたが、その態度はきわめて巧みであった。一方で政治的な対立の図式には安易に乗らず、他方で中共当局の対応に対する違和感と、静かな抗議の意思を穏やかに示していた。これは、高い知性と冷静な感情コントロールによって実現した「華麗な逆転劇」であると言える。

最後に、この事件は中共の陰湿さと責任回避体質を改めて浮き彫りにした。まず日本の首相に対する個人的な憎悪を、中国全体の対日闘争へとすり替え、さらに日本のアーティストを標的にすることで、日本政府との不和を煽ろうとしたのである。

だが、立て続けにうその説明を積み上げた結果、それらは自らによって否定され、最終的には信頼失墜という形で跳ね返ってきた。

結論として、中共は浜崎あゆみという大スターを「日本への見せしめ」にしようとしたが、その目論見は外れた。浜崎あゆみの冷静かつ創造的な対応によって、日本への好感と尊敬は世界で一層高まり、中共への不信と批判はさらに強まることになったのである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
唐浩
台湾の大手財経誌の研究員兼上級記者を経て、米国でテレビニュース番組プロデューサー、新聞社編集長などを歴任。現在は自身の動画番組「世界十字路口」「唐浩視界」で中国を含む国際時事を解説する。米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、台湾の政経最前線などにも評論家として出演。古詩や唐詩を主に扱う詩人でもあり、詩集「唐浩詩集」を出版した。旅行が好きで、日本の京都や奈良も訪れる。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。