米政府効率化省のトップ、イーロン・マスク氏は、政府職員に改善を求め、さもなければ辞職しろと要求し、世の大きな注目を集めた。トランプ政権は、200万人以上の職員に、先週彼らが行った5つの業績を報告するよう求めるメールを送った。
これは、ある意味「生存証明」テストだとも言われ、単に業績報告を求める軽い要求だった。トランプ政権は、給与を受け取っている大量の職員がオフィスに来るどころか、メールすら見ていないのではないかと疑っている。今、彼らは「何が何だか」の混乱状態を突き止めようとしている。
このような行動は、民間企業、特に労働力を節約しなければならない中小企業では、まさに予想されたことである。
しかし、特に大企業や金融業界はどうだろうか? 彼らもまた、正当な理由なく無駄に膨れ上がり、非常識な官僚主義に縛られ、人事部の重役に圧迫され、企業の最高経営層を指す「C-suite(シースイート)」の管理職が頭でっかちになり、働くふりをする意欲の代償として高給を期待する資格のない無能者でいっぱいになっているのではないか。
専門的な経営職の数は増え続けている一方で、労働参加率は低下し続けている状態だ。ここに深刻な歪みが存在する。
企業のリストラが、経営層にのみ影響を与え、顧客と接する職の人々には、ほとんど影響がないことにお気づきだろうか。スターバックスはさらに1100人を解雇するが、もちろんそれは経営層からのみで、販売部門からではない。過去数年間、すべての大企業のリストラで同じことが言える。世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」にリストアップされている企業は、みんな膨張問題を抱えている。それは誰もが知っていることだ。
経済的現実は変化を迫っていたが、それはとっくに過ぎたことだ。
確かに、民間部門のこうした肥大化は、政府とは異なり、強制的に収入を搾取するわけではないため、公共部門の肥大化とは性質が異なる。とはいえ、これは依然としてひどい市場の歪みの結果であり、経済的な現実から見て根底にあるべきしっかりした正当性はない。
なぜこのようなことになったのか?金融政策という、人々の目を曇らせる2つの言葉に関連した、少々退屈な説明をさせてほしい。実際のところ、この説明は非常に重要である。要するに、2000年以降、特に2008年以降、連邦準備制度理事会(FRB)は金利をゼロ以下に下げ、その状態を維持した。
すべての歪みは、借りたお金をできるだけ安く、保存された資本よりも安くすることで引き起こされた。ビジネスが「稼いだ分だけ支払う」方式で運営するのは愚かになった。そんなことをするのは愚か者だけだ。企業部門は考えうるあらゆる問題や願望に、派手な履歴書を持った人間を放り込むことを常習としたため、高い労働コストで膨張していった。
財務分野が急増し、安いお金で利用可能になったことで、豪華な資金提供には終わりがないように見えた。それにより、膨れ上がった給与の支出を正当化するのが簡単になった。マーケティングが必要ならば? 新しいマーケティングチームのために20人を雇う。分析が必要ならば? 新しい分析チームのために20人を雇う。ブランド強化が必要ならば? 新しいデザインチームのために20人を雇う。という具合に、次々に人が雇われた。新しい経営用語が出るたびに、新しい部門やセクターが創設され、派手な履歴書と良い人脈を持つ人々が詰め込まれた。
重要な転換点は2008年、その量的緩和だった。その時の大きな懸念は、金融緩和がインフレを引き起こすことだった。しかし、インフレは起こらず、新たに印刷したお金のほとんどが連邦準備制度(FRB)の金庫に閉じ込められると、懸念はすぐに消えた。人々は、FRBのバーナンキ議長が奇妙なマジックを披露し、すべてがうまくいくと考えた。
実際に起こっていたことは、インフレと同じくらい有害だったが、異なる形を取っていた。人工的に低い金利が、資本の注目と方向を、短期プロジェクトや消費者向けビジネスから、大企業や金融における巨額の設備投資へとシフトしていった。
なぜだろう? 金利の本質を考えてみよう。金利とは、お金の貸し借りにつけられる価格である。資源が節約され(消費が先送りされ)、より多くのクレジットが利用可能になればなるほど、金利は低くなる。貸せるものが少なければ少ないほど、借り手が支払う金利は高くなる。しかし、すべてのローン契約が同じ満期日に運用されるわけではない。短期金利と長期金利がある。通常のイールド・カーブ「Yield Curve、利回り曲線とは、異なる残存期間(満期までの期間)を持つ債券の利回り(投資収益率)をグラフ化したもの」では、不確実性とリスクが高いため、金利は右肩上がりとなる。
金利は、価格と同じように歪みに敏感だ。もし今日、地元の店で卵が1ダース2ドルに急落したとしたら、その情報はすぐに広まり、数時間で売り切れるだろう。もしすべての卵に価格上限が2ドルだったら、広範囲に不足が発生するだろう。逆に、もし価格下限が20ドルだった場合、余剰が生まれ、腐った卵をどこでも見ることになる。だからこそ、市場ベースの価格設定が重要なのだ。
これは金利にも当てはまる。人為的に低く設定された金利は、特に長期にわたって拡大を目指す資本財産業において、借り手への補助金となる。FRBの介入により低く設定された金利は、貸し出すための余剰貯蓄がある経済の様相を呈する。実際には、そのような貯蓄は存在しない。中央銀行によって低く抑えられた金利は、F. A. ハイエク(Friedrich August von Hayek, 1899-1992は、オーストリア出身の経済学者・哲学者であり、自由市場経済や古典的自由主義を擁護したことで知られる)が巧みに「強制貯蓄」と呼んだものを生み出す。
2008年の危機からCOVID-19の危機を経て、大企業はかつてないほど拡大し、給与を増加させ、まったく新しい仕事の文化を作り出した。いや、むしろ、それは仕事をしない文化を作り出した。
ほとんど何も求められない仕事が実際に存在していることを扱った本が登場し始めた。それらの仕事では、ルールを守ること以外はほとんど求められなかった。役割の増加は制御が効かないように見え、他のチームを監視するために新たにチームが作られ、そのチームもまた他のチームを監視しているという状況が続いた。
この不条理は、2020年のCOVID-19パンデミックによるロックダウンで世界に明らかにされた。その結果、専門職の多くが自宅に送られ、同じ給料をもらいながら、もはや働くふりをすることさえなくなった。これが1年、2年、3年、4年と続き、すべては呼吸器感染から安全を守るためという名目で行われた。低金利から生まれた膨張は徐々に心気症((しんきしょう、Hypochondriasis、実際には重篤な病気にかかっていないにもかかわらず、自分が何らかの重大な病気にかかっているのではないかと過度に心配する精神疾患)へと変化し、専門職階級のあらゆる分野に広がった。
転換点は、マスク氏がTwitter(後にXと改名)を買収したときに訪れた。彼は、そこにいた多くの従業員が遅刻してきて、ラテバーでぶらぶらし、長い昼休みを取り、ジムで運動し、町に繰り出して高額な給料で夜遊びをする様子を自慢するオンライン動画を見ていた。これはすべてのどんな経営者やオーナーにとっても深刻で不快であるべきだが、何も行動が取られていなかった。
新しい上司として現れた彼は、まず人件費を追求し、結局5人中4人を解雇した。アメリカの企業界は一斉に、どうなることかと息をのんだ。多くの人がアプリは改善されるだろうと直感的に予測していた。しかし、証拠が示されるのを待った。予想通り、数週間でその証拠が現れた。新しくブランド化されたサービスは、以前よりも優れていたからだ。
当時、多くの人は、このリアルタイム実験の影響を過小評価していた。まるで企業部門全体に爆弾が爆発したかのようだった。その瞬間、終わりのない人件費の増額の好景気は終わったと誰もが悟った。解雇された官僚の多くが気づいているように、今日では6桁の給料をもらいながら実際には働かない職を見つけるのがはるかに困難になってしまった。
資本市場を持つ現代経済における生産構造は、時間的選好、生産計画、そして精巧な財務指標の繊細かつ見事なバランスであり、中央銀行の介入によって簡単に混乱する可能性がある。
これらの介入は約20年間続き、貴重な資源の使い方を劇的に歪め、ホワイトカラー層を膨張させる一方で、他のすべてを犠牲にした。これを「金融化」と呼ぶことがあり、これは非常に現実的なことだった。
しかし最終的には、現実はこれらの介入に関係なく再び姿を現す傾向がある。その再登場がようやく現れ始めた。民間部門もまた、管理構造や無駄な従業員で異常に膨らんでいる。今、マスク氏が連邦政府レベルで行っているように、大掃除が必要だ。それは州政府や地方政府にも及んでいる。
民間部門もこの淘汰から免れることはできない。人工知能はその速度を加速させるだろうが、それはどのみち起こることだった。これからの数年間は、何が現実で、何がFRBが作り出した鏡の回廊の産物に過ぎないかを思い起こさせる大きな機会となるだろう。
もし素晴らしいラテを作り、顧客に笑顔を向けることができるなら、あなたは安定している。もし企業のオフィスや自宅に座って、ただ時間をつぶしながら高給を得ているだけなら、急激な変化に直面するかもしれない。それも多分すぐに来るだろう。
この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
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