中国を訪問した岩屋毅外相は25日、中国(中国共産党)軍の活動が活発化していることに対し、「深刻な懸念」を改めて表明した。岩屋氏は、中共の王毅外相に対し、沖縄県・与那国島南方の排他的経済水域(EEZ)内で中共が設置したとみられる海上ブイが新たに確認されたことを伝え、即時撤去を求めた。また、台湾の最近の軍事情勢を含む動向について、日本が注視していることを強調した。
中共政権は台湾を自国領土の一部と主張し、武力行使による支配の可能性を排除していない。しかし、中国は歴史上一度も台湾を統治したことがない。台湾政府によれば、今月初めに中共軍が台湾海峡付近で数年来最大規模の海上軍事演習を実施。この演習は日本南部の島嶼付近から南シナ海に至る広範囲に及んだという。
東シナ海や尖閣諸島の情勢についての懸念
岩屋氏は尖閣諸島周辺を含む東シナ海の情勢や、中共軍の活動の活発化、一方的な資源開発についても深刻な懸念を伝えた。これに加え、台湾海峡の緊張が日本の安全保障に与える影響についても王毅外相に対し問題提起を行った。
岩屋毅氏「台湾は無事でなければならない」
岩屋毅氏は訪中前に東京で中共の国営メディア「鳳凰衛視」のインタビューを受けた。その中で「台湾有事は日本有事」という国内の言説について問われた際、台湾は日本にとって重要で縁深い友邦であると述べた。
岩屋氏は「台湾有事」という表現を好まないとし、「台湾は無事でなければならない」と語った。「有事」とは通常、武力による現状変更を指すが、そうした事態は「あってはならない」と強調した。また、日台関係については非公式かつ実務的なものであると改めて強調した。
日中外相会談の成果
岩屋氏と王毅氏の会談および昼食を兼ねた会談は、3時間にわたり行われた。双方は王毅氏の早期訪日を実現し、「日中ハイレベル経済対話」を開催する方針で一致した。また、日本側は不当に拘束されている邦人の解放を中共側に求めた。
岩屋氏は、邦人拘束事案や中共の「反スパイ法」の不透明性が、日本人の中国渡航をためらわせる要因になっていることを指摘し、透明性の向上と拘束されている邦人の早期釈放を要請した。
また、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、両国は中国が全面停止している日本産水産物輸入の再開に向けた合意を確認。岩屋氏は同日、2019年以来となる閣僚級の「日中ハイレベル人的・文化交流対話」にも出席し、中国人観光客向けの日本入国ビザ発給要件を緩和する方針を示した。
岩屋氏の訪中は、10月の外相就任後初めてのものとなる。日本の外相が中国を訪問するのは、2023年4月の林芳正氏以来である。
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