海外華人圏に流れるSNS投稿のなかには「どこそこで火災、給料をもらえなかった職員、あるいは労働者が火を付けたんだ」とする内容のものが本当に多い。
火災になった場所と日時をもとに中国のネットで調べると、往々にして「火災があった確証はとれるが発火原因については言及されていない」か、「火災があったこと自体が検索にひっかからない」の2通りの結果になる。
中国のネットでは厳しい検閲が敷かれているため、「未払い給料をめぐって放火」などと中国メディアやSNSにそのような発言をすればバンされる可能性は極めて大きい。
また社会不安を引き起こしかねない事件、例えそれが災害や事故であっても、事件自体の存在を隠蔽するケースは過去にも無数にあったため、中国のネットにひっかからないからといって、「未発生」という結論にはならないのだ。
ということで、真偽の確認はできなくても、あまりに多い類似投稿自体から、中国国内の状況が非常に深刻であることを語っている。
2025年の中国の春節(旧正月)は1月28日~2月4日となっている。
「せめて旧正月だけでもいいから、その時ぐらいは故郷に戻って一家団らんする」ことは中国国内に限らず、世界中の華人にとっての心からの願いであり、また「夢」である。
そのような事情もあり、旧正月を控えるなか、「もうすぐ年越しだ、給料払え!」とする労働者の怒りは募るばかりだ。
SNSに投稿したら削除されるし、町に出て抗議すれば現地警察によっても弾圧され、逮捕される。それでもなお、「給料払え!」をめぐる抗議活動は、毎日のように中国で繰り広げられる「日常」となっている。
働いた分の給料をもらうという世界共通の基本的人権すらない、追い詰められた労働者たちは、どこへ向かうのか?
その結果が、こうした「どこそこで火災、給料をもらえなかった労働者が火を付けたんだ」という結果、あるいは情報封鎖された中での動画転載者による「そうであったら良い」という望みを込められた「補足」になったのかもしれない。
以下に数例を取り上げるが、これ以外にも同様の投稿が大量に拡散されており、コメント欄には支持の声が多く寄せられている。
「よくやった!」「これぞ正しい反抗姿勢」
「こうでもしないと、給料払わない企業を震え上がらせることはできないし、政府も重視しない」
このほか、「企業だって本当は給料を払いたいんだ、でもお金がないんだ!」とする嘆き、「中国をこの在りさまにしたのは政府の責任、怒りがあるなら政府に立ち向かえ!」とする呼びかけの声も少なくない
浙江省寧波市
12月8日朝、浙江省寧波市にある生地染め工場で火災。「給料をカットされ、支払ってもらえない工場労働者が放火した」という。
天津市
12月15日午後、天津市にある建築現場で火災。「給料の支払いを求め続けた農民の出稼ぎ労働者が火をつけた」という。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。