アメリカ次期大統領のトランプ氏は、12月8日に、不法移民全員を4年以内に追放し、アメリカで生まれた子供に親の移民資格に関わらず市民権を自動的に与える制度(出生による市民権)を廃止する計画を明らかにした。
NBCニュースのインタビューで、トランプ氏は、「やらなければならないと思う。これ(強制送還)は非常に難しいことだが、ルールや規制、法律が必要だ。彼らは不法入国した」と述べた。まず犯罪歴のある移民から追放を開始し、その後段階的に対象を広げる方針を示した。
家族全員で送還する方針
NBCの「ミート・ザ・プレス」に出演したトランプ氏は、不法移民の家族の一部が合法的な移民資格を持つ場合でも、家族を分離することを避けるため、全員を一緒に送還する方針を示した。
同氏は「家族を分離させるつもりはない。家族全員を元の国に送還することが、人道的な対応だ」と説明した。
また、「家族が合法的な在留資格を持つ場合、不法移民である家族が出国するか、家族全員で出国するかを選択できる」とした。
「ドリーマー」への配慮
一方で、幼少期にアメリカに不法に連れて来られ、現在は成人している「ドリーマー」に対しては、アメリカに留まることができるようにするための法案を可決するように民主党と協力する意向を示した。
トランプ氏は「彼らの多くは成人しており、自国の言語を話せない者もいる。適切な対応が必要だ」と述べた。
不法移民追放のコスト
米国土安全保障省は、2022年1月時点で約1100万人の移民が不法滞在していると推計している。現在の不法移民のレベルはさらに高くなる可能性がある。
トランプ氏は選挙期間中、不法移民を大規模に国外追放すると約束した。 1月20日に就任すると、不法移民を国家非常事態と宣言し、不法移民対策に連邦各省のリソースを広範囲に投入する可能性があると予想される。
トランプ氏が国境管理責任者に指名したトム・ホーマン氏とスティーブン・ミラー次席補佐官はフォックスニュースのインタビューで、議会は移民取締りのための資金を大幅に増額すべきだと述べた。
移民推進派の米国移民評議会は、すべての不法移民を10年間かけて国外追放した場合、年間880億ドル(約13兆2000億円)の費用がかかると見積もっている。
出生公民権廃止計画の法的課題
トランプ次期大統領が公約に掲げる出生地主義による市民権付与制度の廃止には法的な争いが予想される。この権利は、アメリカ憲法第14修正条項に基づき、両親の移民資格に関わらず、アメリカ国内で生まれたすべての人に市民権を与えるものだ。
トランプ氏はインタビューで、行政命令で出生公民権廃止を目指す意向を示したが、具体的な手段には言及しなかった。一方で、憲法改正が必要になる場合、最終的には国民投票を通じて決定を求める可能性があると述べた。
第14修正条項は、1898年のアメリカ最高裁判所の判例によって支持されている。この修正条項には、「アメリカ合衆国内で生まれ、かつその管轄下にあるすべての人は、合衆国の市民である」と明記されている。憲法改正を実現するためには、議会の承認に加え、全米の四分の三の州の承認が必要である。
インタビューの中で、トランプ氏は今回の大統領選挙の結果に非常に励まされたと語った。「これまで以上に多くの人々が私を支持してくれている。初当選の際よりも支持が広がった」とし、「総投票数でも大きな差で勝利し、非常に誇りに思う」と述べた。
出生公民権の廃止をめぐるトランプ氏の発言は、法的、政治的な議論を巻き起こしており、今後の移民政策の行方に大きな影響を与えることが予想される。
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