【動画あり】 「予告なし」のダム放流 大洪水で死者数3桁か 当局は隠蔽=中国・遼寧省 

2024/08/30
更新: 2024/08/30

18日、遼寧省葫芦島市を大洪水が襲来した。水深は数メートルあったともいわれており、街はまるごと水に飲み込まれた。ほとんどの地域で停電が発生し、ネット回線も断たれ、多くの家屋では水が屋根まで達した。

1週間以上経った今も、一部地域では以前として水と電気が断たれている。

多くの被災民がNTD新唐人テレビの取材に対し「道路が寸断されて救援が届かない状況にもかかわらず、政府は情報を隠ぺいしている」と口をそろえて言う。

大洪水をもたらした原因について、現地政府や官製メディアは揃って「豪雨のせい」と主張している。だが、被災民は豪雨で街が飲み込まれることはない、大洪水の原因は複数のダムによる突然の一斉放水であり、天災よりも人禍だと信じている。

(大洪水に見舞われた中国遼寧省葫芦島市、2024年8月20日)

 

当局と被災者の声の不一致

現地当局は「大雨の影響でダム水位が限界レベルに近づいたため、19日に放流を開始し、以後7日間に渡り放流が行われる予定」と公表しているが、「ダム放流は本当は公表された放流開始日の前日(18日)から行われていた、予告なしの放流だった」と多くの被災民が訴えている。

「被害状況」についても、当局と民間の主張に不一致が生じている。当局は「11人が死亡、14人が行方不明」と主張しているのに対し、地元住民は「当局が死者数を過少評価していると糾弾し、少なくとも千人以上が死亡している、一部の村は全滅、誰一人生き残れなかった」とNTDに明かしている。

生き残った被災民は「水の流れがあまりに速すぎて、何もかもが飲み込まれてしまった」

「夜中2時ごろ、家の中に水が浸入し、外に出ようにも辺り一帯がすべて水だった。わずか十数分で水は脇の下まで上がってきた」

「増水速度が速く、また水の流れも非常に急であったため、避難が間に合わなかった」などと洪水襲来時の悲惨な状況について振り返った。

(大洪水に見舞われた中国遼寧省葫芦島市、2024年8月20日)

 

阻まれた救援

現在、中国各地の多くの民間救助隊が車に物資を積んで被災地を目指しているが、甚大な被害を受けた多くの村への道路が寸断されているため、民間救援隊は物資を背負い数十キロの道のりを歩いて被災地入りをしている。

被災地で活動するボランティアによれば、「そもそも今年は収穫がほとんどなかった。災害後は家まで失ってしまった。被災地では何もかもが足りない、それでも一番必要なのは食料だ」と訴える。

しかし、そんな被災地からの「緊急SOS」が中国のネット上で検閲されている。災害ニュースは中国のSNSで意図的に沈静化されており、「ダム放流」の問題に関して議論することが禁じられている

一部の民間救援隊やボランティアは、この事態に「(被災地が)より多くの支援が得られるよう、ここでの状況を外部に知らせるべきだ」と反発している。

情報発信がダメならと、直接被災地に物資を送ろうとするルートも当局から厳しく制限されている。「支援物資はいったん政府に預けるよう」求められてもなお、一部ボランティアは「政府には渡したくない、直接被災民の手に届けたい」と思いを語る。

(中国遼寧省葫芦島市、被災地の状況。2024年8月)

 

真相

NTD新唐人テレビの取材に応じた、葫蘆島市に住む楊さんは次のように明かす。

「現地の被災状況は本当にひどい。一部の村はまるごと消えた。ある村では5人しか生き残れなかった。しかし、災害状況を報道することは許されていない。当局は死者10人と公表しているが、地元の葬儀場には100人以上が遺体を引き取りに行っていると聞いた」

「一部地域(「綏中県六股河」)では500~600体の遺体が出ているが、遺体の引き取りを許されず、一斉に土に埋められている」

「知り合いの村でも洪水で1人溺死したが、病死したということにされている」

「政府が隠蔽しようとしている真相は現場にある。真相を知りたければ現地に行けばいい。被災地があなたにその答えを与えてくれる」

別の被災民によると「地元の3、4つの村で数十人しか生き残れなかった。遺体がうちの村まで流れてきているが、いまだに引き取り手もいない」という。

(大洪水に見舞われた中国遼寧省葫芦島市、2024年8月)

 

中国の大洪水は「天災か、人禍か」 毎年繰り返される筋書き
 

「豪雨は天災だ。しかし、雨だけでは街を飲み込むことはできない。毎年中国各地で繰り返される大洪水はすべて人的災害だ」とネット上は罵声であふれている。

「普段からダムが決壊しないよう定期的にダムの水を減らすなどの調整をしなければならないにも関わらず、現地の役人は、ダムに貯め込んだ水を利用して金儲けをしたいから、そうはしない。いざ雨が降り続いて限界レベルに近づいたら放流を行う。中国で数十年も繰り返されてきた大洪水の原因はほとんどこれだ」と多くの専門家も指摘する。

毎年大勢の人たちが、毎回同じ筋書きで、外国にはない中国ならではの人禍によって命を落としている。流域住民はいつ来るかわからない洪水に怯えながら暮らし、いざ大洪水が来ても政府による救援はほとんど望めず、あとは運任せだ。

これが今の中国の現実だ。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!