社会問題 自殺後に「瞑婚」させられたインフルエンサー

死後に遺体を売られる「瞑婚」中国事情

2024/08/24
更新: 2024/08/24

冥婚(めいこん)とは、生きている者と死者、あるいは死者同士が結婚すること。中華圏をはじめとする一部の国にかつて存在した文化であるが、一部の国や地域では、未だにこの風習が残っている。

 

自殺後に「瞑婚」させられたインフルエンサー「果任兒」さん

生前は中国版TikTok「抖音(ドウイン)」で1万9千のフォロワーを抱えたインフルエンサー果任兒さん(25歳女性、中国山西省)。自撮りや幼い子どもの世話をする動画をSNSに投稿してきた彼女は、8月の初めに自殺した。

果任兒さんが生前投稿した動画の中には、自らの身分証を手に持ち、「夫の家族に騙された」など実名で訴えるものもあった。

「義父母(夫の両親)にいじめられ、侮辱され、家から追い出された」と語る時もあった。

果任兒さんの兄によると、「8月9日、彼女は子どもに会いに行ったが、義父母によって拒絶されたため、義父母の前で薬を飲んで自殺を図った。病院に搬送されたが、10日に死亡した」という。

果任兒さんの死後、彼女とそっくりの女性の写真が「瞑婚」の儀式で掲げられたことを示すSNSの投稿が話題になった。

SNSに投稿された複数の動画の中では、赤いブースに設置されたLEDスクリーンに、肩を並べてほほ笑む男女の写真があった。スクリーンに表示されている文字には「新婦:任さん、新郎:XX」と書かれており、よく見ると、新婦の写真は「果任兒」さんと実に瓜二つだ。

ネットに流出した関係者のSNSチャットのスクリーンショット画像の中には、「果任兒さんが死んだあと、瞑婚をさせられた」「新郎の方は死んで2年は経つ」という会話が交わされていた。

(インフルエンサー「果任兒」さんの生前のSNS投稿と「瞑婚」儀式。)

 

今も続く風習

「瞑婚」の風習が今も続いている、中国の「陝北地区(陝西省北部)」では、未婚の若い女性は死後、実家に埋葬することができないため、亡くなった娘が墓地に入れるよう、その遺体を売って「瞑婚」させる。いっぽう、未婚の男性も死後、先祖代々の墓に埋葬することができないため、その家族もなんとかして「瞑婚」させようとするのだ。

そのような風習があるため、中国では近年、一部地方では「瞑婚」が産業化されており、遺体を盗んで転売したり、遺体を手に入れるための殺人事件まで起きている。

2021年、インフルエンサーの「羅小貓貓子」はライブ放送中に農薬をを飲んで自殺した。死後、彼女の遺灰は葬儀関係者によってすり替えられ、「瞑婚」用に売られようとしていたが、事件は発覚した。

同年2月、女性2人を殺して、その遺体を盗んで「瞑婚」用に売った男、馬崇華の死刑が執行された。

中国で裁判所が下した判決文を公開するオンライン・データベース「中国裁判文書網」には、2009年~2015年の間、陝西省、山西省、甘粛省、河北省、江蘇省、山東省、河南省、黒竜江省の8省で23件の「瞑婚」関連事件の記録が残されている。

これらの案件のうち、故意の殺人(未遂)1件、恐喝1件、詐欺1件を除けば、残りの20件はいずれも遺体窃盗事件だ。その発生地はたいてい「瞑婚」の風習があり、「瞑婚」用の遺体は3000元(約6万円)~数万元(数十万円)の値段で取引されていた。

 

(江蘇省での「瞑婚」事例)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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