多数の株主や従業員が企業のESG(環境、社会、ガバナンス)支援から疎外されている=豪シンクタンク

2024/07/22
更新: 2024/07/23

企業の社会的活動(CSR活動)への取り組みが活発化する中、海外のシンクタンクが実施した最新の調査では、株主や従業員、顧客の多くが企業の社会的・政治的活動に賛成していないことが分かった。

オーストラリア民間シンクタンク・独立研究センター(CIS)は、企業のアドボカシー(支持、擁護)とアクティビズム(社会的・政治的変化をもたらすために特定の思想に基づいて意図的な行動をすること)に対するステークホルダー(利害関係者)の意見に焦点を当てた報告書を発表した。

オーストラリア人2500人(消費者1千人、従業員1千人、株主500人)を対象にしたこの調査では、多数の利害関係者が企業の社会的・政治的活動について意識していないことが分かった。

詳細は、従業員の58%、株主の66%、消費者の44%だ。

政治的大義についてはさらに高い数字で、従業員の83%、株主の74%、消費者の65%が関与していないと回答した。

企業の社会的活動主義はステークホルダーと不調和

CIS発表の報告書の共著者であるエミリー・ダイ氏によれば、従業員の60%以上、株主の41%が、政治的大義に対する企業の支援は自身の個人的信念と一致しないと感じているという。

「消費者のうち60%が、企業の政治的主張が自分の意見と一致することはほとんどない、あるいはまったくないと答えている」と述べた。

実際、従業員の6%が、雇用主の活動が原因で仕事を辞めたことがあると答えている。

ダイ氏は、「この結果は、これらのアクティビズムの取り組みが、草の根から推進される大衆運動とはほど遠く、ほとんどの株主や従業員からは、ほとんど無視されているとまでは言わないまでも、周辺的なものとみなされていることを示唆した」と述べた。

ダイ氏によれば、Z世代(1997年から2012年生まれ)の回答者の3分の2は、企業が良いサービスと高いリターンの提供に集中し、公的議論に関与しないことを望んでいるという。

また、企業が社会活動に取り組む理由を尋ねたところ、回答者の24%が「利益を増やすため」と考えており、次いで「世論の反発を恐れるため」(22%)、「国民や政治家の支持を得るため」(20%)となった。

「このデータは、企業アクティビズムが少数の声高な人々にアピールする一方で、消費者を含むより広範な利害関係者を疎外するリスクがあることを示唆している」とダイ氏は言う。

もう一人の共著者であるサイモン・コーワン氏は、企業活動とステークホルダーの価値観の間には「決定的なズレ」があると指摘した。

「この報告書は、議論を呼ぶ社会問題について公の立場を取るよう強要されていると感じた管理者に勇気を与え、そうするように説得された人々に立ち止まって考えさせるはずだ」と述べている。

CISの報告書は、オーストラリアだけでなく世界中の企業が政治的、環境的、社会的問題への関与を強めている中で発表された。

メルボルンを拠点とするオーストラリア人記者。ローカルニュースやビジネスニュースを中心に担当