世界的システム障害、航空便や医療など影響多岐に 脆弱性が露呈

2024/07/20
更新: 2024/07/20

[19日 ロイター] – 世界各国で19日に発生した大規模なシステム障害は航空や医療、物流、金融など影響が多岐に広がり、相互接続されたネットワークの脆弱性が浮き彫りとなった。

障害は現在までに解消され、各サービスが再開しつつあるが、欠航や遅延した航空便、未処理となっている医療など各種予約・注文への対応が残っており、完全復旧にはなお時間を要するとみられる。

システム障害の原因となったのは米サイバーセキュリティー企業クラウドストライクのセキュリティーソフト「ファルコンセンサー」で、更新によってマイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の機能が停止し、画面が青くなるトラブルが相次いだ。

クラウドストライクはすぐにソフトを修正し、マイクロソフトも根本的原因を修正したと発表。

クラウドストライクのジョージ・カーツ最高経営責任者(CEO)は米NBCテレビの取材に対し、「影響を受けたすべての方々に深くお詫びする」と陳謝した。

米ホワイトハウス当局者は、バイデン大統領が障害について報告を受けたほか、クラウドストライクと連絡を取っていると説明。国土安全保障省サイバー・インフラ安全局(CISA)は、ハッカーが障害を利用しフィッシングなど有害な活動を行っていると指摘した。

米税関・国境警備局(CBP)は申請処理が遅延しており、国際貿易・渡航に関する問題の軽減に取り組んでいると述べた。

<多岐にわたる影響>

クラウドストライクの株価は11%急落。同社は世界に2万社以上の顧客を抱える。

D・A・デビッドソンのアナリスト、ジル・ルリア氏は「今回の件は世界のコンピューターシステムがいかに複雑に絡み合い、それがいかに脆弱かを示した」と指摘。クラウドストライクとマイクロソフトは今後同様の障害が生じないよう多くの対策を取る必要があるだろうとした。

航空便への影響は大きく、航空データ分析会社シリウムによると、全世界で19日に予定されていた11万便余りのうち5000便が欠航となった。

中でも、米デルタ航空は運航便の20%を欠航にするなど打撃が大きかったことが、運航情報追跡のフライトアウェアのデータで分かった。

ロサンゼルスからアムステルダム、シンガポールに至るまで、各地の空港ではシステム障害により手書き搭乗券で対応する事態となり、手続きが遅延した。

また、テレビ放映が中断され、米物流大手フェデックスの配達が遅延するといった影響も出た。

金融業界では、LSEGグループがニュース・データ・プラットフォームWorkspaceに障害が発生したと発表。

ただ、ロンドンでは正午までに問題の大半が解消。ロンドン証券取引所の取引に影響は出なかった。ニューヨーク証券取引所、ナスダックも、取引は正常に行われていると発表した。

米金融大手のバンク・オブ・アメリカ(BofA)やゴールドマン・サックス、シティグループなども、システムや業務に大きな影響は出ていない。JPモルガンでは一部のATM(現金自動預払機)が利用できなくなった。

米金融機関が参加するセキュリティー情報分析の共有を目的した組織「FS-ISAC」の広報担当者は、今回の障害による金融システム全体への影響はなかったと述べた。

米医療機関ではコールセンターや患者専用アプリが障害に見舞われた。

ただ、スペインの空港運営会社アエナや米ユナイテッド航空、豪コモンウェルス銀行(CBA)を含む多くの企業では同日内に問題が解消し、サービスが再開した。

Reuters
関連特集: 経済