クロマグロ漁獲枠25%拡大で合意 2027年から本マグロは安くなる?

2026/08/18
更新: 2026/08/18

太平洋クロマグロの資源管理を巡る国際会議が8月18日にオンライン形式で開かれ、参加する全ての国・地域が新たな資源管理方式で合意した。焦点だった30キロ以上の大型魚は、日本を含む太平洋中西部側で漁獲枠が25%拡大する。手続きを経て2027〜28年の2年間に適用される見通しで、高級すしや刺し身として人気の高い「本マグロ」が、これまでよりも消費者の手に届きやすくなる可能性が出てきた。

かつて乱獲で激減し、「絶滅が心配される魚」の代名詞ですらあったクロマグロが、わずか10年ほどで「増枠を議論する魚」へと立場を変えた——。今回の合意は、その象徴的な節目である。

合意の中身——大型は増、小型は減

今回合意されたのは、資源量に応じて漁獲枠が自動的に決まる新しい管理方式への移行である。一律の増枠ではなく、「大きく育った魚は多く獲り、将来の資源となる小型魚はむしろ守る」という考え方が軸に据えられた。

太平洋中西部の漁獲枠は、次のように変わる。

クロマグロ漁獲枠

太平洋東部側は大型・小型を区別せず、合計で7581トンから7740トンへとわずかに増える。1尾あたりの重量が大きい大型魚の枠を緩める一方、小型魚には規制を強化し、資源の再生産力を確保する狙いがある。

なお、日本の現行の枠は大型魚が8421トン、小型魚が4407トンである。日本・韓国・台湾の間での具体的な配分比率は、今後の交渉に委ねられている。

メキシコの反対から一転 再協議で合意した経緯

合意への道は平坦ではなかった。7月に長崎市で開かれた前回の会合では、大型魚を増枠する日本案をベースに、交渉は合意の目前まで進んでいた。ところが会議の終盤、メキシコが東西の配分バランスの見直しを急きょ訴え、交渉は決裂して閉幕した。交渉筋によれば、メキシコは日本を含む中西部側が想定を超えて漁獲することを警戒し、態度を硬化させたという。

異例だったのは、その約1か月後に開かれた再交渉である。 水産庁は早期の新方式移行を目指し、関係国・地域に会議の再開を働きかけていた。 非公開のオンライン形式で行われた今回の協議で、日本政府の説得によってメキシコが最終的に翻意し、各国・地域が目指した内容で決着に至った。 前回の「西高東低」への不満を、東西バランスへの配慮を示しながら解きほぐした格好である。

「回復した資源」という前提

そもそも、なぜ今、増枠が可能になったのか。背景にあるのは、クロマグロ資源そのものの回復である。

太平洋クロマグロは過去の乱獲などで資源量が大きく落ち込み、2015年から本格的な国際規制が始まった。厳しい漁獲制限が続いた結果、近年は回復が進み、過去40年ほどで最大とされる資源水準にまで戻ったとされる。2024年の会議では、この回復を受けて大型魚を1.5倍、小型魚を1.1倍に増やすことが決まっており、今回の合意はその流れを引き継ぐものだ。10年にわたる規制の「果実」を、どう分配するかという段階に議論は移っている。

価格と養殖業界への波及

消費者にとって最も関心が高いのは、やはり価格だろう。供給量が増えれば、高値が続いてきたクロマグロの値下がりにつながる可能性がある。実現すれば、増枠は2025年以来となる。

一方で、天然魚の供給増は養殖業界に構造的な変化を迫っている。天然クロマグロが「貴重で高い」ことを前提に成り立ってきた完全養殖事業は、資源回復と増枠によって採算の前提が揺らぎつつある。大手水産会社の間では、完全養殖の減産や撤退の動きがすでに表面化している。「守るべき希少な魚」から「安定的に供給される食材」へと位置づけが変わることは、単なる値下がりにとどまらず、産業構造の再編をも伴う。

残された論点

もっとも、今回の合意はゴールではない。太平洋中西部に関する内容は、11月末からバヌアツで開かれる年次会合で最終決定される。18日のオンライン協議に参加していない島しょ国などを含む26の国・地域の合意が必要であり、正式な増枠が確定するには、なお一つ関門が残る。

加えて、小型魚の枠を6%減らすとはいえ、大型魚を大幅に増枠することが長期的な資源に与える影響を懸念する声もある。回復したとされる資源水準を、いかに維持していくのか——。増枠がもたらす恩恵と、資源保護という規律との緊張関係は、これからも続く論点である。食卓に「本マグロ」が近づくその先で、私たちは再び「守る」ことの重さを問われることになるのかもしれない。